装甲騎兵ボトムズ 惑星デゲンの奇跡   作:黒猫アプロ

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「青騎士」ATは出さないつもりでしたが・・・やっちゃいました。
ワンオフ機体なので・・・


第15話 黒鳥

かなり後方に押し込まれたヒュロス軍だったが、

フォークト中佐の援軍がついにエクルビス2機を止めた。

 

残り1機となったが、

そこに空白を埋めるがごとく前進してきた

陸戦型ファッティーとチャビィーの群れがやって来る。

 

しかし、超長距離の狙撃がモラニア軍ATの足を止めさせる。

そこに残余のトータスから放たれるミサイル群。

さしものモラニア軍も撤退を余儀なくされる。

 

なんらかの通信があったか、

2組のATが、動けなくなったエクルビスを回収。

悠々と後方へ下がっていく。

 

追撃にかかるヒュロス軍。

しかし、そこに新たな暴風が襲いかかる。

 

漆黒のAT

形状はバララント系。

ホバリングしているのか、常に浮き上がり、

追撃に出たヒュロス軍ATを牽制。

時に脚部や腕部を破壊し、足止め。

自らに耳目を集めさせた上で、追撃がないと見るや

即時に撤退。殿をつとめる。

 

連続一昼夜続いた戦闘もここに終結を向かえた。

 

ヒュロス軍陣地。

急な襲撃で常設守備隊を大きく食い破られたのは非常に痛い事態である。

エース部隊であるフォークト隊が健在ではあるが、

反撃の「手」が足りない状況。

首都までの距離、モラニア側に十分な物量がある状況では、未曾有の危機が

続いていることには変わりない。

 

「・・・あまり言いたくないが、ここを『死守』しないと、

 この戦争は我々の負けで終わるな。」ノルデン少佐の一言。

 

この場にいるのは、現場で戦っている者だけなので、特に反論はない。

 

「例の連中に協力は得られないのですか」これはレーン大尉。

 

「この2日ほど、相手の位置を秘匿しないといけないので、連絡は控えていた。

 話はしてみる。

 ただ、どういう結果になるかはわからない。

 交渉次第だな。」フォークトが簡単に答える。

 

「連中が望むようなものを我々が差し出せるのですか?」とノルデン少佐。

「向こうに行っているボルク少佐によれば、可能性はありそうだ。

 あちらは宇宙ステーションなだけに、物資は貴重だ。

 中に人間がいる限り、物資の提供者は必要だろう。」

「・・・モラニア側が、我々に成り代わる可能性は」

「先ほどの強化人間の技術や思想は、連中の理念と相反する。

 その可能性がないのが救いだな。

では、まず、秘匿通信ができるところで、

 彼らに連絡をとってみよう。

 おそらくこの戦場に来てもらうのではなく、

 牽制させる必要があるが」

 

重い雰囲気をまとったまま、夜は更けていく。

 

 

モラニア軍陣地

 

かなり押していたが、被害はそれなりに大きい。

ただ、「捨て駒」が多いのと、後方から援軍は呼び込めるというのが

現在の優勢になっている。

 

ボラス少佐は割合と楽観視しているが、

チェルニコワ少将はそうでもない。

強化人間が存外使えなかったからだ。

 

相手が一般兵なら予測通り使えるだろう。

だが、今回相対した、フォークトの部隊には通用していない。

3機投入したエクルビスは1機が現存。

2機はどこかしら破損。

そしてパイロットが“壊れている”。

 

「全く、この程度の負荷に耐えられないとはな。

 肉体は強化できても、精神が脆弱なのはいただけないな。

 ・・・・

 むしろ、早くこの戦争を終わらせ、

 ヒュロス側の有能なヤツを改造した方がいいな。」

チェルニコワは凄惨に微笑む。

 

ボラス少佐はその笑顔に心底怖気を震わせられるが、

副官として忠告はする。

「・・捕虜を使うのは戦時協定に違反しておりますが・・・」

「少佐、これは『治療』なのだ。

 純粋な医療行為だよ。

 あの特殊機体の連中をみろ。

 操縦効率は30%ほど向上し、

 回避律は50%越えだ。」

 

さすがにボラス少佐も無言。そして話題を変える。

「・・それより、明日の作戦行動ですが。」

「あぁ。さっさと終わらせたいところだが、

 兵站が追いついていない。

 あの連中は壊すのは得意だが、

 直すのは無理だ。

 故に大変残念ながら、1日は待たざるを得ないな。」

「承知しました。

 それと、閣下の新機体ですが、

 メンテナンスは大丈夫でしょうか。」

「あぁ、それは懸念に及ばぬ。

 今の状態で補給が必要なのは武器の弾薬だけだ。」

 

戦況は有利。

そしてあと少しで戦争終結が見えたと思っていたボラス少佐は

楽観視から、警戒レベルを数段階あげて対応する必要があると

考えた。

 

 

 

 

 

 

 

ダニエルの宇宙ステーション

 

戦況は衛星軌道外にいるダニエルの宇宙ステーションでも

データ通信を通じて把握されていた。

 

データ解析のため、ステーションに駐在しているボルク少佐は

さらにフォークト中佐からの亜空間通信を受け、

キリコたちに牽制を要請してきた。

 

“うわ・・・おっかない人もいたものね~”

チェルニコワの話を聞いたダニエルの率直な感想。

「バララントらしいとは思うな。

 一見、人間を治療して復帰させる技術。

 その実態は人間のサイボーグ化だろう。」あっさりとキリコ。

「あの、ニーヴァって人もある意味ではかわいそうなのね」とフィアナ。

 

「それで、なんとか協力してくれるかね」ボルク少佐が痛切な顔で尋ねる。

 

「そうだな・・・・」

キリコはフィアナを見やって言う。

「このステーションの安全が保たれる範囲ならな。

 ダニエルはどうだ。」

“いいわよ。いろいろ物資も入手できるし。”

“引き続き協力しましょう。”

 

「助かる。早速中佐に伝える」

そういうと、通信機に向かって話し始める。

 

フィアナは通信端末に向いて惑星デゲンの地図を表示する。

「今の状況だと、モラニアは退いてくれない。

 だとすると、こちらから敵の安全地帯を脅かすしかないわね。」

そう言われてキリコは地形図をじっと眺める。

 

そこで地図の一点に目を留め、ボルク少佐を見る。

「少佐、ここがなんだかわかるか?」

「・・・それは敵首都の水瓶になっているダム湖だな。

 モラニアは近くに水源がないので、かなり首都の遠くから

 水をひいているんだ」

「ダニエル、ここの高低差はどのくらいある」

“・・・・衛星データを信じるなら、およそ200mというところかしら。”

“あっ”

「気づいたようだな。

 ここが破壊されたら、敵も戦争どころじゃない、

 ・・・とは思わないか」

 




<次回予告>
絶体絶命。
モラニア機械化部隊はヒュロス首都ブラヴェに迫る。
「死なない兵士」「改造人間」彼らの執念がヒュロス最大の危機を作り出す。
挽回の一手は功を奏するのか。
次回 <陽動>
キリコの選択がヒュロスの運命を決める。
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