装甲騎兵ボトムズ 惑星デゲンの奇跡   作:黒猫アプロ

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第32話 欺瞞

当初目論見通り、マーティアル側の作戦は進行中である。

宇宙ステーションがない以上、衛星情報の統御は困難。

事前諜報の通りであれば、どこから攻撃されるかわからないため、

ヒュロス軍は恐れ戦いている状況のはずであった。

 

モラニア側の衛星情報を参考情報にすると、ヒュロス軍は上空からの攻撃や

ATの襲来を恐れていることがわかる。

その裏を書いて、都市防壁外に十分な数のAT隊を配備すれば敵首都ブラヴェは

攻略可能である、というのが参謀の目算であった。

 

その作戦に従い、AT隊は上陸用舟艇で輸送。

防衛拠点周囲に展開し、次第に輪を縮めていく方策をとっている。

また、相手も精鋭がいることを想定し、対応部隊は・・

- マーティアル親衛隊本体AT(エルドスピーネ)×20

- ギルガメス軍 FS部隊(特殊AT×2、他はブラッドサッカー部隊×15)

- その他補給部隊 である。

 

FS部隊の指揮官、トガル大佐は部隊に上陸するよう指示。

しかし、早速、情報にずれが生じる。

 

「大佐殿、事前情報と異なり、着陸地点は大きな岩が転がっております!」

 と、場所が異なるという者、

「て、敵兵だ!!」といい、周囲に射撃を行って上陸するもの

その状況に怖じ気づいて、勝手に戦略を変更するもの

 

敵との邂逅前に既に混乱が広がっていた。

 

ダニエルの宇宙ステーション

 

“ふっふっふっ・・・・目論見通りね。”

立体映像の少女は悪い顔で笑う。

 

「嬢ちゃん、どっちが悪役か、わかんねぇからやめようぜ・・・」

ゴッペル曹長はあきれ顔である。

 

“え~・・・でもぉ、ちゃんと確認しないのが悪いんじゃない!”

「そうだけどよぉ・・・」ゴッペルも若干歯切れが悪い。

 

ヒュロスの宇宙ステーションには、移動ポータルの入口設定とともに、

通信を阻害するナノマシンがばらまかれていた。

 

また、これと別に、電子的視覚を“歪める”微粒子を通じて、

敵の視覚を“乗っ取り”、いない「敵」、存在しない「岩」

逆に存在している、目の前の敵、を発生させるなど、

敵の視覚を奪い取る技術を導入していた。

 

これは単なる光学機器、肉眼観察なら簡単に見破られるが、

「電子」をかませた途端、ニセ情報に支配される仕組みであった。

FS部隊が高度に機械化・電子化していたことも、彼らの不幸につながった。

 

だが、「ニセモノ」はつまらないきっかけで見破られる。

慌てて作った情報であったので、多重に重ねたとき、前後の映像と矛盾が生じたのだ。

部隊の稼働機が1/3にまで減少してからの出来事であった。

 

「えぇい、だが、この2体は特別だ。残ったATで護衛しながら先行させよ!」

レッドショルダー部隊の生き残りで構成されたブラッドサッカーの部隊は、

欺瞞にも騙されずきちんと護衛している。

 

1機は“ホワイトバイザー”。通称「ガスティドッグ」。

FSであるティア・ハミルトン専用に調整された機体。

高速ガトリングガンに加え、近接武器としてパイルバンカーを備えている。

 

もう1機は、FSの秘密を探っていたギャップ・グラファイトを捉えてFS化したものの

機体。通称「トライアルゴリラ」。ATには珍しく主力兵器は大規模レーザーである。

近接武器はパイルバンカーではなく、フレイムスローワーである。

 

この2部隊は速度を上げてブラヴェへ迫っていた。

初手はダニエル/ヒュロス軍の作戦勝ち。

しかし、次からどうなるかは予測がつかなくなっていた。

 




<次回予告>
古来より人は「見えないものを見る」ことによって文明を進歩させてきた。
しかし、今では、「見せたいものを」見せることもできる。
マイナスとマイナスが掛け合わされればプラスに転じるように、
悪意と悪意から善なる奇跡は生じるのか。
次回<救出>
人の思いは高度な技術をも飲み込むことができるか。
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