ロッチナ、今回は上手く立ち回れなかったようです(笑)
アストラギウス銀河の中でクエント消滅後、唯一残った「不可侵宙域」。
それが、この<惑星ジアゴノ>の一帯である。
ここには汎銀河的宗教である「マーティアル」の本部がある。
“武は万物の調和なり”を掲げる、競争至上主義、いや、戦争至上主義を
掲げる宗教である。
その教義からか、この宗教はギルガメス・バララントの両陣営に広まっており、
軍高官となって退官した者がマーティアルの司祭などに転籍するのは普通である。
先にバララントから“出向”させられたロッチナ大佐もその一人と言える。
・・・ただ、彼のように両軍に顔を知られている者にはよい職場かは疑問ではある。
こうした軍からの転籍者は一括して「初任者研修」を受講する義務がある。
座学はもちろん、宗教らしい「実技」も存在する。
惑星ジアゴノ、マーティアル本部がある都市アレギウム。
根本聖堂の向かう参道は巡礼者がひっきりなしにやってくる。
その通りから1本入った裏で、その研修は実施されている。
手に巡錫を持った中級司祭が説明する。
「神に近づくため、いやしくも神に仕える者はこの儀礼が必須である」
それは五体投地しながら、マーティアルの教義を唱え、研修施設入口から
根本聖堂まで進んでいく“苦行”である。
初任者300名のうち、“選ばれしもの”10名がこの苦行に参加する。
・・・ただし、それは司祭の指名によって。
10名のうち、一番遅かった者は翌日もこの苦行に参加する。
これが繰り返され、信仰に目覚める者もいれば、
単に身体を壊すものもいる。
今、その狭間にいるのが、ロッチナ大佐であった。
「・・・ロッチナ記録官、貴官は本日も最も劣っておった。
よって明日も朝から参加してもらう」
元ギルガメスの将校であった司祭は憎々しげにロッチナを見やる。
(ワイズマンの意思を伝える役であった私が、なぜこのような!)
この宗教の実態を知っているだけに、苦行には全く身が入らないロッチナ。
とはいえ、毎日がこの調子では身体を壊す。
連続10日目でようやく解放された時に、ロッチナは腰が曲がり、
髪の毛も大部分が白髪に変わっていた。
這々の体で宿舎に戻ると、もはや身動きもできず、粗末な寝床に横たわる。
しばらく寝入っていると、懐かしい“あの感覚”がやってきた。
<おお、ワイズマン!!>
[久しいな、ロッチナよ。]
<我が神よ、いずこにおられるのですか>
[クエントの兄弟星、惑星ヌルゲラント]
[クエントが消滅した場合、予め住民と主要な施設や遺産は転移するように
なっていたのだ。]
<それは僥倖!>
<して、次の任務は!>
[お前は記録官。今後起きるであろうことを全て記録せよ。]
<キリコは!キリコを追う必要がありましょう!!>
[無用だ。]
[彼の者に触れてはならぬ。]
[もし誰かがキリコに触れようとしたらそれを止めよ。]
[今度は星一つでは済まぬ。銀河系が滅びようぞ。]
[よいな。触れてはならぬ。]
それでメッセージは途絶えた。
しかし、翌朝、聖庁はメッセージを発した。
「アレギウム聖庁は今般、惑星クエントを消滅させた
キリコ・キュービィーを敵とみなし、
その討滅を宣言する。」
「キリコ・キュービィーを信仰に導け。
さもなくば討滅せよ。」
<次回予告>
神をも恐怖させる男、キリコ・キュービィー。
しかし、彼を屈服させることができれば、全銀河を握ることができる。
止めどない支配欲は己の力を見誤らせる。
次回 <欲望>
人智は神意を超えることができるのか。