バララント初のATは、バララント軍が技術者を檻に閉じ込めて開発した、と
ありました。
その影響で、この作品でもモラニアは「全体主義のこわ~い国」にしています。
バララント社会において、戦いで不虞になった者の末路は2つである。
- 戦場に放置されるか、
- 軍病院で実験体となるか。
殊に、ギルガメスでPS計画が企図され、実行に移されたことから、
実験体の中で、特に頑強な者が強化兵となっていく。
チェルニコワは数ヶ月前の希少な実験体を思い出す。
惑星ミヨイテでギルガメス軍の特殊部隊に蹂躙され、身体のほとんどが欠損した
末端兵士。ラダ・ニーヴァ。
AT乗りや兵士としての資質は著しく劣っており、軍への忠誠心のカケラも
なかったが、復讐心だけは高かった。
ただ、それを自分で統御できないため、最終的には滅ぼされたのだ。
「異能者」に挑んで。
チェルニコワは思う。
組み合わせが悪いのではないか。
復讐の相手など、いくらでも誤認させられるはずだ。
バカ真面目にそのまま、「異能者」に対抗させるなぞ、貴重な実験体の無駄遣いだと。
先日の偶発的な、異能者との接触をみても、多少腕が立つというだけでは
簡単に対応できるはずがない。
しかも、彼らがヒュロス側に本当についているのかもわからない。
ならば、こいつらは、ヒュロスの連中に対応させるのがよかろうと。
電話を取りあげて伝える。
「ボラス少佐か。私だ。
例の作戦に連中を投入する。
新型ATを用意してやれ。
・・・いざという時の『保険』も忘れるな」
モラニア軍参謀本部では、当初三段階に分けた攻勢を企図していた。
1つ目はヒュロス国境北部の平原を経由した陸上軍の大投入。
ただし、この場合は立ち塞がる巨大な防壁を突破しなければならず、壁の上には
対空・対地兵器が多量におかれている。
2つ目は南部の平原経由。これも問題点は同じ。
そして3つ目がネス山脈越え。
意外にもこれはヒュロス側にも盲点になっていたらしく、
成功可能性は高いと思われている。
問題はATを使っても過酷な山越えと、サポート兵員や兵站の輸送や管理が十分でない
ところである。
加えて言えば、始めにまとまった数の部隊を送らないと、ヒュロス側で逐次撃破されて
しまう点であった。
しかし、チェルニコワが立案した計画と並行して実施すれば成功可能性は高まるだろう。
(だが、あのサイボーグ女の発案というのは気に入らん!)
ドーラ中将は苦みを噛みつぶしたような顔をさらに顰めた。
ボタンを押して参謀本部を呼び出す。
「私だ。作戦案を許可する。チェルニコワ少将にもそう伝えよ。」
“はっ。作戦開始はいつでありますか。”
「明後日。0200」
モラニア側の急な動きは衛星を通じてヒュロス側にも伝わっていた。
「また、山越えを企図するだと?奴ら正気か。」
「どうやら本気であります。現地および周辺状況から動きもあります」
「・・・・どちらにせよ、“歓迎会”の準備をさせておけ」
「了解であります」
「フォークト中佐にも知らせておくように」
「はっ!」
<次回予告>
戦場を巡る赤の竜巻。
数本が集まって大地を引き裂き、敵を蹂躙する。
「疾く逃げよ。悪魔に抗える者無し」と
次回 <灼熱>
この戦場に救世主は現れるのか。