▪ファイル1-2 佐伯ミリア殺人事件
わがはいの大事な人:ミリアに謝り、懲罰房から救うための……作戦をわがはいは……思いついたのだが……そのためには看守の……協力がいる……!!
犯人:夏目アンアン
◆
孤島の牢屋敷で起きた殺人事件……
佐伯ミリアが密室で磔にされて発見される……
『嘘言の眠り姫』の正体とは……!?
◆ ◇
――柱の陰から牢屋敷の見回りをしている看守の様子を窺っているアンアン……
偶然、懲罰房の鍵を看守が持ち歩いているのを見てしまった……
わがはいの魔法《洗脳》を使えば……言うことを聞くはず……!!
――意を決し、看守の前に躍り出る。
「あああ、あああの……うううう……あー」
人見知り過ぎてコミュ障……!!
看守は「あーあーうー」と言ってるアンアンの横を通り抜け、牢屋敷の見回りを続行……
夏目アンアン……己を叱咤……!!
いや……違う……わがはいは本気になっていなかったのだ……!!
思い出せ……レイアも……ノアも……何かに全力だった……!!
わがはいも……頑張らねば……ミリアを救えない……!!
発声練習……!!
「あめんぼ あかいな あいうえお……」
普段使わない喉の筋肉までを酷使……!!
牢屋敷に来てから……!! 一番喋ってる……!!
しかし、友との友情を糧に頑張る……!!
「【従え】! 【鍵を出せ】! 【扉を開けろ】!」
◆ ◇ ◆
再び看守の前に立つ……
「わがはいに【従え】!!」ボソボソ
「……」
看守、これをスルー……!!
!?
――アンアンは膝から崩れ落ちた。
「やはり、わがはいにはムリだったのだ……」
桜羽エマのように勇気も出せない……
これがわがはいの限界……
ミリアすまない……わがはいでは助けられない……
床に倒れこむ少女の脳裏に……
(待つんだ! アンアンくん!)
「レイ……ア……」
レイアだ……わがはいの脳内にレイアの姿が映し出され、声が聞こえてくる……
(アンアンくん。発声も、人前に立つのも、チャレンジすることが大事なんだ。後は看守の前に立ち言葉を紡ぐだけ……頑張るんだ!!)
「もうムリだ……できるわけがない……。それに、わがはいは幸せを願ってはいけなかったんだ……」
(……こんな時、私には言う資格がないと思うけど……友のために動いたノアくんならどうするかな……)
!?
そうだ……ノアは……わがはいを怖がらせないためにやってくれた……
それに、レイアだって……
――アンアンは立ち上がり、三度、看守の前に立つ。
すべては……友だちのため……!!
「ゴ……ゴクチョーに、鍵を持ってくるよう頼まれた……【渡してくれ】」
――看守はアンアンの言葉に納得したのか、鍵を渡す。
『やったー!』
ミリアの待つ懲罰房へダッシュ……!!
牢屋敷を全力でダッシュ……!!
キツい!
わがはい……体が弱くて……インドア……!!
すでに足にも……!!
――懲罰房の扉を鍵で開け、その先にはミリアが磔になって囚われている……
もう大丈夫だ。懲罰房から出れば、あの日々が戻ってくる……
また、一緒に映画を見よう……!!
◆ ◇ ◆ ◇
殺ってしまった……
カッとなって……
ついカッとなって……
わがはいは、懲罰房に入れられたミリアのために看守から鍵を入手した……
懲罰房に入ったとき、ミリアは磔にされており、彼女を助けるために向かった……
「あ、そうそう。看守に捕まった時にね、咄嗟に鍵を口の中に隠したんだ。ボクはいらないから、こんなもの飲み込んじゃうね」
ごっくーん
だって……手ごろな刃物が近くにあって……あいつが……ミリアの中にいた桜羽エマの魂が……わがはいたちの大事な思い出を飲み込んだから……!!
――何度も胸部と腹部を刺されたミリアの体は再び動くことはない……
ど……どうしよう~~……っ!!
殺しちゃってから……考える!!
……
思いつくわけがない……!!
こんな急にトリックなんて……!!
まだホヤホヤ……!!
犯人になりたてホヤホヤだぞわがはいは……!!
ミステリーではよく一般市民が凄いトリックを思いつくが……急にトリックを思いつくほど現実は甘くない!!
とりあえず、逃げるしか……
ん?
!?
――看守から奪った鍵を見て、アンアンの元にトリックが降りてくる……
まさに『天啓』!!
『アリバイ作り!!』
死亡推定時刻にわがはいのアリバイがあったら……!!
『アラ不思議。わがはいは容疑者から外れ、ミリアと一緒に映画を見れる日々が続く』
さっそく、ミリアのスマホを取り出し、着信音をミリアの悲鳴に変更……!!
誰かと一緒に懲罰房の前に行ったとき、着信音を鳴らし、録音したミリアの悲鳴を聞かせる……
悲鳴の後でミリアが死んだと思わせれば、わがはいのアリバイが成立する……!!
でも、レイアのこともある……誰かが処刑されるのは嫌だ……
扉を開けられる運営やゴクチョー……【黒幕】に罪を擦りつけるため、鍵を部屋に残して出ていく。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
次に、わがはいとミリアの悲鳴を聞く者だが……
既にそのトリックは考えている……
『文豪のわがはいが書く、拷問ショーのメモだ……!!』
それを見て、ミリアが心配になった人物が、わがはいと一緒に懲罰房の扉の前に行って悲鳴を聞く……
そして、【洗脳】の魔法で中に入らせず、一緒に離れる。
死体発見時まで、懲罰房に鍵がかかっていなければ、悲鳴を聞いた後で現場を離れた、わがはいたち以外誰でもできる状況になる……
そうすれば、わがはいのアリバイが成立する……!!
そのためにも、助けに行きたくなるような文言が必要だ。
幸い、わがはいは文豪を目指す者である。メッセージを考えるのは得意だ……
ペンを手に紙に文字を書いていく。
【20時 懲罰房で拷問ショー】
なんか……あんまり怖くないな……
字が綺麗すぎて切迫感がないな……
【20時 懲罰房で拷問ショー】
怖い……よな……?
うん……いや……うん……多分……?
【20時 懲罰房で拷問ショー】
【20時 懲罰房で拷問ショー】
【20時 懲罰房で拷問ショー】
【20時 懲》罰房で拷問ショー】
【20時 懲罰房で拷問ショー】
書きすぎて正直よく分からなくなってきた……!!
……シンプルに戻すか……
【20時 懲罰房で拷問ショー】
よしっ!
『会心の出来!!』どやァ
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
――ラウンジに拷問ショーの紙を貼り、陰から様子を見ていると、ハンナがやって来て声を上げる。
「なっ……!? なんなんですのーーー!?」
「いくらミリアさんが皆の邪魔をした人だからって、拷問だなんて許せませんわ!」
偶然を装って合流し、義憤に駆られたハンナと一緒にミリアを助けに懲罰房へ行く……
こっそりミリアのスマホに電話をかけ……
「……きゃあああーーー!!」
いいタイミング……!!
悲鳴に怯えながらもハンナはわがはいの体調を気にかけてくれる……
ここが賭けになる……
「【戻ろう】……」
わがはいの魔法は対象が納得していなければ効果がない……
頼む……ハンナ……一緒に戻ってくれ……!!
「アンアンさん。顔色が優れませんわ。医務室に行って休みましょう」
ハンナはわがはいの言葉を完全に信じてくれているようだった。……人を疑うことを知らない、いいやつだな……
そうして、わがはいは、医務室でメルルとアリバイを作り、通話した証拠があるスマホのデータを消す……
その後、タイミングを見計らって誰かと死体を見つけ、スマホを入れ替えれば……計画は無事に終わる……
誰かが鍵を閉めない限りはな……!!
◆ ◇◆ ◇ ◆ ◇ ◆
シェリーを探しているハンナから状況を聞き、わがはいはメルルと懲罰房へ向かう。
懲罰房の前にはココがいる。その顔は泣いており、その指はミリアがいる懲罰房を指している。
ここでわがはいが入り、スマホを入れ替えれば……
ガチャガチャ
!?
開か……ない……!?
「中におっさんが……助けないと! でも……鍵がかかっていて……開かなくて! だから、お嬢が今……怪力ゴリラ女を……探してる……」
!?
確かに、わがはいは鍵をかけずに出ていったのに……
これではスマホを入れ替えることができない……
悩んでいると、ハンナがエマとシェリーを連れてきたのか、足音が聞こえてくる。
シェリーが来たらその【怪力】で鍵がこじ開けられてしまう……
ど……どうしようーーーーっ!!
時間がないのに……トリックが……思い……つかないっ……!!
少人数ならまだしも……こんな大人数がいる中でスマホをバレずに入れ替えるなんて……
こっそりとスマホを入れ替える……
わがはいのスマホを……桜羽エマに渡す……
えっ?
なんで桜羽エマにスマホを渡すって……?
だって、中に入っているミリアの魂とは仲良し!!
わがはいの大事な友人だからな!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
2度目の魔女裁判が開廷される……
わがはいには、ミリアの悲鳴が聞こえた20時から21時の死体発見までのアリバイがあるから疑われるはずがない……!!
真の死亡時刻が明かされない限り……な!!
それに、レイアに投票する流れにした桜羽エマはいない……
今のやつの中にはミリアの魂が入っている……
わがはいはミリアとなかよしだ……
ミリアもそう思っている……
ミリアがわがはいを疑うはずがない……!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――議論が進む中、ナノカより衝撃的な証拠がもたらされる!!
!?
「私がこの鍵を手に入れたのは、懲罰房の中よ」
!?
「遠野ハンナたちが去ったのを確認して、入れ違いで懲罰房へと入ったわ」
!?
「私が懲罰房の扉を開けた時、扉は鍵がかかっていなかった」
!?
「そうして私が部屋に入ると……すでに佐伯ミリアは血まみれの死体になっていた」
!?
「拾った鍵で扉の錠前に入れてみたら、鍵をかけることができた」
!?!?!?!?!?
ナノカ……なんなのだ……お前は……!?
死体を発見したのに報告もせず、鍵をかけている……
そのせいでわがはいのトリックが完璧にならなかった……
レイアの時も暴れて皆のアリバイが成立したが、牢屋敷はナノカがいると犯人の計画をメチャクチャにする魔法でもかかっているのではないか……?
ノックスも書いておいてくれ……!!
中国人じゃなくナノカを出すなって……!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「……アンアンちゃん、キミだ」
……!
……ミリア……なぜ、わがはいを疑う……
もしかして、ミリア……わがはいがミリアの体を殺した【魔女】だって気づいているんじゃ……
でも、わがはいとミリアは仲良しだ……
あの約束をした仲じゃないか……!?
それとも、あの約束は嘘だったとでもいうのか……ミリア……
わがはい、友だちなのに……ミリアの気持ちがわからないよ……!!
でも、もう少しだ……
アリバイも崩され、スマホのデータ消去の疑いを向けられたが、事件現場に入って鍵をかけて情報を初めから言わなかったナノカの方が怪しい……
時間切れならナノカに投票が行くはず……
「ミリアちゃんのスマホが入れ替えられた証拠は……」
佐伯ミリアの悲鳴が裁判所に鳴り響く……
わがはいのポケットにあるミリアのスマホ……
「佐伯ミリアちゃんを殺した犯人は、キミだ――夏目アンアンちゃん!」
…………
わがはいの……まけだ!
――謎はすべて解かれ……魔女は処刑された……
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
どこにあるかも定かではない、冷たく暗い部屋。部屋の中央には氷の塊がある。
――お疲れさまでした。
どうも夏目アンアンだ……。
「佐伯ミリア殺人事件」。いかがでしたでしょうか……?
――死んでないんですね。
お前たちがなれはてにしたんだろう?
――敗因は何だと思いますか?
……。ナノカがあそこで現場に入って鍵をかけなければ、わがはいのアリバイも成立し、スマホの交換ももっと上手くいって、疑われなかった。
――決定的な証拠であるミリアさんのスマホ。初期化しなかったんですか?
できるわけがない……。あれを消してしまえば二度とミリアの声が聞こえなくなってしまう……。
――では魔女たちが勝つにはどうすればいいと思いますか?
ナノカを事件現場に行かせない者……!!
……は冗談だ……!!
犯人である明確な証拠がない者だな……!!
わがはいもレイアもそれが決め手となった……。
――ありがとうございます。
……
――よくできましたね。
魔女裁判はまだまだ続く。
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