やってしまった……
犯人:黒部ナノカ
たまたま……
沢渡ココに突き飛ばされた先がダストシュートで……
たまたま……
ダストシュートのフタが外れて落下して……
たまたま……
沢渡ココの声が聞こえ、運命的に手元に銃があり……撃ち殺してしまった……
どんな言い訳をしたとしても、事実は何も変わらない……
私が沢渡ココを殺した……
魔女因子が私を生存させるためなのか、気づいたら体が自動で動いて死体を移動させていた……
ただそれだけ……
それが……魔女になった私の……物語……
◆
◆ ◇
今は冷静な自分でいる……
あの時は、生き延びようと無我夢中で体が動いたけど……
今は自分がしてしまったことに目を向けて……
覚悟を決める……
できることはただ一つ……
誰も冤罪にならないよう、犯人は自分だと認めるだけ……
大丈夫……何の問題もないわ……
凶器は銃なのだから、裁判が始まったら最初に私が疑われる……
その時に反論せず、罪を認める……
桜羽エマも二階堂ヒロも推理力を先の裁判で示している……
彼女たちなら私の自白を信じ……
私だけが【魔女】として処刑される……
何も問題はないわ……
彼女たちがいる限りはね……!!
◆ ◇ ◆
「現場で銃を手に取っていた犯人……それはエマだ」
「なら……ボクとしてもヒロちゃんが犯人の可能性が高いと言わざるを得ないかな」
すごくダメそう……
――事件現場にいたエマとそれを目撃したヒロが、互いに相手が犯人だと言い争っている
……私……紫藤アリサの追及を肯定し……自白したわよね……?
「なら、私から説明させてもらおうか。エマしか犯行ができない……その理由を!」
「ボクだって……反論させてもらうよ!」
私が言うのもなんだけど……もっと冷静に考えて……
二階堂ヒロ……桜羽エマ……
宝生マーゴのトリックを解いたあなたたちなら、わかるはずよ……
――ナノカの思いとは裏腹に議論は明後日の方向へ向かっていく……
◆ ◇ ◆ ◇
――エマを犯人と決めつけているヒロによる弁論が続く……
「私がシャワールームに行くとそこにはエマがいた」
――状況を報告……!!
「ココの死体を探そうと廊下に出た……。中庭の前を通ってラウンジに入ったところで……後ろからエマの声がしたんだ」
――エマの元へバック……!!
「中庭に行くと……死体の前で拳銃を持ったエマがいた」
――ココの死体をルック……!!
「もしかしたら配信自体、ヒロちゃんが流した録画だったかもしれないよ」
「いや、あの配信はエマがしたに違いない……」
――ヒロちゃん思考をロック……!!
「エマ以外の犯人なんて存在しえない」
――ポンコツ具合にナノカはショック……
――ここでナノカ、ココロノイック……
どうしよう 託した相手 間違えた
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
こういうところにいる自称名探偵はポンコツが多いというけれど……
彼女は前回の裁判でも議論をまとめてくれたり、議論の叩き台を作ってくれた……
彼女なら……2階から投げ捨てたことに気づいてくれるはず……
賭けるしかない……この自称名探偵に……!!
「つまり犯人は空中を浮いてココさんの死体を運んだということですね!」
――ナノカは困惑……!!
「そんなことができたのは──空を飛ぶ魔法が使えるハンナさん! あなたが犯人だったんですねー!」
「なんですってのー」
――ハンナは驚愕……!!
――橘シェリーは……ノードウトク……!!
――議論がすごくダンサブル!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
どうも、黒部ナノカです……犯人が自白しているのに……この子たち……全然気にせず、犯人捜しを続けています……
もしかして……私の自白……忘れられている……?
いや……100歩譲って、このままでは魔女として吊られてしまう桜羽エマと二階堂ヒロはいい……
「か弱い……? とてもか弱いとは言えない、力自慢の人がいる気がしますわ?」
「そうそう! 重力を無視して空を飛べる人もいますよね!」
なんで、あなたたちも殴り合ってるの……?
遠野ハンナは犯人と疑われたから反論をするのはいい……
橘シェリー……あなたは……なんなの!?
前回も遠野ハンナを疑ってたけど……
何があなたを突き動かしているの!?
――議論は荒れに荒れていく……
なに、この裁判……
全員……シャb……森でキノコでも決めてるんじゃないかしら……!?
いえ……15歳の少女が食事が美味しくないからってカラフルなキノコを拾い食いなんて……
――その時、ナノカの脳裏に浮かぶ。
『睡眠薬の中身を舐めてみましたけど、結構強力なお薬みたいでちょっとボーっとしちゃいました!』
『のあもね、さっき医務室で見つけたときに甘い匂いがしたから舐めちゃった』
『その通りだ。だって、どんなものか気になるだろう?』
ノーフューチャー……!!
少女たちの倫理観……
ノーフューチャ~~~ッ……!!
――出席者全員クレイジーで魔女裁判をお送りしています。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「他者からの目撃証言がない人物……それは……ナノカ。君だ」
――!?
「ええ。【ココはどこだ?】だったかしら……。それに桜羽エマは【何の話?】と聞き返していたわね。これで私が医務室にいたという証明になったかしら」
「──すまないナノカ。そもそも医務室にいてシャワールームの音が聞こえることはないんだ。なぜならシャワールームは──部屋の外の音が聞こえないんだ!」
!?
「私は事前に調べて、あの部屋が高い防音性を持っていると確信していた……」
!!??
「もし聞こえていたなら……それはおかしいことだからね」
ま……まさか……
「どうやら君は、聞こえるはずのない声を聴いていたみたいだが」
偽証……!!
――謎はすべて解かれ……魔女は処刑された……
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
──お疲れさまでした。
はぁ……。黒部ナノカよ……
『シャワールーム下だいたい15時の殺意』。いかがでしたでしょうか……?
──敗因は何だと思いますか?
そもそも、私は初めから勝とうと思っていなかったんだけど……
それより……
──それより?
最初の議論、必要だった?
──みなさん、凄くダンサブルでしたね……。
まあ、後半では冷静を取り戻せていたみたいだし、力を合わせればあなたたちにも勝てるかもしれないわ……
──そうでしょうか?
ええ。彼女たちなら……きっと……
──最後に魔女が勝つにはどうすればいいんでしょう?
……他者の計画に乗り、捜査線上にすら上がらない人物かしら……
──ありがとうございました。
……
――よくできましたね。
魔女裁判はまだまだ続く。
少女たちの多くは15歳だぞ……
共犯者の皆さまは腕に『コンプラ』って彫りましょう。