「ちょっと待って」
「正しい話をしよう」
これは牢屋敷に囚われた魔法少女に……
突発的な計画と実行と裁判の記録である。
▪ファイル1-1 城ケ崎ノア殺人事件
私の母を……心の病から助けてあげるためには、目立ち続ける必要がある……
それも……いちばんにならなきゃダメなの……
そんなある日……ノアくんがあの【バルーン】だという事実を知る……
一介の芸能人と世界的に有名な芸術家……どちらにあの人が視線を向けるかは、比べるべくもない……
……しかし……私が目立つのを、光に立つことを、邪魔する存在がいなくなれば……?
ノアくんを――……殺せば……
皆は……あの人は……私を見てくれる!!
牢屋敷に連れてこられた少女たち……
『舞台上の
魔女を決める魔女裁判が開廷される……
◆
大丈夫……
完璧なトリックも思いついた……!!
一先ず、最初の問題は……
果たして、リボンでボウガンの矢とレイピアをつなげることができるのか……
それに尽きる……!!
犯人:蓮見レイア
――!?
◆ ◇
城ケ崎ノアは房の中央で立ち尽くし……
天井のある一点を見つめ続けている……
――その奇妙な光景を作り出したレイアは廊下から様子を窺っている……
配信が始まる前に犯行に及び、"その後、ココくんたちと合流し、3人で配信を行う"という算段……故に誰にも見られるわけにはいかない。
だが、ノアくんのいる房は床一面に白い塗料が撒かれており、まだ乾ききっていない……
このまま近づけば、確実に私の足跡が残り……犯人だとバレ……魔女として処刑されてしまう……
そこで私は房の外から犯行に及べる射程の長い凶器を思いついた……
箒の柄に剣を組み合わせ、その先にボウガンの矢をリボンで括りつけて作る。
即席の……長槍を……ね!!
――!?
◆ ◇ ◆
金具を外して分解……
箒の柄に持っていたレイピアをくっつけて、偶然拾ったナノカくんのリボンと事前に確保していたボウガンの矢を結べば、長槍が作れ……
……
――レイアの手が止まる……
難易度高すぎないかな……
いや……まだ時間がある……!!
まずはリボンを結ぶところからリハーサルを重ねよう!!
小道具係のように……小道具係のように……!!
「まず、箒の柄と鞘をくっつける……」
ボウガンの矢をリボンで結び……
即席の長槍を作る……
試しに振ってみる……
カラン
「あっ!!」
固定が甘かったのか、振った勢いで床に鞘を落としてしまった……!!
これが本番だったらノアくんに刺さる前に空中分解してアウト……!!
脆い部分をしっかり固定し、リボンで結ぶ……
くっ……!!
なかなか繋がらない……!!
めちゃめちゃ難しい……!!
……確かに芸能活動をし、舞台で武器を扱ったこともあるけれど……
小道具係でなくて、役者なんだ……ッ!!
私は……ッ!!
◆ ◇ ◆ ◇
でも……!!
理論上は可能なはずだ……!!
これしきのことで諦めてしまったら、私には……あの人に見てもらえる資格なんてない!!
――レイアは練習を続け……
よしっ!!
――天井の一点を見つめ続けるノアを横目に……トライ&エラー……
箒の柄と鞘をくっつけた物に……
少しずつ調整しながらつなげていく
つなぎ目をリボンで結んでいき……
しっかり結べたら、つなぎ目の強度を確認する……
完成した!!
あとは、この長槍でノアくんを突き刺すだけ!!
!?
長槍で……ノアくんを突き刺すだけ……?
一体どうすれば……!!
私……箒と鞘とレイピアと矢をくっつけた長槍で少女を刺すの初めてだから……!!
――!?
考えるんだ……!!
役者としてのアドリブ力で……!!
ガタガタと今にも崩れてしまいそうな長槍を……
腕力で無理やり押さえつつ……
対象に向かって……
フルスイング……!!
――先端の矢はノアの胸に刺さり、彼女の生命活動を停止させた……
結局、フィジカル……!! トリックって……最後はフィジカル……!!
――突き刺した衝撃で武器がバラバラになり、矢が塗料の中に落ち、レイピアが床を削ってしまう……
どうやら、リボンだけで止めるのは甘かったみたいだね……
今後の役作りのために勉強しておこう……
なんとかレイピアを回収……!!
終わった!!
完璧とは言えないが及第点!!
もはやトリックというよりトンチキだが、奇想天外すぎて誰も解けない自信がある……!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「あっ、UFO!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
魔女裁判が開廷される……
よし……!!
舞台は整った!!
あとは、現場に足跡がないことからハンナくんを犯人として議論を誘導するだけだ!
魔法議論ミステリーADV主人公の……
真の恐ろしさに……!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
このまま時間切れになるまでに犯人を見つけられなければ、容疑者の中から誰か一人を魔女に仕立て上げ処刑することになる。
当然、3人で完璧なアリバイのある私たち以外の誰かから……ね!!
レイピアについた塗料も拭き取ったし、このアリバイが崩されるはずがない……!!
死亡推定時刻が配信前だとわかり、その時間に私以外のみんながお互いのアリバイを証明できない限りは……ね……!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
――シェリーとアンアンがまとめた内容により、ノアの死亡推定時刻が夕食後から就寝時間前までの、20時から22時までに絞られた。
――21時から22時は……全員にアリバイは……
「あてぃし、20時から21時はそこのザコと配信準備してたけど」
――ココとミリアがお互いにアリバイを証明する……
「夕食直後から配信にかけて……? たしか、その時って……」
――エマの証言で、夕食後に娯楽室でリボンを探している黒部ナノカと疑いをかけられた紫藤アリサのトラブルが語られ……
――エマとハンナとシェリーとメルルとマーゴとアリサとナノカのアリバイが証明される……
――そして、アンアンは体調不良で医務室にいて犯行は不可能……
――そんな中、ただ一人、アリバイがない人物が浮かび上がる……
「長い時間アリバイのない人……それってレイアちゃんのこと……だよね?」
!?
……
ハ……ハメ技じゃないか……
暴れてみんなのアリバイを運良く作って犯人を絞るってどんな状況なんだ……!?
そして、それを可能としたのが、
だが、アリバイが崩れただけで私がやった証拠は出てきていない……
今、すべきなのは……
全力でしらばっくれる……!!
「……さて、なんだったかな。申し訳ないけれど、あまり覚えていないよ。人の記憶は信用できないものだ」
それだけ!!
「それにエマくんの推理では長槍の素材に剣を使い、床が削れたというけど、剣の先端に塗料はついていない……」
アリバイがない私を疑う者もいるが、証拠がないので疑いきれない者も多い。
「箒と矢だけでは、部屋の中央にいたノアくんには届かない。いったいどうやって私がノアくんを殺したって言うんだい?」
これだけでは私を【魔女】とすることはできない……!!
「それで? 私の犯行を示す証拠とやらはあるのかい?」
私の発言を否定できず、みんなが口を閉ざす中、エマくんだけが口を開く。
「レイアちゃんが犯人だという証拠は……ミリアちゃんが知ってるよ」
!?
エマくんの推理で指摘され、思い出したミリアくんが自身のポケットに手を入れる。
ま……まさか……
――ミリアのポケットから、レイピアに貫かれ、白い塗料の痕がついたリンゴが出てくる。
!?!?
演技ではなく、自分の表情が青ざめているのが鏡を見ていなくてもわかる。
「……これが証拠だよ。君が……この事件の犯人だ――!」
エマくんが私を指し、力強く告げる。
「蓮見レイアちゃん!!」
――謎はすべて解かれ……魔女は処刑された……
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――お疲れさまでした。
「どうも蓮見レイアです。城ケ崎ノア殺人事件、いかがでしたでしょうか……?」
――死んでいないのですね。
「なれはてになったからね……」
――敗因は何だと思いますか?
「……そうだね。ナノカくんの暴走でアリバイがないのが私だけになったことかな……。それでだいぶ疑われてしまった……」
――決定的な証拠というと、あのリンゴがありましたが……。
「考えもしなかったよ。まさか、ミリアくんがリンゴをポケットに入れたまま就寝し、起きた後も一日中、入れっぱなしな人間だったとはね……」
――では魔女たちが勝つにはどうすればいいと思いますか?
「誰でも殺人ができた状態でアリバイを作ることかな……!!」
――ありがとうございます。
「それよりも、私のことをもっと見て――」
…………
――よくできましたね。
魔女裁判はまだまだ続く。
あなたの好きな子からいなくなりましたか?