――牢屋敷の地下にある冷凍室に続くエレベーター内。遠野ハンナの傍らに、後頭部から血を流し、生命活動を停止しているレイアが倒れている……
やっちまいましたわ……
!?
確かにわたくし、レイアさんへの思いを内心秘めていましたが……レイアさんがあんなことを言わなければ……
……
ごまかすしか……ごまかすしかねーですわ……
犯人:遠野ハンナ
◆
◆ ◇
幸い、アリサさん以外の皆さんはバラバラになって地下を探索していますわ……
上手いことレイアさんの遺体を隠し、発見を遅らせることができればわたくし以外でも犯行が可能になるはずですわ……!!
そう……名探偵に殺人現場でも見られない限りは……ですわ……!!
チン
――ハンナが死体隠ぺいのトリックを考えていると……目的地に着いたのかエレベーターの扉が開き……
「え……?」
――扉の向こうには呆然としたエマが立っていた……
!?
◆ ◇ ◆
――牢屋敷の地下にある冷凍室に続くエレベーター内。遠野ハンナの傍らに、後頭部から血を流しているレイアとレイピア先制アタックを受けたエマが倒れ、二人の生命活動は停止している……
また……やっちまいましたわ……
ちがうの、わたくしは……悪くありませんの……
だって……エマさんが……ナノカさんではなくてエマさんが……急に来たから……
とにかく……隠さなきゃ……
お二人を外にでも隠そうとエレベーターのボタンを押したのですが……
ブー
!?
レイアさんを脚立でエレベーターの天板の上に隠して……
床の血も拭いて……
……
血の汚れ……なっかなか落ちませんわね……
――ハンナはゴシゴシと、魔女に近づいたことで強くなった力で拭き取っていく……
血の痕も拭き取れてエレベーターが事件現場だという証拠も消しましたし、これでバレませんわ……
――頑固な汚れを拭き取れたことに満足したハンナの目にエマの死体が映る。
!?
エマさん……
隠すのを……すっかり忘れていましたわ……
でも、集合時間が近くて……
遅れてしまえば疑われてしまいますわ……
短時間でエマさんを隠さなければいけませんわ……!!
…………
…………!!
わたくし……!!
こんな短時間でトリックなんて……思いつけねーですわ……!!
というより……いくら時間があってもムリですわ……!!
でも……隠しませんと……
うーん……
――なんとかエマの遺体を隠そうと模索する……
脚立!!
王冠!!
レイピア!!
氷サッカーボール!!
どれを選んでも隠し切れない……
困りましたわね……
ん?
これは……アンアンさんに持っていく予定だったウェンディの衣装……。
空を飛べるように私の髪を編み込んで作った舞台衣装……。
――そのとき、ハンナに電流が走る
!?
こ……これですわ……!!
アンアンさんではないけれど……天啓が降りてきましたですわ……!!
起死回生のトリックが……!!
怪しまれないようにレイアにも王冠をかぶせ……
【浮遊】の魔法をかけると──
――エマは浮かんでいき、エレベーターの天板を通過し、姿が見えなくなる。
あとは、1人ずつエレベーターを動かして屋敷に戻れば……
誰にも見つからず、裁判も始まりませんの……!!
親友の目の前に落ちてこない限りは……ですわ……!!
◆ ◇ ◆ ◇
あとは議論を誘導していけば完璧……ですわ……!!
……あれ……?
ええっと……?
わたくし……議論が弱い……ですわ……
――!?
普段、率先して議論をしないわたくしが……皆さんを誘導するのは疑われてしまいますわ……
……そうですわ!!
――天啓が降りてきたハンナは魔女裁判に出廷し……証言台の前にスタンバイ。
いつものようにですわ……!!
シェリーさん……!!
魔女裁判が始まれば、あなたは必ず行う……!!
わたくしが魔女裁判でする役割はリアクションだけじゃない……
とりあえず、わたくしを犯人として推理する……シェリーさんの雑殴りからの白確……!!
友だちのこと全然信じるつもりのねー……シェリーさんの雑殴りからの白確……!!
これに頼るしかねーですわ…!!
――!?
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
シェリーさん……言ってくださいまし……!!
――シェリーが何かを思いつく。
「……あっ! 思いつきましたよ!」
!?
来ましたわ……!!
さあ、言ってくださいまし……!!
わたくしのために……!!
「たとえば【浮遊】の魔法を使えば高いところまで持ち上げて落下死──なんてこともできるかもしれませんね!」
シェリーさん──────ッ!!
ですわですわですわ!!
この展開がきましたら……わたくしのことは疑われませんわ……!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「場に証拠となるような痕跡は残されていなかった。なら死体はそこに浮いていたとしか考えられない」
「痕跡もなく浮いていた……ですか」
「動力も浮力もなしに、ですよね? そんなことは普通ありえません」
「そう、犯人は……普通ありえない方法を使ったんだ。それは……【魔法】」
急転直下……!!
「STOPですわ。ちょ……ちょっと待ちやがりなさい!」
どうしましょう……
もうここまで話が進んできていますわ……
「それってわたくしがやったって言うんですの!?」
大丈夫……
ヒロさんは自分の推理を基に消去法で言っているだけで……事件のトリックはまだ解けていませんの……!!
謎が解けないことには推論でしかない以上、ヒロさんの方が怪しいんですわ……!!
そうなんですわ!!
――裁判の途中からシェリーは、いつもの彼女とは異なり、言葉数が少なくなっている。
なんなんですわ……なんか言いやがりなさい……あなた……わたくしたち友だちですわよね……?
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
シェリーさん……あなた……気づいていますの?
さきほどから他の犯人の可能性の話ばかりして……
いつものように……自分から事件を解き明かそうとしていませんよね……
シェリーさん……正直……トリックが解けていないだけで……犯人はわたくしだってもう気づいてるんじゃないですの……?
だとしたら……
――シェリーがハンナに向ける表情はどこか悲しげに見える。
どういう感情でわたくしにその表情を向けているんですの、あなたは……?
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「エマさんまで殺すつもりなんて……なかった……!」
◆
砂時計の上部から、巨大な岩が降り注ぎ、その下には二人の少女がいる……
──お疲れさまです。落石中、すみません
「いったい何なんですの? 急に? シェリーさんも止まってますし……」
──今回の敗因は何でしたか?
「そんなこと……急に言われても……!」
──エマ。殺しましたね。
「うぐっ」
──改めてお聞きします。今回の敗因は何でしたか?
「魔法の力ですわね……。【浮遊】の魔法がもう少し続ければ、ヒロさんに見つかることもなく、事件になることはなかったはずですわ」
──では魔女たちが勝つにはどうすればいいと思いますか?
「わたくしたちよりも魔法が強い者なら……」
――ハンナはその先を言わず首を横に振る。
「いえ、わたくしたちが犯行を行うときは1人でした……。なら、1人で立ち向かわず、全員で力を合わせればどんな相手にだって勝てると思いますわ!」
──ありがとうございました。
「データは集まった……。では……大魔女を……倒しに行こうか!!」
こうして、また、新たな魔女が生まれた……
魔女裁判はまだまだ続く……
エマさんの友だちの流れ、こんなこと言いたくないですけど、わたくしたち友だちですわよね?
あれ友だちの友だちにやるヤツじゃねーですわ……!!