ヒュロス首都ブラヴェへの襲撃の最後はマーティアルのATの直接降下攻撃であった。
だが、奇妙なことにこれらのATはそれほどの技量がなく、本国防衛隊にあっけなく
制圧される。
守備隊がそのATに近づくと奇妙な現象が起きた。
ATの外装がはじけ、中から出てきたのはスコープドックであった。
ATがダミーバルーンをまとっていたのである。
そして、警備隊がハッチを開けてみると、パイロットはおらずもぬけの殻。
<総監、首都の脅威は去ったと考えてよいだろうか。>
モニタの中の大統領が聞く。
フォークトは腕組みして答える。
「・・・いや、我々の提携先が危険です。」
<あれだけの技術があるのだから、彼らも自力で対応できるのでは?>
「現在、あちらのステーションには我々の兵はいませんが、整備兵や衛生兵、
軍医などが200名程度滞在中です。彼らを救う必要があります」
<だが、今、我々が宇宙に出るための艦は用意できないのではないか>
「・・・・」
それは指摘の通りで、連絡用の揚陸艦などは、全てダニエル・ステーション側に
待避しているのだった。また、戦争終結宣言が出されていない今、
周辺の協力軍も包囲を解いていない。
通信以外の手段では支援できないのだった。
(キリコ、ダニエル・・・頼むぞ。
ゴッペル、カナワ・・・なんとか生き延びてくれよ)
フォークトも祈るしかなかった。
ダニエルの宇宙ステーション
“いや~・・・しぶとい相手ね・・・”
未だに敵対とステーション攻略を諦めないマーティアルに
ダニエルも半ば呆れている。
「だが、あいつらも我々の位置はわかるまい。」とヒュロスのステーション長
“それがそうでもないみたい・・・”
立体映像のダニエルが空間に周辺航宙図と艦隊配置を表示する。
“見ている限りでは、バララントもギルガメスも様子見”
“ひょっとするとマーティアルが止めているかもしれないけど”
“また、ヒュロス攻略にギルガメスとバララントの協力部隊を使ったみたいなので”
“残りはマーティアルの本体が来るはず”
「だが、位置はわからないだろう?」
“以前、偶然だと思うけど、ギルガメスがちょっかいを出してきたことはあるの。”
“その記憶があるから、類推はできるでしょうね”
黙って聞いていたキリコが発言する。
「問題はどうやって攻めてくるか、だな。」
“また艦隊とATで来るんじゃないの?”
「本気なら」フィアナが険しい顔で続ける
『惑星破壊ミサイル』という手もあるわね。」
“え?でも、そんなことしたら中のもの壊れちゃうんじゃ?”
「別に完全に消滅させなくてもよいなら、直前で爆発させて
小規模な破壊もできるし、通信障害や好ましくない放射線発生もできるわ」
「・・・だが、そいつはバララントかギルガメスの協力を得ないといけないし、
どちらも最終手段としてもっているものだ。簡単には譲らないだろう。
・・特にこの戦争のあとで、両者が再度戦うなら」
と、ル・シャッコ。
「ダニエル、俺たち含め、中にいる人間の食料はどのくらいある?」
“この前、種をもらって、今は野菜工場があるから、一気に大量消費しなければ”
“まぁ、10年以上は大丈夫よ”
「と、なると・・・」
キリコはそう言ってフィアナを見る。
「一つの方法は一時的にここから亜空間転移して逃れること。
距離によるけど、マーティアル艦隊ではそこまでの移動はできないから。
ほとぼりが冷めてから戻ってくればいい」
「次の方法は、この場所でステーションの位置がばれている前提で防備を固めること。
おそらく相手もATを出してくるから、私たちが迎撃する。
ステーションはゴッペルさんとダニエルにお願いすることになるわ」
「最後の方法は、ステーションの中に隠してある移動用の艦を使って
マーティアル艦隊を奇襲すること。ある意味、これが一番低コストね。」
フィアナはそこまで選択肢を示してダニエルを見る。
「さ、どうする?
ここはあなたのお城。どうするか決めて。
私たちはそれに従うわ。」
“わたしが、決めて、いい、の?”
「もちろんよ。
私はあなたに助けられた。今度は助ける番よ。」
「・・・俺もお前に感謝している。
交換条件はまだ達成していないからな。
もちろん俺も協力する。」
「・・・・乗りかかった船だ。俺も協力する」とル・シャッコ。
“みんな、ありがとう。”
“私の選択は”
<次回予告>
「神」を屠り、その座に座らんとするマーティアル。
「神の業」は人の世で垂涎の的。
自らが神を名乗るには不可欠な力。
己の欲に忠実たらんと歩みを進める。
次回 <ラグナロク>
善神は悪神を駆逐できるのか。