装甲騎兵ボトムズ 惑星デゲンの奇跡   作:黒猫アプロ

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第37話 意志

ダニエル・ステーション内部/臨時作戦司令室

 

敵のレーザー砲があさっての方向に向けて発射される。

“うわ~、危ない危ない・・・”

立体映像のダニエルも冷や汗をかいている。

 

「今のところ欺瞞はうまくいっているわね」

 

敵の戦闘機も直接視認しているわけではないらしく、

彼らのモニタ上に投射している情報に釣られて移動しているようだ。

 

(でもそろそろ限界かも)ベティアが冷静に観察。

「もし、敵がここまでのログを残していて、分析していると

 次のパターンは予測するかもしれない」と、ハリス中佐。

 

“それじゃ、旗艦を攻撃しましょうか。キリコ?”

「用意はできている」

“気をつけてね!”

 

いわゆるドッグキャリアの前に降着させたキリコ機、

後ろに立ったまま足を固定させたシャッコ機

これを遠隔制御して、死角から敵旗艦に向かわせる。

 

「キリコ、敵も何か策があると思うわ。

 くれぐれも気をつけて」

「わかった。」

 

ドッグキャリアは旗艦上で停止。

早速気づいた敵艦から新型ATが出てくる。

 

作戦通り、キリコ機がキャリアから分離して旗艦の上を駆け回る。

シャッコ機はキャリアでそのまま別の艦に移動。

 

敵の新型機エルドスピーネ。

大型ATで、ワイズマン製ラビドリードックなどからのデータを反映。

パイロットに補助脳をつけた強化人間を充てて対応。

運動性能はキリコ機と同等である。

 

「・・・よし、かかったな。各機、作戦通り行動せよ」

 

キリコ機がブリッジ目指して旗艦上をローラーダッシュで進む。

しかし、上空から前後左右に射撃ではなく、太い金属線のザイルスパイトが打ち込まれて

進路を阻まれる。

 

「!」

キリコはソリッドシューターで群がる敵ATを狙い撃つも、

1機がダメージを受けると、新たな1機が追加して妨害。

思うように進めない。

 

そのうち、旗艦上空は、ザイルスパイトで覆われ、キリコ機は脱出できなくなる。

 

キリコも旗艦の上面をソリッドシューターで破壊しようとするも、

表層を壊したところで、それ以上、構造を破壊することはできず、

ソリッドシューターも弾切れ。

 

その状況をみて、複数機がキリコ機に襲いかかる。

極めて珍しいことに、キリコが追い詰められた格好だ。

 

“ちょっと、フィアナ、あれ、まずくない?”

「・・・確かにね。だけど、ここはキリコを信じましょう。」

 

その間にシャッコはドッグキャリアから離脱。

キャリア自体を慣性のついた大型弾体として利用し、敵艦の主砲を2つ潰す。

 

しかし、こちらも同じくザイルスパイトを装備したチャビィーが

ベルゼルガ(宇宙用)を包囲する。

だが、シャッコはローラーダッシュで、前方の2機へ激突。

1機をパイルバンカーで仕留める。

 

もう一機を楯にして射撃してくるチャビィーに対抗する。

シャッコは隙を縫って携帯していた小型ソリッドシューターで1機を撃破。

 

こちらは前へ前へと進みながら、包囲されないように立ち回り、

最終的には、包囲を突破。

ブリッジへ到達して、前面から猛射。

撃沈する。

 

「シャッコ、キリコを援護できる?」

「包囲されたか・・・わかった。援護に向かう」

「包囲の一部を食い破ってくれればいいわ。

 敵ATは放置してもいい。」

「わかった」

 

シャッコ機はバーニアを稼働させ、旗艦上空へ移動。

上面の機銃他を排除し、

ザイルスパイトの本数が少ない部分を射撃して破壊。

隙間から乱入。

 

「キリコ、こっちだ」

 

キリコ機は細かい傷はあったものの、機体は健在。

接近戦でエルドスピーネのコクピットを切り裂き、

パイロットを放り出して突破。

シャッコ機と旗艦上空に逃れる。

 

「とりあえず、一回退いて」

フィアナの指示に従い、敵艦隊から離れる。

 

が、しかし、残余のATはキリコ達に追随してくる。

“あらら・・・案外早いなぁ”

再び、数に勝る敵に包囲されそうになるが、その時、ルッカから

連絡。

<2人とも、操縦桿脇のスイッチがわかる?>

「ああ、わかる」「同じく」

 

<それは“急場の一手”。速度が急にあがるわ。>

2人は躊躇無くスイッチを入れる。

すると、言葉通り、ATは急速前進。

 

追撃部隊を引き離してそのままステーションへ直行・帰着。

メンテナンスハッチから内部へ戻る。

 

 

その時、追跡部隊のエルドスピーネから旗艦へ連絡。

「閣下、障害物の突破方法と搬入口ハッチを発見しました。

 追跡し、突破します」

 

 

「よくやった。

 だが、突入は少し待て。周辺へ待避せよ。

 入口をこじ開けてやろう。」

 

艦隊は構造物の隙間を縫って二層目との隙間に入り込み、

搬入口部分へ再びレーザー砲撃。

今度は命中し、搬入口がこじ開けられる。

 

“キリコとシャッコは回収できた?”

「完了しました!」

 

“よし、それじゃ敵ATはこっちで潰す!”

“ゴッペルさん、頼むわ”

「あいよ!」

 

敵ATはキリコ達が進んだと思われる長い通路を進む。だが、脇道なく、

途中で行き止まっている。

 

様々な妨害を乗り越えてここまで侵入できたのは5機。

 

彼らを試すように、進入路は形を変えていく。

入ってきたところはドアが閉まり、

上と左側、右側の扉が開く。

 

隊長機らしい1機の指示で、上に3機、

右に1機、左に1機進む。

 

上の3機はひたすら上に進むルートだった。一番最後だけが選択制。

もどるか、進むか。

3機は躊躇無く進む。

 

すると、3機はそのまま衛星一番上と思われる小部屋に到達。

標語のような記載とスイッチがある。

スイッチはATの手のサイズの合致しているようだ。

標語はこう書いてある。

“ペティーテ・エト・ダービトゥル・ウォービース”

 

3機のうち2機は隊長機を向く。

隊長機らしきそれは、3つのうち、上のスイッチを押す。

 

すると、小部屋は急上昇。次第に速度は速くなり、

どうも部屋ごと打ち出されたことがわかる。

 

パニックに陥ったAT隊は、目の前の壁に向かい、

マシンガンを乱射するも、壁には傷すらつかない。

 

加速が進み、ATを載せた箱は、銀河の奥へ運ばれていった。

 

右側の1機も同様。

ただし標語は以下の通り。

“プルサーテ・エト・アペリエートゥル・ウォービース”

 

今度の操縦者は慎重らしく、何の動作もしない。

数瞬の後、なにかあったか、急にパイロットはスイッチを押す。

右のドアが開く。

ATを慎重に進ませると、どうも衛星表面のようだ。

別の口を探そうかとした、その瞬間、別の方向からの弾丸が

エルドスピーネを打ち貫く。

 

ATは頽れた。

 

左側の1機はその部屋自体が行き止まり。

特に標語もスイッチもないその部屋、

入口が閉まる。

 

そのまま部屋はどこも開かず、

ある1点で停止。

停止後、しばらくすると、全部の壁からミシミシという音

しばらく後、壁が全方位ATに押し寄せる。

 

理由の有無なく、その部屋はもとの1/3程度に圧縮され、

再び衛星表面に打ち上げられる。

 

箱が開く。

中から圧縮されたATが排出される。

無言で朽ちたATは、まるで墓標のようであった。

 

 

こうした様子をモニタで見ていたヘルツベルクは決断する。

「・・・全機、全艦隊、撤退する。」

ATは結局、全機を失陥。

艦隊も3隻のうち、1隻は轟沈。

旗艦は上面が荒れ放題。

 

だが、2隻は集合後、有無を言わさず亜空間転移して去って行った。

 

本戦役は、公的にはヒュロス側の完全勝利。

事情を知る者には、ヒュロスと、それに味方した者の組織の勝利。

そして、機械任せでなく、人が「生きよう」とした意志を貫いた側の勝利と言えた。




<次回予告>
古き「神」は去り、人の世が訪れる。
ダニエルと、その下へ集った者は新たな道を歩む。
次回 <戦後>
舞台から下りた役者たちの報酬は如何に。
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