作戦は深夜に開始された。
バララントの置き土産、新型ATチャビィー。
灰色のやや小ぶりなファッティーといった兵器。
しかしその運動性能や汎用性は抜群。
今回はザイルスパイト装備型、遠距離砲撃型に加えて、
作業用のファッティーを加えた1チームを3組用意。
険しい山の尾根を越えつつ、平地になっている部分を探して
整地。そこに輸送拠点を築いていく。
競うように3組が進み、2時間ほどで山脈の回廊部分に到達。
闇に紛れるようにモラニアのATが続々とヒュロス側へ降りていく。
その数およそ200。
まだ暗いうちにヒュロス側の麓へ陣地を構築。
戦闘布陣を完了。
特徴的なのは、陣の最奥にある3つの輸送ボックス。
何か奇妙なものを入れたようで不気味さを感じさせる。
払暁。
備えのできていないヒュロス側に襲いかかれば、首都を陥落させることなど
容易と思っていたモラニア側も驚愕。
陣地を囲むようにヒュロス側ATが布陣している。
先頭は火力のあるトータス級が揃っている。
「「攻撃開始」」双方の指揮官の合図は偶然にも同時。
戦端が開かれた。
モラニア側はチャビィーの高速運動を利用して集団でヒュロス陣地に迫るが、
トータス隊のソリッドシューター、ミサイルパックなどが降り注ぎ、
陣地に分け入ることができない。
数機は脚部を損傷し、撃破されていく。
このままヒュロス側が勝つか、と思ったところで、
モラニア側も陸戦型ファッティーを投入してくる。
こちらは肩部のミサイルをばらまき、全面のトータス隊を数機撃破。
一部の陣地を侵食。
ヒュロス側は地形に拠るが、高速なファッティーに抗し得ず、
被害を重ねていく。
そこにヒュロス側も重厚なAT隊、特にスコープドックからなる隊を投入開始。
だが、まだ、ファッティーの数が多く、戦線はヒュロス側が押されて、膠着状態に。
「よし、今だ。
“棺桶”を開け。」
チェルニコワ少将の命令で、陣地後方にあった3つの輸送ボックスが開く。
中から異形のATが立ち上がる。
細長い頭部。
左手に大型パイルバンカー
右手は大きなアームクロー
そしてそれらは血で染め上げられたかのように真っ赤。
バララント製の試作PS用AT「エクルビス」である。
通常の兵士に扱いきれないと考えたバララント参謀本部は、
惑星デゲンの戦場で使い潰しても構わないと判断し、
置いていったものだ。
起動した「それ」は早速ヒュロス軍に襲いかかる。
「おい、何だあのATは!」
陸戦型ファッティーと交戦中のスコープドッグがクローから発射された
ミサイルで爆散。
あちらこちらで惨劇が発生する。
一番右側のエクルビスは、火器を使用せず、トータスもスコープドッグも
接近戦で撃破。右腕のパイルバンカーでコクピットを串刺しに。
搭乗者の血にまみれたそれを見せつけるように掲げる。
この3機は全く連携が取れていないが、
目につく敵ATは片っ端から撃破している。
「本部、敵の新型ATに抗しきれない。増援を請う。増援を!」
狭隘な山道の後方に気づかれた陣地に次々逃げ込むヒュロス側の兵士とAT。
万事休す。
しかし、そこに弾丸が飛来。
右側エクルビスの左肩を撃破。
少しおいて左側エクルビスの脚部を破砕し、倒れ込ませる。
コマンド・フォークトの狙撃手
ゼトラ大尉とボックメッサー大尉の狙撃だった。
そして陣地の中央に現れたスコープドッグタイプ20。
通称「ターボカスタム」
右肩に狼の意匠。
フォークト中佐の機体だった。
かくしてヒュロスの伝説、コマンド・フォークトと
モラニアの機械化AT師団が相対する。
<次回予告>
赤の奔流は止めどなく押し寄せ、
山を、川を、大地を蹂躙する。
絶体絶命のヒュロス軍。その上さらなる悪夢が襲いかかる。
次回 <黒鳥>
白髪の魔女が戦場を飛翔する。