装甲騎兵ボトムズ 惑星デゲンの奇跡   作:黒猫アプロ

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原作アニメにも「コマンド・フォークト」にも出てこない、オリジナルの敵を登場させました。お気に召さない場合、ブラウザバックをお願いします。


第12話 強襲

バララント駐留部隊は本星の指示でデゲンから撤退した。

惑星クエントの悪夢が再来することを恐れたのである。

 

数十機の護衛部隊は確かにいたが、ギルガメス・バララントの連合軍に

容易に撃破され、最終的にはたった1機のATを連合軍数十機が追い回すことに

なったにも関わらず、そのATが惑星中枢にたどり着いた後、

上陸していた両軍全軍と軌道上の宇宙船ごと、クエントは消えた。

 

現状、戦略上は圧倒しているとは言え、バララントの撤退は痛い。

あと一歩でヒュロスを制圧できる現状で、撤退はとても飲めないことだった。

 

ただ、全面撤退だったわけではない。

数騎の特殊AT、これに搭乗する、強化人間は撤退に抗命。

バララント軍は、運用データさえ残ればよかったので、鷹揚にも

ATと人員、物資まで含めてモラニアに残した。

 

先にケスウリ中佐を強化人間にして、部下を壊滅させた参謀カルペツ少佐は

既に粛清され、この世にはいない。

ただ、これと同様の思想はもとからバララントにも、モラニアにも染みこんでいる。

 

モラニア軍参謀本部に、生体工学研究所の所長から帰任した、

新たな先任参謀が着任した。

オリガ・チェルニコワ少将

バララント系ATの開発と操縦者の精神操作を組み合わせ、

「撤退しない」部隊を作ることに定評がある。

全体主義のモラニアでも珍しい女性将校。

すらりとした高身長・細身の女性。白銀の髪を無造作に後ろで束ねている。

性格は極めて冷徹。戦いに勝つためには人間の機械化も辞さない。

 

その強化人間たちに早速面会するという。

「閣下、連中は半分、精神が壊れております。面会は危険です。」

副官のボラス少佐が警告する。

だが、チェルニコワ少将はこれを一笑に付す。

「問題ない。面白いじゃないか。連中を集めろ」

 

上官命令に逆らえず、ボラス少佐は部隊員を会議室に集める。

大抵はうつろな眼差し。無口か、何かわからないことを始終呟いているか。

中にはずっと笑顔のまま固定されてしまった者もいる。

あるいは手や足をサイボーグ化した者。

 

そこにチェルニコワ少将が現れ、短く挨拶。

 

一癖ありそうな連中は無言で彼女を見つめる。

 

一人、軽薄そうなサイボーグ化兵士が下卑た顔でチェルニコワ少将を見る。

「なあ、少将さんよ。戦いのご褒美はねぇのかい?」

「貴様らは身体をメンテナンスできれば御の字だろう。まだ何かいるのか」

冷たくあしらう。

「おうとも。この機械の右手じゃよぉ、いろいろ不便でな。

 ベッドで添い寝して治してくれねぇか。」

同じサイボーグ兵は爆笑する。

 

チェルニコワは一転、哀れみの表情。

「残念だな。どうもお前は脳も改造が必要なようだ。」

「あ?何言ってんだよ!」そう言って、彼女の胸ぐらを掴もうとして、

それより素早く、彼女の右手がサイボーグ兵の首を締め付ける。

膂力が強いらしく、数秒で男の顔は青くなる。

そのまま男は頽れる。

 

冷たく男を見下す。

「弱いな・・・廃棄処分でもいいが、何かには使えるだろう。

 脳科学ラボに運んでおけ。」

 

「まだ納得できないならかかってこい」

右腕からサーボモーターの音を響かせながら、チェルニコワは髪をかき上げる。

男達は恐れ戦き、近づこうとしない。

 

「いいか。おまえらの仕事は、敵を倒すことだ。

 身体の心配はいらん。

 壊れても、もっと丈夫にしてやる」

そこで凄惨に微笑む。

「ATもよい機体が揃っている。

 楽しみにしておれ」

 

さしもの強面AT乗りたちも凍り付いた。

これから何をさせられるのか、と。

 

 

会議室をあとにしたチェルニコワは自分のデスクで兵たちのデータを閲覧。

ひとしきり眺めた後、簡単に指示する。

 

「20番から25番は脳改造。32番は足のパーツを換装しておけ。

 8番は右腕に機関銃を仕込んでおけ」

 

「はっ。命令拝受いたしました。

 ・・・しかし、「異能者」にこいつらが太刀打ちできましょうや」

「できるとも。

 どれだけ優れた兵でも所詮は1人だ。

 物量で押しつぶせばよい。

 案ずるな。

 来月にはブラヴェでうまい酒が飲めるぞ!」

 

 フォークトたちにケスウリ以来の強敵が現れた。

 彼らの命運はいかに。

 




<次回予告>
かつてのミヨイテで、パルミスで、サンサで、赤い肩のATが暴威を振るった。
しかし、そこで生き残った者は自らを極限まで強化して復讐を果たそうとする。
白髪の魔女は囁く。“やられたままでよいのか”と。
次回<因果>
魔女の狙いはヒュロスの英雄か、「神」を屠った男か。
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