◆
犯人:城ケ崎ノア
のあの本当の絵はね……
へたくそなんだよ……
焼却炉にこっそり捨てたんだけど……
アンアンちゃんに拾われちゃって……
『どうして捨てたんだ?』
だってヘタクソだもん……
「下手なんかじゃ、ない……。わがはいは、この絵、好きだ……」
アンアンちゃんにのあの本当の絵を見られちゃった……
見られたのがすごく辛くて、怖くて……
でも……
アンアンちゃんが褒めてくれたから……
のあの秘密を知られちゃっても、大丈夫だった……
「……ちがう、告白する」
!?
「それはわがはいが書いたものでは、ない……」
!?
「わがはいは、ほとんど書けなかった。だから、ヒロに手伝ってもらって、ほとんどヒロが書いたような、ものだ……」
……
「そ、そうだ……!! わがはいはいずれ文豪になるのだ。み、見ていろ……! 次こそ皆をあっと言わせる大傑作を仕上げてみせる……!」
アンアンちゃん……
自分の作品じゃないって言えるんだ……
自分の手で大好きな作品を書き続けられるんだ……のあにはできないのに……
……そういえば、のあの本当の絵……アンアンちゃんに見られちゃったな……
辛いな……
怖いな……
殺さなくっちゃ……!!
でも……
トリック……
まったく思いつかないなー
のあの魔法は絵を上手に描けてもトリックは上手く作れないや……
そして……
「わがはいがその空気を壊してやろう。殺人事件を嘘にして、笑い飛ばしてやる」
イタズラが成功して上機嫌なアンアンちゃんの背中を鉄柵で刺して……魔法で足跡を流して誰も来ていないようにしたんだよ。
この事件はこれでおしまい……
謎はすべて解かれ……魔女は処刑された……?
◆ ◇
――いや、そのぉ……もうちょっと話してもらえませんか?
誰かが冷凍室に保管されている液体に話しかけている。
「……やだ。つまんない。」
液体はそう言ったような気がしたが、その後は一切反応がない……
――あっ……へそ曲げちゃいました……
――えっと……どうしましょうか……?
どこかに電話をかける音がする……
「あー、そちらのゴクチョーさん、ご機嫌はいかがでしょうか? 少し困ったことが起きてしまいましてね。ええ……そうです。なんとか、そちらで対応していただけませんか? ええ……。ええ……。それではよろしくお願いしますよ」
電話を切った後、誰かが深いため息を吐く。
「はぁ……。変わって頂いた代わりに、仕事……押しつけられちゃいました……。どこも使い魔使いが荒いものですね……」
そう言って、押しつけられた仕事に取りかかる牢屋敷の管理者なのであった。
◆ ◇ ◆
真っ暗な場所。頭に天使の輪をのっけた少女がいる。
――夏目アンアンさん……?
『おい』
――あっ、お疲れ様です
『わがはいは、犯人ではないんだが……!!』
少女の抗議は無視される。
――すみません。今回の事件、あなたの計画を流用されたので、そこを何とか……
魔法を試してみるが、まるで効いていない様子に少女は諦めて大きく息を吐く。
「仕方あるまい……」
腹をくくったのか、アンアンはスケッチブックに書き込むと、こちらにドヤ顔で見せつけてくる。
『これは――殺人事件を嘘にして、笑い飛ばそうとした未来の文豪、夏目アンアンのイタズラ計画と実行の記録である』
◆ ◇ ◆ ◇
ついにできた……
なにせこの計画は……
ノアのことを喜ばせようとしてわがはい、頑張ったからな……!!
計画はいよいよ最終段階……!!
ドッキリを仕掛ける相手を決めないと……!!
わがはいが、その空気を壊してやろう……
殺人事件を嘘にして、皆を笑わせる……
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
仕掛け人:夏目アンアン
皆をあっと言わせ、笑わせる、イタズラ計画を仕上げてみせる……!!
そう決めたが……
『わがはいは、ただの少女……ドッキリ企画なんて考えたこともない……!!』
天啓も降りてこないし……ムリ……なのだろうか……わがはいには……
……いや!!
ドッキリの仕掛けも……小説と一緒……!!
いかに相手に気づかせず、仕掛けをするのかがカギとなる……!!
――インスピレーションを受けるため、アンアンは図書室でミステリーっぽい挿絵の本を読み漁った……!!
『なるほど! これが狂言自殺というものか!!』
お……おお……降りてきた……!!
『最高のイタズラ計画……!!』
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
――舞台となるアトリエのベランダから下を見下ろすアンアン……
結構、高い……
眼下の中庭には鉄柵もある……
暗い中で飛び降りたら、万が一死ぬかもしれない……
何かクッションでもないとイタズラどころではなく、放送事故ものだ……!!
何か……何かないのか……
辺りを見回すが目ぼしいものは見つからない……
お願いだ……!!
降りてこい……!!
アイディア……!!
ここが解決すれば……完成するのに……
――その時――アンアンの脳裏に衝撃が走る……!!
!?
中庭に植えてある木々を見る……
そうだ……中庭の奥の木々にロープがかかっている……
あれはアリサが作ったハンモック……!!
そのハンモックをクッションにして……
飛び込めば……
ドッキリ大成功……!!
これは、皆をあっと言わせる大傑作……!!
『わがはいは、やり遂げる……!!』
殺人事件を嘘にして皆も! ノアも喜ばせる!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
今回のイタズラのターゲットは桜羽エマ……!!
他意は無い……!!
ただ……レイアのように、強くもなく……
ハンナやミリアのように、仕掛けているこちらが気まずくなることなく……
ヒロのようにネタばらしの後、お説教しないから選んだだけだ……
決して、わがはいも、ウェンディ役をやりたかったわけではない……
「決してな……」
……とにかく。
呼んだら、警戒もせずに来てくれるから仕掛けやすいからだ……!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
後はタイミングを見計らって……エマと揉み合って押された反動で……事故に見せかけて……ベランダから落ちるだけ……
「何をしている!?」
――予想外にもヒロが登場!!
!?
ヒロがわがはいとエマの間に入る……
ど……どうしよう~~っ!!
このまま計画を進めるか、諦めて明日、アリサにハンモック壊したことを怒られるか……
悩んでいるとヒロがナイフを奪い取ろうとわがはいの手首を掴む……!!
ますます、どうしよう~~っ!!
揉み合う形となり、じりじりとベランダの手すりの方に寄っていく……
おお……
結果としていい感じになっている……
まさか、ヒロがドッキリを仕掛けられる逸材だったとは……
そろそろ……ベランダの手前か……?
【――離れろ!!】
【洗脳】の魔法で、ヒロにわがはいを突き飛ばさせる……
「あっ……!」
背中から落ちるから、ちゃんとハンモックに落ちるかわからないけど……どうにかなれ~~!!
アンアンはベランダから中庭へ落下していった……!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
イタズラ……大成功……!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
何もない真っ暗な空間。頭に天使の輪をのっけたアンアンがいる。
――はい。突然の解説役、お疲れさまでした。
『わがはい、犯人じゃないのにここもやるのか……?』
――敗因は何でしょう?
「わがはいは……負けてなどいない!!」
『ただ、強いて言えばヒロの乱入があって計画が完璧にならなかった……』
――【魔女】が勝つにはどうしたらいいでしょう?
『犯行を目撃されても、目撃者ごと消せれば……!!』
「だが、そんなことができるのは……もはや人間ではないのではないか……?」
――はい。【魔女】ですからね。
『では……最後に……ここでの皆との生活……』
「幸せだった……」
――ありがとうございました。
……
――よくできましたね。
魔女裁判はまだまだ続く
アンアン2度目の登板。
2周目の題名がわかる方はだいぶ金田一に詳しい方。