装甲騎兵ボトムズ 惑星デゲンの奇跡   作:黒猫アプロ

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やたらと現代日本的技術が出て来ますが、きっと気のせいです。


第23話 氷結点

北極点。

惑星デゲンにおいても厳しい気候風土である。

しかし、完全に氷の世界ではなく、陸地に万年雪、常時冬の世界である。

 

この土地は農産や漁業という価値ではない。

宇宙との通信、連絡、惑星地表での通信網の拠点としての価値である。

 

ヒュロス軍はこの地に大型の通信施設を建築し、

モラニア軍を抑えにかかろうとしている。

その施設の建設のため、必要なATが投入された。

 

・スレッジトータス(ATH-14-WTC)

 

ギルガメス軍のスタンディングトータスを冬季装備および冬季輸送装備に

変更したもの。

間接部の凍結防止のため、カバーを装備している他、

カメラ部分は低温耐久性のある部材を使い、表面も透明のバイザーで覆っている。

 

また、宇宙ラボでの設計で、左腕のみガトリング砲が外付けで装備されている。

脚部はオプション装備があり、今回はジェットスキー、

輸送専用機はスキー+輸送コンテナという組み合わせである。

 

・ツヴァーグ厳冬地仕様(X-ATL-01-WTC)

 

機体の外側だけがアルフィアたちと同じだが、寒冷地向けにポリマーリンゲル系と

ポリマーリンゲル液自体を冬季向けに交換、循環効率を高めることで、

運動性を維持した機体。おなじく間接部はカバーされている。

なお、AI搭乗員ではなく、比較的小柄な人間の乗員向けの機体とされている。

(背が高い/重い隊員だからといって搭乗できないわけではない)

 

3機種目が今後更なる改良を施す予定の新型機である。

 

◎(仮称)メタルバック型ヘビー級AT(X-ATH-10-PT)

 

従来のスタンディングトータスの構造、ポリマーリンゲル循環系、マッスルシリンダーそのものを全て一から見直し、ハイパワーかつ高速駆動を可能とした試作型AT。

スタンディングトータスがもう一枚外套を着込んだような見た目だが、

脚部にラビドリードック同様の無限軌道が一部採用されており、ほぼ全天候型の

運用が可能。

開発はダニエルのステーション、材料開発はヒュロス既存のものから作っているが、

いくつか変わったものがある。

 

 -植物繊維強化型軽量装甲

  惑星デゲンの木材に多く含まれるナノファイバーを様々な植物から試験的に抽出し、

  金属材料として成形する際にファイバーを分散。

  これにより、ナノファイバーが面を強化する役割を果たし、従来の金属複合装甲より

  重量15%減、強度30%向上を達成している。

 

 -生体模倣型ポリマーリンゲル液

  哺乳類の血液の流れを研究し、エネルギー伝達率を向上させ、反応速度を向上、

  さらに安全性を向上させる触媒を加えたもの。

 

 -生体模倣型マッスルシリンダー

  一部の軟体性生物の筋繊維の研究から生まれた新型の導電性高分子。らせんと

  直線を組み合わせた構造をもち、これを数万本束ねることで作成している。

  連鎖反応の再現性に難があるため、収量が少なく、現状では貴重品。

 

なお、名称は「リクガメ」でも「ウミガメ」でもないので、

「オサガメ」(leatherback)の亜種として指定されている。

 

新型AT、特に“メタルバック”については、ボルク少佐がダニエルと生物に関する

雑談を繰り返す中で得られた知識をフィードバックし、地上の工廠で試作品を

作るという行動を数ヶ月繰り返してできたものである。

 

例えばこのように・・・

 

“そういえば、ヒュロス近郊の海で採れるデゲンウミクロナマコは、

定期的に飛び跳ねるって聞いたけど、そうなの?”

「あぁ、海洋生物研究所の報告によると、潮の干満に応じてそのような行動を

 取るそうだ。」

“それってどのくらいなの?”

「ちょうど映像が送られてきているが、見るかね?」

“是非”

 

“あぁ、体長の10倍くらいは跳ぶのね・・・”

「論文では、筋繊維の構造の影響が一番大きいという結論だったな」

“それってどんな?”

・・・・・・

こうした対話の繰り返しで、新たな材料を惑星デゲンで生産することに

なっている。

 

極地点では大型レーダー施設の建造を進めている。

だが、それを狙っているのはヒュロス側だけでもない。

 

極地点のちょうど反対側、西側方面から、大型輸送艦と

陸戦AT1個小隊が前進してくる。

モラニア軍である。

 

「前方3km、東側極地点でヒュロス軍の行動を感知。指示を請う。」

「本部より偵察隊。工事を妨害せよ。」

「敵、未知のATが護衛についている模様」

「本部より偵察隊。工事しているATを優先して排除せよ。

 護衛ATが出てきたら退け。」

「偵察隊了解。」

 

モラニア側は陸戦特化型のチャビィーが5機。

上空には爆撃機が到来。

反対側に軍事拠点を構築していたか、非常に準備がよかった。

 

モラニア側の攻撃は鋭く、工事にかかっていたATの数多くが破損。

ヒュロス軍の陣地か塹壕へ退去。

工事現場は続いてやってきた爆撃機により破壊されてしまった。

 

そこにヒュロス側の新型ATが到来。

爆撃機を肩部ミサイルで迎撃。

チャビィー隊に突貫。

 

「こちらウルフ1,敵チャビィー隊を撃退するも、

 工事施設の防衛間に合わず。爆撃により構築失敗。」

ATの前垂れ装甲に狼の意匠。

フォークト隊の一番機、レーン大尉が搭乗していた。

 

「こちら本部。工事していたATを輸送機で回収。

 撤退せよ。」

「・・・了解」

 

レーンは指示通り、輸送艦にATを運び込み、あるいは搭乗させると

自機もそのまま搭乗させようとする。

その刹那、反対側から、漆黒の塗装の新型機が高速で迫ってくる。

「あれは!」

高速かつ飛翔して迫るその姿から、不吉を呼ぶ「黒鳥」とあだ名される機体が

単騎迫ってくる。

 

「輸送機、こちらに構わず全速力で退去せよ。援護する」

「・・! しかし、大尉、危険です。」

「あれは高い飛翔能力がある機体だ。誰かが殿しないと危険だ。

 こちらは戦いながら退くので、先行しろ。

 もし、早めに拠点に到着したら援軍を。」

「・・・了解。ご武運を」

 

高速で離脱する輸送機を見送り、“黒鳥”は予想通り、レーン機に対する。

一瞬の後、互いを狙った攻撃を開始。

高速カタパルトランチャーの弾幕が迫るが、回避。

タイミングをずらし、フェイントをいれるも当たらず。

 

レーン機も大型ソリッドシューターで一撃を狙うが、全て紙一重で、

しかも余裕をもって躱してくる。

 

互いに高度な射撃と回避を続けるのは、まるで輪舞(ロンド)。

しかし、その時間は機体の限界がきたことで終わりを告げる。

 

黒鳥は再び自拠点に下がっていく。

素早く。しかも優雅に。

 

レーン大尉はエース機と思しき敵の戦い方に慄然としていた。

モラニアも決して衰えてはいない。

一時の休戦で力を取り戻したのはヒュロスだけではなかったのだ。

 

この戦いが何度も繰り返される宿命とはどちらもまだ知らない。

 




<次回予告>
凶事は繰り返す。ヒュロス軍の行く手に常に現れる凶鳥。
再び迫る国家の危機にコマンド・フォークトのエース達が立ち上がる。
次回 <応報>
軍隊と軍隊が、そして互いの意地と意地が正面からぶつかる。
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