“私の選択は、2つ目と3つ目の組み合わせで行くわ。”
“ここを防衛するにあたって、なるべく正体がばれないように”
“隠蔽を続ける。”
“そして発見された場合は、行動阻害用のモノポールをばら撒いて”
“艦隊と敵ATの行動を阻害。”
“その間に敵艦隊を撃破、という方法ね。”
「わかったわ」
“防衛の指揮はフィアナにお願いしたいの”
「いいわよ」
“敵に切り込む時は、キリコだけでなく、シャッコも一緒に行って”
「わかった」
「いいだろう・・・ATはどうなった。」
“設計は終わって、部品単位では完成しているわ”
“ゴッペル、どう?”
「後は組み立てとテストだな。
組み立てに1時間くれ。」
そう言っている間に、工廠の奥のドアが開き、
アルフィアが部品をずらりと並べた台車に乗ってやって来る。
“できたよぅ”
急場なので、色がついていない。
グレーの成形色のまま。金属部分もむき出し。
宇宙用なので機密性は高く、バックパックはバーニアがついている。
かつ、燃料タンクが付随。
ただ、全体の形は確かにベルゼルガ。
「・・・たぶん大丈夫だろう。
殴り込みはすぐではなさそうだ。
もう少しゆっくりやってくれていい。」
「そいつは助かるぜ」
“それほど長くはないけど、時間の余裕があってよかった。”
「一つ提案があるの」フィアナが言う。
「ここにいる全員で、役割分担、できることを確認しておきたいの」
全員とは、ヒュロス・ステーションの人員、フォークト隊のメンバーを含む。
“問題ないわ。防衛にはみんなの力を借りたい。”
防衛側の意思が一つになった瞬間だった。
マーティアル本星 教皇親衛隊旗艦 フィリウス・ウニゲニトゥス・デイ
攻撃側も無策だった訳ではない。
彼らにすると、「神」の力の根源たる、ダニエル・ステーションこそが
攻撃の本命。
ヒュロス攻撃はバララント懐柔策という位置づけ。
ギルガメスも「補助脳」関連技術の実験での参戦という位置づけなので
マーティアルとしての真の目的はこちらであった。
旗艦の艦長であり、本作戦の責任者、ヘルツベルクは思う。
(ヒュロス首都攻撃で新型機を使ったかに見せかけて、本命はこちら)
(また、ATも主力ではない。狙いは艦砲射撃と、密かに使っている
大規模レーザー兵器)
(これでステーションの技術やATを奪取する)
旗艦に加えて随伴の巡洋艦、AT搭載艦とともに、目標のステーションの位置へ
短距離亜空間ジャンプを行う。
「敵ステーション、視認できず」
「おそらくあちらも光学的な欺瞞をしているだろう。
戦闘機を出してナノマシンをばら撒け」
随伴艦から戦闘機数十機を発進。
直進させず、予定位置より前からナノマシンを散布する。
・・・と、数機が何かに衝突したように撃墜・爆散する。
「なんだ!何かあるぞ!」
ナノマシンが効果を発揮する、数分後、艦隊のモニタに表示されたのは
黒い巨大な衛星級の物体。巨大な金属の塊のようだ。
さらにその周囲には、巨大な柱状の金属が規則正しく整列しており、
その柱はしばらくするとゆっくりと周囲を運動していく。
「ワイズマン・ステーション・・・・・」
その柱の動きが緩慢とみて、戦闘機は隙間を縫ってステーションへ接近。
さらにナノマシンを散布。
しかし、表面に近づこうかという段階で、対空兵器らしいもので撃墜される。
「閣下、いかがしますか」
「さらに戦闘機を出せ。
運動のアルゴリズムを観測するのだ。
隙を見てさらに後続させろ」
指令に従い、さらに戦闘機を追加発進させる。
また、後続機には追加の指示。
「表面にたどり着けるようなら、なるべく対空兵器を無力化しつつ、
外部との連絡ハッチを探せ。そこの装甲が一番薄いはずだ」
ステーション側の柱状障害物にまた数機が撃墜されるが、
次第に内側に入り込む機体が増えてくる。
「こちらアルファ2、敵ステーションの外部ハッチらしきものを発見。
位置と映像を送る。」
即座に艦隊のモニタにステーション立体図上の位置とその周囲の画像が表示される。
「よし。一気に勝負を決める。
戦闘機隊はハッチ位置にマーカーを投下後離脱。
各艦は旗艦の合図をまち、ハッチへ一斉艦砲射撃。」
「戦闘機隊が観測したアルゴリズムと合わせよ。
大型レーザー、照射準備。」
「カウントダウン開始。
10,9,8,・・・」
戦闘機隊も待避していく。
「3,2,1。一斉照射!」
艦隊の艦砲射撃レーザーは過たずマーカー位置に命中。
だが、その光は、ステーションと思しき場所を通過。
光はむなしく散乱して消えていく。
「なに!
戦闘機隊は表面を視認しているはずだ!」
「・・・・ナノマシンをハッキングされたようです・・・。
真位置を補正して再表示します。」
変わらず黒々として衛星が、元の位置からかなり上方に遷移して現れる。
「よい。再度同じことを行うだけだ。
戦闘機隊、再突入せよ!」
その刹那、随伴艦の主砲が爆散。
「今度は何だ!」
「敵AT隊、現れました。」
「何機だ!」
「ラビドリードック、『触れ得ざるもの』キリコです・・・
そして、ベルゼルガ・・・パイロット不明ですが、ベルゼルガがいます。」
「・・・用意した対策を実施する。
旗艦の新型ATを出せ。
キリコを止めるのだ!!」
戦いは混沌としてきた。
ステーション側の攻撃が先に旗艦を落とすか。
マーティアルがステーションを破壊できるか、
結末はまだ見えない。
<次回予告>
欺瞞、偽り、だまし、あざむく。
互いに技術の粋を尽くして真の姿は現さない。
だが、その繰り返しに人間の精神は耐えられない。
次回 <意志>
人々の切なる願いが「神」の座の戦いに終止符を打つ。