装甲騎兵ボトムズ 惑星デゲンの奇跡   作:黒猫アプロ

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ちょっと長めです。


第9話 交渉

フォークトたちの話は長引いた。

が、肝心の1点を思い出すことで、話は進んだ。

 

「ところで、奴らは何を求めているんでしょうかね?」

ゼトラ大尉の一言だった。

 

「参謀本部によれば、恐ろしく能力が高い軍人、というイメージだったな」

「ですが、モラニア軍を壊滅させはしましたが、

狙いは戦いでも領土でもないようです。

その土地の何かを探して・・・

 奴らが移動した後の場所がかなりえぐれていますね。」

 

その場所の画像を巻き戻してみると、小さな赤い花があった。

 

「この花が何か、誰かわかる者はいるか」

 

隊員たちは顔を見合わせるばかりだが、

後ろの方で呼び入れられた看護兵のカナワが手を挙げる。

「すみません。それなんですが、イーリオスの花だと思います。

 高山とか湿地帯に咲く真っ赤な花で、古代語の太陽を意味する言葉です。」

周囲の隊員からおぉっという声が上がる。

「ありがとう。

 その花か、植物か、何かに利用されているかは知らないか」

カナワもそこまではわからず。

「すみません。そこまでは・・・

 ただ、湿地帯では大量に繁殖するので、雑草扱いされたりしますね。」

「それは面白い。

 彼らが必要なものは、こちらでは雑草か。」

 あちらこちらで笑いが起こる。

 

「なぜそれが必要かはわからないが、話す理由はできたな。

 後はどうやって知らせるか、だが・・・」

 

「その植物が必要なら、どういう手段がわかりませんが、

 関連した土地を探っているでしょう。

 衛星の地表センサに反応するようなアンテナを群生地に仕込んでおいて

 メッセージを伝えてはどうでしょう」

遠距離狙撃専門で、衛星に詳しいボックメッサー大尉が言う。

「なるほど、よさそうだな。

 では、大尉、ご苦労だが、できれば首都近郊の群生地に

 そのアンテナを立てておいてくれるかね。」

 

話を聞いていたボルク少佐が既に候補地を絞り込んでいた。

「首都防壁からおよそ30km東に進んだあたりに群生地があるようです。

 候補地はそこでしょうね。」

 

「よし。それではまず準備にかかってくれ。」

1晩かかって、ようやく段取りがついた。

 

 

再度、群生地を探っていたステーション側にメッセージが届いた。

「ダニエル、メッセージが届いたわよ。ヒュロス側の軍の人みたい」

“どれどれ・・・うん。悪くないわね。”

「現地に来てくれ、か。

 では、俺が行くしかないな。」

“そうね。”

「交渉なら、私が行きましょうか?」

“フィアナはもう少し待ってね。他の惑星環境の影響は今予測できないから。”

残念そうなフィアナにキリコが言う。

「フィアナはこっち側からサポートしてくれ。

 ダニエルもあちら側で映像を出せるなら頼む。」

“もちろん大丈夫よ。あ、そうそう。”

そういって、立体映像が机の上の小さなデバイスを示す。

“これを交渉現場にもっていって。おなじような映像を表示できるから”

 

 

2日後、上陸用舟艇が指定の地に到着。

中にはラビドリードック(改)1機・・・に加えて、

アルフィア、ベティア、ガンミアが搭乗。

操縦はアルフィアが担当。

何かあった時の対応はベティア、

通信管制はベティアが受け持っている。

 

始め1人で行こうとしたキリコに、

この3機(?)が自主的に同行。

 

ただし、彼らの自律性は秘密なので、出てくるのはキリコだけ。

 

到着地には軍用の天幕。

中には簡素な作戦机。

 

相手方はフォークト中佐、ボルク少佐、これに加えてブラヴェ通信社の女性記者

フィレス・ホーンが同席している。

3人目は政府から出してもらう予定だったが、

怖じ気づいて誰もでてこないので、フォークトが軍とは別目線の人物として、

ちょうど取材にきていた彼女を引っ張り出した。

 

ステーション側は、キリコ。

ギルガメス標準仕様のいつもの耐圧服。

残りは映像でダニエルとフィアナ。

 

「まず、交渉に応じてくれたこと、感謝する」フォークト中佐が切り出す。

「キリコ・キュービィーだ。こちらこそ話ができる場ができてありがたい」

 

「この惑星に来訪する目的を教えてくれないか」

「・・・赤い花が咲く、小さな植物を探している。

 我々はこれを材料に、生命維持に必要な物質を生産するので、

 一定の量を採取させてほしい。」

「具体的にはどのくらい?」

「花が咲いたものを約1千トン」

「花だけでよいのかね」

キリコが答える前に、立体映像のダニエルが答える。

“できれば土壌も一緒に。それから、栽培するための条件がわかっているなら”

「他にはどうだ」

「こちらの要求ばかりだとバランスがとれないだろう。

 そちらの要求も聞こうか」

「我々は単純だ。

 隣国モラニアとの抗争で、少なくとも中立、相手方にはつかないでほしい。」

「・・・もともと、戦争をする意図はないし、この惑星を占領したいなどとは

 思っていない。我々は必要な物資を正当な対価で得たいだけだ。」

 

フォークトはある程度事情を知っているが故、余計なことを要求しないが、

モラニア、それだけではなく、バララントの最先端実験部隊を苦も無く蹴散らす

軍事力をもっている相手だけに、どこが「引き金」になるのか、探っておきたい。

 

「今の話とは別に、貴殿が搭乗しているATの技術について伺いたい。」

これは専門家のボルグ少佐。

「見たところ、ギルガメス系の機体のようだが、

 どこで製造しているのか」

これは若干、はったりで、ダニエルが答える。

“あれは古代文明の結晶とも言える機体よ。多分あなたが知っているものより

 ずっと昔の。”

「・・・古代文明が今の技術を凌駕していると?」

“機械に限らず、今の文明は全体に衰退しているように見えるわね。”

“人間の寿命も短いし、病気や怪我も治せないものがある”

“ATと呼ばれるモノに関しては、運動性能の面で随分ギャップがあるようね”

 

「ならば、その技術、我々が学ばせてもらうことは可能か。

 必要なら人員をそちらに派遣してもよいし、

 こちらに共有できる技術について、拠点を作っても結構だ。」

“不可能ではないけど、ハードルは高いと思うわ。”

「我々だって、学習はできる。」

“いいでしょう。では、こちらに誰か派遣してくれない?”

“それで可能かどうか、判断するわ”

 

条件が増えたので、フィアナがそれに付随して発言する。

[こちらは、自動稼働している拠点なので、人員は少ない。

 もし、人員を派遣してくれるなら、水と食料をお願いしたいわ]

「では、こちらから派遣した人員の質で、そちらの水と食料の量を

 調節してもらって構わない。最大量でどのくらい必要かね。」

“軍用で構わないけど、精密さと衛生基準を合わせたいの。”

“粗量、半年で500トンくらいかしら。”

 

ヒュロスは食料生産があり、戦時とはいえ、物量にはそれなりに余裕があった。

「いいだろう。条件は承諾した。

 派遣する人員は後ほど決めてよいか。」

“ええ。結構よ。でも、そちらの方は興味があるみたいね。”

 

「中佐、できれば自分が行ってみようと思います。」

「いいのか、少佐。相手は未知の技術の持ち主だ。」

「ええ、学ぶことは得意ですから。

 それから、始めだけでよいので、整備兵長のゴッペル曹長を同伴させて

 ください。おそらく技術面や製造面でのすり合わせができるでしょう。」

 

交渉はほぼ順調に終わった。

詳細はこれから詰めていき、おそらく臨機応変に対応する場面も出てくるだろう。

しかし、フォークトは、この話し合いは案外うまくいくのではと思い始めた。

 




<次回予告>
初めて目にする古代超技術の粋。
フォークト一行は現代との差に愕然とする。
しかし、本当に彼らと違っていたのは!
次回 <工房衛星>
現代文明は超古代技術を理解できるか。
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