本事変はマーティアルという宗教組織の暴走として片付けられた。
表向き、ギルガメス/バララントとマーティアルの関係は同じだが、
今回の件で権威は落ち、以前と同じに戻すには、様々な奇跡が必要であろう。
それでもマーティアルが崩壊しなかったのは、
新たなるクエントの発見。
<馬の首星雲>にクエント星の兄弟星、惑星ヌルゲラントが見つかり、
しかも、そこにクエントの住民は全て転移していたからである。
クエントと同じ構造をもつ星だが、彼らとマーティアルという宗教組織の関わり、
先行きは極めて不透明と言えた。
また、本件は、公式にはヒュロス軍とマーティアルの争いである。
勝者はヒュロス軍だが、別段、マーティアルから賠償があるわけではない。
だが、実態として、ワイズマンに勝るとも劣らないダニエルが支援している。
いずれ惑星デゲンはこの星系で力を持つ星になり得るであろう。
本戦役全体を通じ、軍の指揮、場合によっては外交交渉まで委任されてきた
フォークト中佐は、本人の希望で、お飾りのトップではなく、
実質のある軍トップとして就任することになった。
これに伴い、コマンド・フォークトも一部再編。
ボルク少佐は、別に「AT開発局長」を兼任。
実際の所在は、ダニエル・ステーションであることも多いが
そちらが主務となりそうである。
コマンド・フォークトの現場指揮官は
ノルデン少佐が引き継ぐ。
レーン大尉、ゼトラ大尉、ボックメッサー大尉もそのままだが、
拡大した開拓地、戦線の担当が割り振られており、いずれ率いる軍の規模を見て
階級は上がると言われている。
また、彼らの乗機もほぼそのままだが、
ダニエル・ステーションで開発された新型機を使う者や
キリコ機のレプリカに挑戦する者など様々である。
過去のATの歴史を塗り替えるイノベーションが起こることが期待されている。
ゴッペル曹長は、開発工廠付となったので、ほぼ、ダニエル・ステーション常駐。
ルッカ曹長も同様である。
看護兵のカナワは、現場での研鑽の他、
ダニエル・ステーションで教育を受けた結果、「軍医待遇」となるまで
技術力が向上した。今後、制度の変更が終われば、歴史上初の
現場教育上がりの軍医として就任するだろう。
今回の戦役、AT乗りと軍人は著しく減少しているため、
あちらこちらのバトリング選手を雇用した形になっている。
アズライトのチームは、希望者のほとんどがこの惑星に残留。
希望すれば、軍での雇用も認められることになっているが、
ほぼ全員がバトリング選手のまま残っている。
例外は、中途でマーティアルを見限って参加したボルト・クライス。
彼は自称していたように、レッドショルダー隊員だった経歴が明らかになり、
腕前を確認する意味で、現在、レーン大尉の下で軍人として働いている。
乗機はブラットサッカーのままである。
もう1人の例外はアズライト本人。
戦いで救い出せたティア・ハミルトンが未だに意識不明のため、
その治療法を探っている。彼女の生死で今後を決めるようだ。
そして、もう一人のFSを討った男。
メロウリンク・アリティ。
彼のパートナーであるルルシーとともに、この惑星に移住することになった。
形式上、軍の情報部に所属。
酒場での用心棒、ルルシーのボディガードを演じている。
一方、彼の経歴を活かして、フォークトは、彼にゲリラ戦の訓練教官を依頼している。
どんなに絶望的な状況でも「諦めない」ことが重要と教えていくだろう。
次にキリコ達。
まず、ル・シャッコ。
ワイズマンがいるであろうヌルゲラントには、今のところ戻る予定がない。
仮に新たな傭兵稼業があれば、このステーションから出かけることにしている。
おそらくは祖先の一人であろう、ダニエルの下にいることに意味を見出していた。
そしてキリコである。
彼はフィアナが健康体になったことで、彼女とともに生きることに決めている。
まだフィアナはデゲンに下りることができないため、
キリコはダニエルが指定する作業の継続、フィアナの指示とフィアナのために
行動している。
フィアナ本人は、健康を取り戻している。
運動能力を回復させただけでなく、PS化以前の身体、つまり、PS「改造」で取り去られた「子宮」と「卵巣」の回復、これを踏まえた身体バランスの回復まで行っている。
こうしたキリコとの生活の中で、フィアナは妊娠した。
およそ10ヶ月後に出産の予定である。
地上で出産か、ステーションで出産かは決まっていない。
不思議な現象もある。
ダニエルの不調である。
これまで旺盛に発言し、丁々発止のやりとりをしていたステーションの主は
最近、沈黙する時間が長い。
ただし、ステーションの機能はそのままなので、なんらかのシステム変更を
おこなっているのではないか、というのが彼女の友人、ボルク少佐の推測である。
また、人物ではないが、自律ATである、アルフィア、ベティア、ガンミアは
健在である。こちらはダニエルの不調を埋めるように、引き続き活発な活動を
している。
一体、ダニエルはどうなったのだろうか?
<次回予告>
戦乱はほぼ終わりを告げ、惑星デゲンには平和が訪れている。
しかし、この星を救ったダニエルは不調に陥っている。
彼女の不調の原因は。
また、彼女がフィアナとした約束は何だったのか。
次回最終回 <約束>
惑星デゲンに奇跡が満ちる。