装甲騎兵ボトムズ 惑星デゲンの奇跡   作:黒猫アプロ

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第29話 意思

モラニア共和国はバララント陣営の国家である。

しかし、今回はマーティアルの意向で特別にギルガメス陣営の技術者と兵士、

これに伴う兵器群もこちら側に投入されている。

 

その技術の一つが、FS(Faithful Soldier)である。

運動と反射を司る神経の一部に、ナーヴコネクタと呼ばれる装置をとりつけ、

通常時は特に反応せず、戦闘時にATの操縦デバイス系を通じて、制御信号を送り、

能力を底上げする生体機能ブースト装置である。

 

ただ、こうした兵器にありがちで、装置との相性は個人差が大きく、

問題なく取り付けることができる者、取り付けは問題ないが、機能しない者

そして取り付けた時点で異常をきたし、死に至る者に分かれる。

 

アズライトがかつて所属していたAT小隊がその試験対象となり、

アズライトは装置に反応しない者、

隊長のティア・ハミルトンは装置に適応、

そして今、かつての隊員、ギャップ・グラファイトが

情報部の謀略により捉えられ、ナーヴコネクタの取り付け処理をされたところであった。

 

マーティアル援護艦隊(ギルガメス軍派遣)旗艦 オール・アドナイ

 

数年前まで秘密結社所属だった軍医、ゾディアックが報告する。

「閣下、取り付け処理は無事終了しました。」

秘密結社の生き残り、トガル大佐が尋ねる。

「今度は暴走しないだろうな。被検体となる頑健さを誇るものは希少なのだぞ?」

「今度は『保険』をかけましたので」

 

その後、しばらくしてギャップが目を覚ます。

「おはよう。ギャップ曹長。気分はどうかね」

「・・・・最悪だ。殺すならさっさとやんな。俺はおまえらには従わないぞ」

「ふむ。順調な措置だったようだな。なに、君の意思は関係ない。

 それだけ頑健なら、最新型のATでも大丈夫だろう」

「なに?」

 

トガルはギャップを連れて大型のATの前に来る。

「どうかね。我が軍最高の技術を詰め込んだ最新のAT「トライアルゴリラ」だ。

 君は恋敵だったアズライトと決着を付けたがっていたね。

 このATなら鎧袖一触だぞ?」

「いつの話だ?

 もうアイツとやりあう気はねぇよ。

 ただ、このATはもらっておくぜ!」

 

ハッチが開きっぱなしだったATにギャップが乗り込む。

なぜかトガルはそれを平然と見ている。

ハッチを閉め、ATを起動。

目の前のトガルに照準を合わせたその時、ギャップの神経が一瞬で麻痺。

彼はATの中で飛び上がったようにけいれんし、身動きがとれなくなる。

 

「ふむ。ゾディアック軍医大尉の言う通り、成功のようだな」

「・・・ち、何をした・・・」

「君らの小隊長と同じになってもらったのだよ。

 最近聞かないかね。ナゾのAT「ホワイトバイザー」の噂を」

「!あれがティアだったのか・・・」

「これからは君も同僚だ。仲良くやり給え。」

 

けいれんがおさまり、ようやくATから這い出すギャップ。

そこに無表情でティア・ハミルトンが現れる。

「おい、ティア!」

「ムダだよ。彼女はとうの昔に感情を捨てている。

 増して君の声など届かないだろうさ」

「ちっ、この人非人め!

 地獄に墜ちやがれ!!」

「なんとでも言え。

 この技術が完成した暁には、私たちはマーティアルの幹部だ。

 君らもせいぜい長生きし、神の尖兵として貢献したまえ。」

 

 

マーティアル援護艦隊(バララント軍派遣)旗艦 シーラ・ナローダ

 

バララント側も本国から艦艇は派遣したものの、人員の多くは構成惑星から

抽出している。

その中で異例だったのは、現地デゲンのモラニアからの召還。

サイボーグ化技術、ATとの機械的な連携を高いレベルで成し遂げたことで、

本事変終了時をもって、バララント本星へ移籍する、オリガ・チェルニコワ少将が

率いる機械化部隊が搭乗している。

副官のボラス少佐もそのまま同道している。

 

 

ギルガメス側の実験映像を眺めていた2人。

「しかし、あちらもえげつないことをするものですな。」

「本当にムダなことをするものだ。死にかけた兵ならともかく、鍛えられた

 五体満足の兵を統御できないということだろう。あれは。

 それに適合率が低すぎる。私なら不採用だな。」

珍しく機嫌の悪いチェルニコワ。

おや、という顔で彼女を見るボラス少佐。

「まぁ、確かに人間をロボット化するようなものですな。」

「事情はわからないが、極めて非効率なやり方だな。

 もし、この事変の後、ギルガメスと開戦することになっても、

 我々の優位は揺らがないだろうさ。

 そういう意味では安心ではあるな」

 

そこにマーティアルから暗号電文が入る。

翻訳文を受け取るボラス少佐

「なんだと言っている?」

「・・・どうやらマーティアルはあちら側の技術を自分たちの強化兵に使用した

ようです。我らはヒュロス攻略にまわれ、とのこと。」

「ほう。まぁ、都合はよいが」

「ただし、首都攻略はまず、マーティアルが行う。

 その結果をフォローせよ、との内容です」

そう言って翻訳文を手渡す。

「・・・・まぁ、よかろう。

 おそらくフォローというより尻拭いではと思うが。

 こちらの戦力を出さずに済むならそれに越したことはない。」

 

「この件、本星に通達しておけ。

 おそらく作戦が失敗に終わる可能性が高いことも含めてな」

「はっ!」

 

根拠がない自信を示すマーティアル。

ひとまずステーションの補給源とみられるヒュロスを攻略。

その後、物量でステーションを落とし、技術の独占を狙っているようだ。

だが、マーティアルはどうしても寄り合い所帯。

士気も低い。

 

果たして意思なき人形が勝つのか、

意思をもつ人間の前に道が拓けるのか。

それはまだわからない。

 




<次回予告>
戦端がひらかれる。大量の物量と意思なき人形の軍隊が押し寄せる。
対するは理不尽に抗おうとする強い意志の持ち主たち。
一騎当千のエース達が戦場を駆け巡る。
次回 <ヒュロス防衛戦>
伝説のエース達が真価を発揮する。
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