当初目論見通り、マーティアル側の作戦は進行中である。
宇宙ステーションがない以上、衛星情報の統御は困難。
事前諜報の通りであれば、どこから攻撃されるかわからないため、
ヒュロス軍は恐れ戦いている状況のはずであった。
モラニア側の衛星情報を参考情報にすると、ヒュロス軍は上空からの攻撃や
ATの襲来を恐れていることがわかる。
その裏を書いて、都市防壁外に十分な数のAT隊を配備すれば敵首都ブラヴェは
攻略可能である、というのが参謀の目算であった。
その作戦に従い、AT隊は上陸用舟艇で輸送。
防衛拠点周囲に展開し、次第に輪を縮めていく方策をとっている。
また、相手も精鋭がいることを想定し、対応部隊は・・
- マーティアル親衛隊本体AT(エルドスピーネ)×20
- ギルガメス軍 FS部隊(特殊AT×2、他はブラッドサッカー部隊×15)
- その他補給部隊 である。
FS部隊の指揮官、トガル大佐は部隊に上陸するよう指示。
しかし、早速、情報にずれが生じる。
「大佐殿、事前情報と異なり、着陸地点は大きな岩が転がっております!」
と、場所が異なるという者、
「て、敵兵だ!!」といい、周囲に射撃を行って上陸するもの
その状況に怖じ気づいて、勝手に戦略を変更するもの
敵との邂逅前に既に混乱が広がっていた。
ダニエルの宇宙ステーション
“ふっふっふっ・・・・目論見通りね。”
立体映像の少女は悪い顔で笑う。
「嬢ちゃん、どっちが悪役か、わかんねぇからやめようぜ・・・」
ゴッペル曹長はあきれ顔である。
“え~・・・でもぉ、ちゃんと確認しないのが悪いんじゃない!”
「そうだけどよぉ・・・」ゴッペルも若干歯切れが悪い。
ヒュロスの宇宙ステーションには、移動ポータルの入口設定とともに、
通信を阻害するナノマシンがばらまかれていた。
また、これと別に、電子的視覚を“歪める”微粒子を通じて、
敵の視覚を“乗っ取り”、いない「敵」、存在しない「岩」
逆に存在している、目の前の敵、を発生させるなど、
敵の視覚を奪い取る技術を導入していた。
これは単なる光学機器、肉眼観察なら簡単に見破られるが、
「電子」をかませた途端、ニセ情報に支配される仕組みであった。
FS部隊が高度に機械化・電子化していたことも、彼らの不幸につながった。
だが、「ニセモノ」はつまらないきっかけで見破られる。
慌てて作った情報であったので、多重に重ねたとき、前後の映像と矛盾が生じたのだ。
部隊の稼働機が1/3にまで減少してからの出来事であった。
「えぇい、だが、この2体は特別だ。残ったATで護衛しながら先行させよ!」
レッドショルダー部隊の生き残りで構成されたブラッドサッカーの部隊は、
欺瞞にも騙されずきちんと護衛している。
1機は“ホワイトバイザー”。通称「ガスティドッグ」。
FSであるティア・ハミルトン専用に調整された機体。
高速ガトリングガンに加え、近接武器としてパイルバンカーを備えている。
もう1機は、FSの秘密を探っていたギャップ・グラファイトを捉えてFS化したものの
機体。通称「トライアルゴリラ」。ATには珍しく主力兵器は大規模レーザーである。
近接武器はパイルバンカーではなく、フレイムスローワーである。
この2部隊は速度を上げてブラヴェへ迫っていた。
初手はダニエル/ヒュロス軍の作戦勝ち。
しかし、次からどうなるかは予測がつかなくなっていた。
<次回予告>
古来より人は「見えないものを見る」ことによって文明を進歩させてきた。
しかし、今では、「見せたいものを」見せることもできる。
マイナスとマイナスが掛け合わされればプラスに転じるように、
悪意と悪意から善なる奇跡は生じるのか。
次回<救出>
人の思いは高度な技術をも飲み込むことができるか。