装甲騎兵ボトムズ 惑星デゲンの奇跡   作:黒猫アプロ

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第24話 応報

極地での戦いは続く。

 

モラニア側も全球での通信有利を狙って基地建設を試みていた。

自領域から到達しやすい最北端に常設基地を建設。

ヒュロス側と異なり、兵站を含めた大規模輸送を繰り返し、

しっかりとした軍事拠点を形成した上で施設建築を開始している。

 

「工事進捗率はどの程度だ」

“黒鳥”ポッドベリーのパイロット、機械化兵の統括を行う

オリガ・チェルニコワ少将が尋ねる。

 

「凍土の地盤が予測より脆く、土壌改質工事中であります。

 現在、元のスケジュールから2週間遅れ。

 ただし、閣下のお手配により、本部工兵部隊が投入され、

 ヒュロスに先んじて電気関係の工事が終了しております。」

工兵隊指揮官のイリヤ・コンドラチェンコ少佐が報告。

 

「兵どもの士気はどうだ」

「閣下が直卒される重度機械化兵を除くなら、概ね良好であります。

 特に昨日の閣下のご活躍に伴い、AT搭乗員と整備兵の士気が向上しております」

「世辞はよい。

 だが、一般AT搭乗員の士気向上は重要だ。

 本日も訓練は欠かさないように」

「承知いたしました」

 

機械化兵には冷酷、というか、鞭と鞭、といった姿勢で臨むが、

一般兵に対しては-それが自らを侮ったり、女性将校であるからという態度を取ったり

しない限りでは-たっぷりの飴で応ずるため、

強面女性士官の割に部隊の士気は高い。

 

特に、“指揮官が強い”ことで、一般のAT乗りの忠誠心は高い。

それは「生き残れる」から。

彼らは厳しい訓練もこなし、組織立って行動できる点では

機械化兵を上回る精兵である。

 

外は吹雪。

周囲には静けさも漂っていた。

 

数時間後、警報が鳴る。

「何事だ。」

「敵襲であります!」

 

チェルニコワは獰猛な笑みを浮かべる。

「ほう、こちらに気づいたか」

次いで出撃の用意をしようとしたところで、副官に止められる。

 

「閣下はお待ちを。」

「なぜだ。一当てして潰してくれよう」

「・・・閣下の機体はメンテナンス中であります。

 ポリマーリンゲル液の再蒸留装置が動作不良で、あと1時間ほどかかると」

「ではどうする。」

「・・・自分が出ます。」と、ボラス少佐。

 

ちらりと顔を見るが、動じている様子はない。

「よかろう。行け。」

「はっ!」

 

灰色の陸戦仕様チャビィーが20機ほどの寒冷地仕様ファッティーを伴い

出撃。

 

敵方へ進出すること10分、見たことがないトータス級の機体に率いられた

寒冷地仕様のトータス級10機、ドッグタイプが15機。

 

「隊長のトータス級は捨て置け。

 まず足の速いドッグ級を討て。

 隊長機は自分が引き寄せておく。」

「はっ!」

 

ファッティー隊はドックタイプに集中。

軽装甲とみて、射線を躱すと接近戦に移行。

次々とパイルバンカーで仕留めていく。

 

だが、そこに背後のトータス級の援護射撃と

前衛の5機ほどが、接近戦を挑む。

応酬しようとするも、パイルバンカーの射程外。

意外に思っている間に、敵に接近され、アームパンチで機体を地面に転がされる。

敵僚機の射撃で2機が爆散。

 

戦いは混戦模様になった。

 

(おかしい)ボラス少佐は思う。

(我々と同じ行動をとることは予想の範囲。だが、決め手に欠ける)

(この焦燥感はなんだ・・・)

 

敵の新型機も距離をとって戦い、接近してこない。

 

そこに長砲身の砲からの一撃が基地を襲う。

レーダーの基部としようとしていたコンクリートの土台に命中。

続く二射目、三射目でひび割れ、上部構造物の重さで崩壊していく。

 

「ちぃ、やり返されたか!」ボラス少佐が焦燥感の正体を知り、歯がみする。

新型トータスは、その成果を見てゆっくりと退いていく。

 

「追撃しますか?」

「やめておけ。遠距離射撃に長けた機体がいるが、探知範囲外だ。

 各隊も撤収しろ。」

 

極地での戦いは一進一退。

両軍の戦いは次第に膠着の様相を呈している。

 

 

ヒュロス軍後衛。

 

寒冷地で動作できるように、ポリマーリンゲル系と関節部分をカバーした

ボックメッサー機がアンチ・マテリアル・キャノンを構えている。

 

「大尉、ありがとうございました。」

「何、君らが隙を作ってくれたから撃てたのだよ。」

 

射撃姿勢を解いて、輸送機に移動する。

 

「だが、次もうまくいくかはわからんな。」

「・・・そうですね。」

 

次の戦いは何か押しの一手がいる。

今、それが何かはわかっていない。




<次回予告>
「神」を殺した男、キリコ・キュービィー。
その存在は歴史の舞台から降り、消えたはずだった。
彼を信仰に導くか、打倒せよ。自らが「神」の代行者にならんと、
野望を抱くものが表舞台に現れる。
次回 <聖地>
新たなる伝説劇の幕が開く。
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