GANTZ〇(マル)R15版   作:闇の戦士

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ポセイドン星人編
26「山梨県へ」


 

 

 ガタンゴトンと車内が揺れると共に、吊り革を握っている人々――主にサラリーマンや親子連れ、休日に遊びに来た若者などが同時に体が揺れ動く。

 埼玉県から通じる山梨県への電車に、丸は現在乗っていた。寝坊したので夕方を過ぎた時間である。

 休日というだけあって車内は人が沢山乗っており、丸の目の前には、尻の形がいい綺麗な女性が近くで立っていた。

(むらむらしてきた)

 

 たまに、電車が横に揺れるとそのお姉さんの臀部が丸の下半身に当たり、刺激が来る。実に背徳的でエロい。もっとやってくれ。

 明日は佐里の家に行って、エッチなことをするというのが丸の脳内を占めているが、今目の前にいる女性も中々丸の性欲を煽ってくる。わざとやっているのではないか? と丸が思うが、新手の痴漢詐欺などが流行っていると聞く。もしかしたらハニートラップかもしれないと思いなおし、耐える。いや、もはや勃起はしているのだが。

 

「――何だ、お前!?」

「ん?」

 

 中年男性の叫ぶ声が車内の奥から聞こえ、丸が顔を向ける。しかし、人混みのせいで状況が分からない。何かがあったのだろうか。

 丸の前にいる女性も同様に、騒ぎが気になるのか視線をちらちらとむけている。その際に、丸と目線が合い、互いに目礼する。可愛い。 化粧も濃くなく、ナチュラルメイクで顔の形もいい。おまけに胸も大きい。あの白い私服の下に眠っている胸を鷲づかみにしたいという欲求が丸に上がってくるが、我慢。我慢をしなければセクハラとなり、痴漢だ。犯罪はさすがにしない。でも、見るくらいだったらいいだろう。騒ぎに乗じて胸と尻を見る回数を増やす丸。

 

 ややあって、甲高い女性の叫び声が車内の奥から聞こえてきた。

 まだ収束していないのか、騒ぎ。事件か? と少し気になるが、その声の位置と丸の場所は少し離れているため、もう何駅かで目的駅につくので関係ないと胸と尻に集中する。

 

「……良いな、形」

「? 何か、言いました?」

「あー、いや、何も。景色綺麗だなって」

「そう、ですか……、良いですよね、山梨県」

「……まぁ」(アブね、口に出てた。バレなくてよかったあ)

 

 丸は目の前の女性と軽く会話し、少しドギマギとした。危ない、窓際で助かった。冷や汗を感じながらも、女性の声が可愛かったので、でへへと顔を緩める丸は、端から見てかなり変態だ。

 ふと窓の外を見て、かなり規模の大きい湖が目に入る。あれは、河口湖――山梨県にある富士山の目下にある有名な湖だ。窓に反射した背の小さい私服姿に、髪がぼさぼさの童顔が丸のことを見つめ返している。この容姿でなければ、モテたのだろうか? 彼女がいれば、一緒に河口湖なんて見て回ってイチャイチャするのだろう。許せない。正直羨ましい。

 所詮、可愛い止まりなんだよな、この顔。受けはいいけど、セックスまでいかなければ意味がない。イケメンになりたかった人生。

 

「はぁ……」

 

 とため息をつく丸。ため息を長くして、息を深く吸い込むと甘い香水の匂いがして、すんすんと嗅ぐ。いい匂いだ、このお姉さん。すぐ元気になった丸は、おそらく単純な男である。

 その時、周囲の乗客が丸達のいる方向へ急に動き出した。結構な人混みの中なので、当然誰かが押されて倒れる。悲鳴が上がった。

 何だ何だ、と丸がそちらに顔を向ければ、フードを頭に深く被った一人の男が、手に刃物を持っていた。体格から見て男に間違いないはずだ。

 厄介な場面に出くわしたと眉を顰める丸は、どうしたもんかと考える。このまま一緒に後部車列に逃げるのもいいし、静観するのもありだ。丸にも被害が及ぶとは限らない。

 丸が考えている間に、フードの男がナイフで逃げ去る中年男性の腹を刺した。服の中から血がぼたぼたとはね落ち、床を汚す。中年男性がばたりと倒れ、それを見た周囲の人が恐れ、逃げ惑う。

 しかし、この人混みの中だ。後ろに逃げれば、人とぶつかり、逃げ切れなかった人が出てくる。何人かが、男のナイフで無造作に切り捨てられて、倒れた。

 

 それは、丸のいる位置に次第と迫ってきて、逃げ遅れている目の前のお姉さんが、震えて立ち尽くしていた。

 

「い、イヤ……どうしよ……逃げないと……」

「逃げたいの? お姉さん」

「え?」

「逃げたいなら、手伝うよ」

 

 丸はそう言って、震えているお姉さんの手を掴んだ。すべすべしていて、柔らかい。

 こんな緊急時にも、丸の頭の中はお姉さんのセクシーさにいっぱいだった。下心が顔に出てないか、心配だ。

 丸に手を掴まれた女性が困惑の顔を作る。対して丸の顔は微笑んでいる。(エロいことを考えている顔)

 

「手伝ってくれるんですか? どうやって……」

「それは、なんとかする。ただ一つ条件がある」

「……条件? ですか」

「そう、条件。お姉さん、おっぱいとお尻を揉ませてくれ」

 

「は、はい?」

 

「だから、おっぱいとお尻を俺に揉ませてくれたら、助けてあげる」

 

 

 丸がにっこりと顔を、動揺する女性に向け、言う。

 おっぱいとお尻を揉ませてくれたら、助けて見せると。

 それはあまりにも直球で下心しかなく、明らかなセクハラだった。

 しかし、この状況、フードの男が確かに近くに歩いてきている。このままではナイフに刺されるのも時間の問題だ。

 助かるか、胸と尻を揉ませるか。お姉さんの顔が、悩んでいる。真剣に。

 

 少しして、お姉さんが覚悟を決めたように、口を開いた。

 

「……分かりました、揉んでいいから、私を助けて……!」

「やっほ! いいの!? マジで!? 本当に!? ハニートラップじゃないよね!?」

「は、はい、早く! してください!」

 

「じゃ、ごくり……遠慮なく、揉ませてもらおう」

 

 お姉さんのボリュームのある胸――Cカップは少なくともあるだろう、それを丸の手が触り、揉みしだく。何度もその手の感触を確かめるように。気持ちいい。柔らかいけど、弾力がある。固い乳首がエロい。これが、おっぱい! おっぱい! おっぱい!

 

「気持ちよすぎだろ」

「ちょっと……痛いです......」

「あ、ごめん……じゃ、お尻も……ごくり」

「早く終えてくださいよ……」

 

 丸は急かされ、お姉さんの大きい臀部を、鷲づかみにした。手が埋もれ、尚もはじかれる弾力。これが、お尻。お尻……お尻お尻お尻! ケツ! 実にエロいケツだ。けしからん女だ。こいつは。

 これが男の夢なんだな、と揉んでみて分かる幸福さ。もう丸は死んでいいと思った。いや、本当はこのお尻に股間部を擦って、気持ちよくなりたいと思うが、それをしたら本当に痴漢だ。今も痴漢なのでは? やめろ、それ以上考えるな! 今は、おっぱいとお尻を心のゆくままに堪能するのだ!

 

 しかし、そこに邪魔者が入る。フードの男だ。

 近くで見てみると、フードの男はピエロの仮面を着けている。中二病か? コイツ。

 血濡れた銀色に光るナイフを手に握りしめて、小刻みに震えている。ビビってんのか? それとも興奮してるのか? 気持ち悪い奴。

 

「チっ……邪魔が入ったな……お姉さん、ありがとう。マジで気持ちよかった。おっぱいとお尻って、揉むためにあるんだな……」

「助けて……、くれるんですよね?」

「うん、それは約束だし、それにこのおっぱいとお尻を、俺は失いたくない。絶対に。俺が、守るよ」

「――はい」

 

  

「なんだぁ? 逃げないのか」

「運が悪かったな、お前」

「あ? なんだよ……てめえ」

 

 ピエロの仮面男の前に、丸が立ちはだかる。もはや、その間には誰も人がいない。後ろの方から、逃げた人たちがそれを見届けている。

 連続殺人犯。人をこの短時間で何人も殺して、斬りつけて、何がしたいのか丸にはまったくもって理解できない類の人間。

 その前に立って、萎縮しないで堂々としている丸の姿が異様に映る。

 

「死ぬのが、怖くないのか、てめえ……? それとも、ヒーロー気取りのクソか?」

「そのどっちでもない、怖いし、ヒーローなんて俺には向いてない。ただ、そこにおっぱいとお尻が、あるから……守る」

「てめえ……馬鹿か、まじもんの阿呆だなあ。まあいいや、死ね」

 

 徐に一歩踏み込んだピエロ男が、片手に握ったナイフを斜め上から刺してくる。それを、丸が飛び跳ねて回避し、壁を蹴って後方に回りながら、ピエロ男の頭を手で掴み――床に力強く叩きつけた。

 

「――カは」

 

 床がひび割れ、仮面が割れ、露呈した男の顔が半分めり込んでいる。白目を向き、男が泡を吹いて、意識を失っていた。

 

「こんなもんか、なんか遅いな……」

 

「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」

 

 乗客から盛大な歓声が上がる。突然の英雄が現れたことに驚愕し、感動し、救われたことに喜びの声を出す。

 丸はその声に気づき、やばい、目立っちまったと慌て、恥ずかしくなる。

 

『月川、絶対に一般人の前でガンツに関することや、スーツ、武器などを悟られてはいけない。もし悟られた場合、頭が爆発して死ぬ』

 

 東森華凛から言われた絶対に気を付けることを思いだし、今回はバレてないよな? と思い返す。そうしてみて、別にバレてなさそうだし、まあ大丈夫だろうと安堵する。

 そんなにスーツの力使っていないし。という丸の私服の下に、黒いスーツが着られていることに誰も気が付かない。

 ガンツスーツの力を瞬間的に使い、跳躍して、背後に回った――それが今回男に打ち勝った方法。

 とはいえ、ガンツスーツの力は最小限に抑えて、だ。別にスーツの力を使わずとも勝てた気がする。なぜか男の動きが異様に遅く感じたのだ。あのミノタウロスやオーガ、ドラゴンの動きに比べると遅すぎる。いや、アイツらが速かったのか、と気づき、よく俺殺せたよな、と笑う。

 

「その、ありがとうございました……! 私、名前、笹井みずきです......! 貴方の名前は……」

「みずきちゃんか。別にいいぜ、おっぱいとお尻気持ちよかったし。名前か……俺、月川丸」

「月川……丸……さん、助けてくれて本当に助かりました、この恩は絶対に忘れません!」

「そう? あっ、ついたっぽい、駅」

「あ……」

 

 緩やかに電車が駅に到着し、ドアが自動で開く。

 丸はそのドアを通りぬけた後、駅から笹井みずきの顔を振り向く。

 

「俺、もう行くから……。じゃ、みずきちゃんまた、元気で」

「はい……、月川さんも……お元気で! 

 

 

 

 ……その、連絡先教えてくれたら……って、あれ、もういない……」

 

 顔を赤らめて俯いている間に、丸の姿がいなくなっていることに気づいた笹井みずきが残念な顔をして、最後に笑って電車のドアが閉まった、

 一方、駅を歩いている丸の視界に、デジタルサイネージの広告動画が目に留まった。

 それはシャンプーのコマーシャルで、綺麗な女性がサラサラな髪を揺らしている。その顔が、先ほど別れた笹井みずきの顔と重なって、思い出す。

 

 

 ミズキ……最近よくテレビに出ている――グラビア、ドラマ、映画と活躍するトップアイドル。

 笹井みずき……みずき……これは偶然じゃない、まさか、同人物!? と頭を抱え、急いで出てきたばかりの場所に戻る。

 しかし、もう電車は出発していて、そこにミズキの姿はなかった。

 

「みずきちゃん……アイドル……だから可愛かったのか、納得だぜ……! クソ俺のバカ! なんでもっと早く気付かなかったんだ! 連絡先とか! 聞けよ! バカ! あれ……でも俺、アイドルのおっぱいとお尻揉んだってこと? ラッキー! なんかムラムラしてきたからトイレいこーっと」

 

 丸は前かがみになりながら、駅内の男性用トイレに入り、個室の鍵を閉める。

 そして、ゆっくりと起っている一物を取り出して、右手で握る。

 

 脳内で柔らかく弾力のあるおっぱいとお尻の感触を思い出して……右手を擦ろうとしたその時――

 身体が硬直する。金縛り現象、これはガンツに呼ばれるときのあれだ。

 

 

 や、やめろ、この姿勢で、この格好で……

 

 

「俺を呼ぶなああああああああああああああああああああああ!」

 

 

 

 

 

 そして、旅館のような広い一室に、丸がオナニーをする直前で座り込んでいた。

 妖艶な女性が、目の前でそれを興味津々に、見つめている。

 それどころか、部屋にいるのは、女性ばかりだった。

 

 

 

 

 

「ここは、楽園!?」

 

 

 

 

 

 そして、黒い球が、再び丸の目に映る。

 ガンツのミッションが始まった。

 

 

 

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