交渉が妥結した後、キリコはボルク少佐、ゴッペル曹長、
そして、初回に限り、ということで、フォークト中佐自身を同乗させて
ステーションに戻る。
格納庫に到着し、輸送コンテナを下ろす。
加えて、キリコのラビドリードック(改)が降着姿勢のまま、滑るように
所定のハンガーへ移動。
その後で、アルフィア、ベティア、ガンミアの3機が降りてくる。
キリコはさも当然と言わんばかり、そのまま管制室に3人を案内する。
だが、管制室への道中、案内された3人のうち、
特にゴッペル曹長は驚きの連続である。
「おい!あんた!」
「キリコだ」
「・・・おい、キリコ! おまえらの他にパイロットがいたのか!」
「いや、いない。」
「だったら何でATが勝手に動いているんだ!」
キリコは後ろをちらっと見ただけで興味なさそうに言う。
「あの降着姿勢の機体なら、所定の位置に動くように、プログラムしてある
だけだ。ミッションディスクと同じだ。」
「いや、そっちじゃない。あの小さいヤツ!」
「・・・新型のライト級ATだ。」
「3機バラバラに動いているじゃないか!
それにコミュニケーションをとっているぞ!」
「・・・そういう機体なんだ」
管制室ではフィアナとダニエルの立体映像が待っていた。
早速、挨拶しようとフォークトが前に出る、が、
“ごめんなさい。ちょっと待ってね”
全体にアルコールらしき液体を噴霧。
その後、手と指を消毒液らしきもので洗われる。
“こちらはフィアナ。キリコのパートナー”
“ただ、今は病気の治療中で、悪いけど接触させられないの”
ダニエルが言うと、そこにいたフィアナはすっと消え、
管制室の奥の方、ガラス窓から見える区画でこちらを見て、
すまなそうに微笑んでいる。
「わざわざおいでいただいたのにすみません。
フィアナです。」
「こちらもきちんと名乗っていなかった。失礼した。
アンドレアス・ヴァン・フォークト中佐だ。
AT特殊部隊の隊長を務めている。」
そして同行者2人を示す。
「こちらはボルク少佐。優れたAT乗りでもあるが、ATの技術開発には
わが部隊で人一倍詳しい。」
「こちらはゴッペル曹長。我々の部隊のAT整備は彼が担当している。
現在のAT技術には最も詳しい男だ」
そこでボルク少佐が立体映像のダニエルを見て尋ねる。
「それで、あなたが超古代文明の賢者なのですか?」
“あ、信じていない目だ”
「・・・そりゃそうだろ。」ゴッペルが突っ込む。
“え~っ、でもこのステーションの技術のほとんどは私が掌握しているのに”
「全部じゃないんですか・・・」ボルク少佐が少しがっかりする。
どうも話が進まないので、キリコが説明する。
このステーションの中心は超古代医療技術であり、彼女はこれを保全したがっていること
ATについては、このステーションにあったが、ダニエルはその位置や存在を忘れて
いたこと。
ステーションの管制システムにはATが組み込まれているので、
おそらく工廠らしきものがあること、
そして製造されたATの性能は先ほど見た通りということ。
「キリコが乗っていたATだが、以前クエントで見たのと同じか」
「あぁ。操縦感覚までそっくりだ。ただ、武器は違っていた。」
「・・・それじゃ少なくともこのステーションは・・・」
「ワイズマン、奴が作ったか、奴の仲間が作ったのは確かだろう
ただし、俺が以前入ったステーションには医療施設はなかった。」
「それじゃ、この嬢ちゃんが言っている「賢人」ってのは・・」
「医療技術については嘘じゃない。機械関係はまるっきりだが、
多分、技術は理解している。
我々と違う理解だと思うが・・・。」
フィアナが補足する。
「おそらくダニエルは本当に医学や生物の研究者だったようね。
AT自体、あるいはATの機能も『生命現象』として理解しているみたい」
少し考えてボルク少佐は言う。
「ということは、こちらがある程度、技術内容を生物用語で変換しておけば
相互理解が得られるということですね。」
「ここまでの私の経験上、そうだと思うわ」
話が一段落したところで、先日、モラニアから奪取した食料品のうち、
コーヒーが出てくる。
「・・・味の保証はしないが、まぁ、飲める。」
そういって来客分のカップが出てくる。
“私は飲めないけど、毒物の類いでないことは保証するわ”
フォークトたちは苦笑し、一応礼儀で口にする。
「・・・確かにひどくはないが、我々からもう少しマシなものを提供しよう」
「そうか」
「バララントのは『代替コーヒー』って言ってな、豆を挽いたヤツじゃないんだ。
それこそあんたらが集めている草あたりが原料になっているかもしれんぞ」
より苦い顔になったゴッペルが忠告する。
「戦場暮らしが長いんでね。一応、味がすればよかったんだが・・・」
キリコが真顔でいう。
「もう兵士じゃないのだから、と何度も言ったのですけどね・・・」
フィアナが補足。
「俺はフィアナが無事でいればそれでいい。」
「もう、キリコったら・・・」
それを聞いたフォークトは、キリコが暴走せざるを得なくなるトリガーが
何かを知ったのだった。
<次回予告>
次々と明らかになるクエント超古代技術
ベテラン整備兵と最先端研究者の知恵と技が
新たな道を切り開く。
次回<秘密>
フォークトたちはステーションに何を見出したのか