戦闘はマーティアル側の長い宣戦布告から始まった。
様々な宗教用語で彩られた長い文書だが、要旨は単純である。
○ 惑星デゲンの国家ヒュロスは、『神』を葬った男、キリコ・キュービィーの
助力を得て、対抗国家モラニアに奇襲をかけた。
○ その方法は都市インフラを破壊するなど人道に反しており、公正な競争を
正義とするマーティアルの教義に反するものである。
○ さらにヒュロスはキリコの助力を得て宇宙にも進出。彼の者の手先となって
ギルガメス軍を攻撃。艦隊全艦の覆滅および忠勇なるAT隊全機を壊滅させる
など言語道断の行動をとっている。
○ ゆえにマーティアルはキリコ・キュービィーとともに、ヒュロスを敵対国家と
みなし、聖戦としてこれを討滅するものである。
意外なことに、バララントもギルガメスもこれをもってヒュロスを非難することは
なく、沈黙を守っている。
他方、モラニアにおいては、先頃の首都壊滅の報復の機会であり、この際、ヒュロスを
壊滅する好機であると考えているようで、前線には活発な活動がみられる。
- 一般兵については、首都壊滅に伴い食料が不足、ATなども損耗が激しく、装備は
十分ではないため、人民受けは極めてよくない。
- ただし専制国家であるため、最後は国家の「力」が全てを決める
こんな状況から戦争はスタートした。
【北部戦線】
ヒュロス北部の平原地帯には、バララント主体の攻略軍が配置されている。
ただし、こちらには古くから戦略防壁がヒュロス軍によって構築されている。
こちらはヒュロス側に利があり、進軍を阻むことに特化したATや兵器群が分散して
配置されている。
バララント側は一点集中して突破を図るも、左右からの長距離射撃は協力で
ATの残骸の山を築いている。戦闘はすぐに膠着状態に陥った・・・かに見えた。
よく見るとATの残骸は最も装甲が厚い擁壁に集められている
その時、前回のヒュロス防衛戦で指揮をとっていた将校が思い出す。
「白い魔女のトラップ」を
「いかん!全軍即座に待避!!」
その刹那、大爆発。
ほぼ完璧だった配置の擁壁に、文字通り穴が開き、敵AT隊が突入してくる。
しかし、これを予測していた者がいた。
アズライトのバトリングチームの仲間たちの中の2名、
1人は戦闘ヘリ、
1人はアストラッド、
最も大きな「穴」のところに布陣。
アストラッドの遠距離射撃、戦闘ヘリのミサイルが降り注ぐ。
対空装備をもっていないAT隊は混乱を始める。
さらにここにフォークト隊のノルデン少佐率いるスコープドック隊が突入。
ファッティーとチャビィーから構成されるATを撃破していく。
敵軍は自軍の擁壁の後ろに撤退。
ヒュロス側の戦闘ヘリとアストラッドも静かに下がっていく。
北部戦線はヒュロス側が戦線を維持しているようだった。
【南部戦線】
南部はモラニア軍の担当。
こちらは切れ者のチェルニコワ少将がバララントに引き抜かれて以降、
まともな将官が減少。特に先般の首都攻撃のあおりで人材がいない。
その結果、権限はドーラ大将に集中していたが、残念ながら戦略家ではない彼では
大軍を動かすに足る器ではなかった。
そもそもドーラは参謀本部勤務がほとんどで、前線にはほとんど出ていない。
結果として、前線の要望や気持ちは理解できないので、作戦はただ一つ。
「前線に出よ。その場で出せる最大の数と補給で」
「後退するな。後から来る友軍がさらに前へ進むだろう」
・・・・困った「大将」である。
唯一の救いは、明らかに巻き込まれたと推察されたことから、
バララント本軍が兵糧の補給は欠かさなかったことである。
そのため、「大軍の一部であり、いざとなればマーティアルが支援してくれる」と
考える前線兵の指揮はそこそこ高く保たれていた。
ヒュロス側の主力はコマンド・フォークトから、レーン大尉とゼトラ大尉のコンビ。
前線はレーン大尉率いる突撃AT隊、後方はゼトラ大尉率いる狙撃AT隊である。
この戦線では、モラニア側が持ちうる航空戦力の半数以上を投入して、前線を潰しにかかっていたが、ヒュロス側擁壁の近くが、ゼトラ大尉たちの「キルゾーン」に設定され、
足が遅いヘリはよい狙撃の的になっていた。
加えてモラニアの地上部隊はATのみ、こちらは擁壁上のAT部隊が誘導ミサイルや
大型ビーム砲で放ち、前進は阻んでいる。
航空機群が落とされた後、数瞬、レーン大尉率いるAT隊が敵に突入する。
「おい、なんだ、あの足の速いトータスは!」
「いいから撃ちまくれ!!」
レーン大尉のAT「メタルバック」と脚部を不整地装甲仕様にして、スキーを履くように
ユニットを脚部にとりつけた既存ATのアップデート機である「スタンディングトータスMk.Ⅲ」数機が擁壁を飛び出し、モラニア側に迫る。
特に足の速いレーン機に集中砲火するも命中せず、そこに追いかけてきたトータス隊が
誘導ミサイルを発射。擁壁上の拠点を潰していく。
“大尉。擁壁上の拠点を全て制圧しました。”
「わかった。本部、こちらウルフ1。南側の敵擁壁は沈黙」
“本部了解。敵航空機、後続支援認められず。ウルフ1はこちらの支援射撃を待ち、
敵側に突入せよ。“
「ウルフ1了解。」
“本部よりウルフ2。敵擁壁への通路を工兵隊に構築させよ。
その後、ウルフ2率いる狙撃部隊は擁壁上へ展開せよ“
“ウルフ2了解。”
偵察の結果、案外モラニア軍は脆く、次第に後方拠点へ移動していることがわかった。
前進命令が出る。
が、しかし、それにしてはあまりに手応えがない。
レーン大尉もゼトラ大尉も怪訝に思っていた。
「ゼトラ大尉、あまりに敵が脆くありませんか?」
「ああ、俺もそう思っていたよ。
いくら首都が壊滅し、人がいなくなったとしても
ちょっと脆くなりすぎだな。」
「・・・・嫌な予感がしますね。」
「・・・そうだな。」
その時、本部と宇宙ステーションから緊急通信。
「こちら宇宙ステーション。現在、マーティアル本軍の攻撃を受けつつあり。
相手圧倒的多数の模様。直ちに救援請う。」
「こちら首都ブラヴェ防衛本部。フォークトだ。
現在、敵軍は宇宙から首都を直接叩く模様。
しかし、住民は既に後方都市群、あるいはシェルターへ避難済みである。
各方面軍の援護は不要。繰り返す。各方面軍の援護は不要である。」
順調だった防衛戦。
先にキリコ達が実施した作戦を逆手にとられてしまった。
ヒュロス軍はこの危機を乗り越えることができるだろうか。
<次回予告>
能ある鷹は爪を隠す。
ヒュロス側を油断させ、防衛の隙間を作ったマーティアル。
次は彼らの「目」を盗みにかかる。
次回 <ステーション強襲>
フォークトはマーティアルの遠大な戦略を打破できるのか。