まぁ想像はついたと思いますが
およそ1ヶ月後。
いよいよフィアナの出産である。
結局、フィアナの強い希望でステーション内に医療施設を設置し、
出産はそこで行われることになった。
取りあげるのはカナワである。
他に軍病院関係者が、フォークトの指示でこちらに集合している。
およそ半日経過後、元気な赤子が誕生した。
女の子であった。
母子ともに健康。
父親であるキリコは祝福されるとともに、
女子勢からかなり発破をかけられている。
非常にうれしそうだが、これからが大変そうである。
1日経過後、キリコはフィアナと、子供と対面できた。
「フィアナ、ありがとう。
まさか、俺が父親になれるとは思っていなかった。」
「キリコ、これから父親に『なる』のよ。
子供を育てるのは大変みたいだけど、
2人ならきっと大丈夫よ」
しっかりと釘をさされるキリコだった。
そこで不思議な現象が起きた。
子供があちこちを見て、手を動かすたびに、ステーション施設に
影響が起きているのだ。
「おい、キリコ、なんかおかしなことが起きてるぞ。」
「・・・確かにな。」
キリコは子供の顔をじっと見る。
「・・・・」
「・・・わかった?」フィアナが問う。
「あぁ。
この子がダニエルなんだな。
どうやって『生まれた』かまではわからないが」
ゴッペルは半ば呆れている。
「・・・・まぁ、あの嬢ちゃんならやりかねないがね・・・」
カナワは半分くらいしかわからないので驚愕。
「え!?何が起きているんですか!!」
フィアナが事情を説明する。
- フィアナを再生させる過程で、PSに不必要とされ、取り除かれた生殖器官の
卵巣、子宮も復元した。
- この時点で卵巣に受精卵としてダニエルが休眠していた。
- 材料はキリコの因子とフィアナの因子そのものなので、通常の生殖と変わりなく
健康に悪影響は出ない。
- 「約束」は「キリコとフィアナの子供として生まれる」こと。
始めの妊娠で他の受精卵があった時はきょうだいとして生まれる予定だった。
- 今回他の受精卵はなかったので、ダニエルだけが生まれた。
「・・・すごい・・・」カナワは驚きを隠せない。
「で、一番肝心なことなんだが、なんでこの娘が動くと、ステーション機能が変動
するんだ?」とゴッペル。
フィアナはそっと目を閉じて言う。
「生まれてくるとき、制御キーの一つはこの子に、もう一つはアルフィアたちに
預けたみたい。
ただ、まだダニエルはこの身体に馴染んでいないし、意識としては普通の子供と
変わらないから、再度、全機能を掌握するには時間がかかるみたいね。」
「・・・フィアナさん、なんでわかるんですか?」カナワが聞く。
「不思議なんだけど、この娘と私は、ずっと『繋がって』いるから、みたい。
私もよくわかっていないけど、昔みたいにダニエルに話しかけると、頭の中に
彼女が言いたいことが伝わってくるの」
「だったらできるかも・・・」カナワはうつむいたまま呟く。
「フィアナさん、何ヶ月くらい経ったら医療センターの機能は回復できて、
この・・・ダニエルちゃん?が制御できるのですか」
フィアナは再び目を閉じて、時々頷きながら言う。
「・・・できれば3年ほしい、って。」
「じゃあ、3年経過したらお願いがあります。
FSだった、ティア・ハミルトンさんの回復をしてくれませんか」
その時、ダニエルは目をぱっちり開けて、カナワに微笑む。
「『わかったわ』って」
ゴッペルが困ったような顔をして尋ねる。
「フィアナさんよ、悪いんだが、工廠の方、どうするか聞いてくれないか?」
フィアナが『尋ねる』と、
「ゴッペルさんとボルク少佐にお任せするって。
使い方はアルフィアたちに聞くとわかるって言っているわ」
「・・・そうかい。わかった。
少佐が来てから始めるぜ。」
その時、ダニエルが元気な泣き声をあげ、キリコがうろたえる。
「おむつか、食事か・・・見ただけじゃわからないもんだな」
フィアナは、
「そのうちわかるようになるわ。今のは「おむつ換えて」って」
「わ、わかった」
キリコは慌てて準備にかかった。
カナワとフィアナは顔を見合わせて微笑む。
その光景は、普通の人間の日常、特殊な生まれのキリコとフィアナには
決してあり得なかったはずの「奇跡」でもあった。
そして3年後・・・。
地上で慎重に冷凍保存されていた、ティア・ハミルトンのカプセルが
ステーションに運び込まれた。
アズライトが付き添っている。
小柄な、白衣を着たダニエルが、カナワを助手に、説明する。
「軍医さん、こんなちいさな娘さんが治療してくれるのか?」
アズライトの背に届かないので、箱を重ねて、その上に乗って話すダニエル(3才)。
その姿はかつての立体映像を20年以上巻き戻したかのようだった。
「あ、しつれいね~。これでも、このすてーしょん?のせきにんしゃ、なんだから!」
と胸を張る。
「アズライトさん、本当なの。信じていいわ。
私も助手をするから。」
怪訝な顔ながら、アズライトは
「頼む。あんたらだけが頼りだ!」
「・・・むずかしいしゅじゅつだから、まる1にちかかるわ。
あなたはそとでまっていて。」
ダニエルは機械の上のパネルに次々数字を入力。
カナワが確認して、ダニエルに報告する。
そこでアズライトは部屋から閉め出された。
ほぼ1日後、アズライトは部屋に呼び入れられる。
カナワが言う。
「ダニエルちゃんはお疲れなので、お休み中。
手術は終わったから私から報告します。
所定の措置は無事終了しました。
でも、どこまで治るかは、本人次第のところがあるの。
アズライト、あなたが始めに話しかけて確認してね。」
病床に横たわるティア。
アズライトはティアの手をそっと握って話しかける。
そして、ティアの目が開く。
「・・・アズ・・ライト・・なの?」
「そうだ、わかるか。アズライト・フィクスだ!
起きられるか?」
そうして、ベッドを動かして身を起こす。
「よかった・・・・。」
カナワが言う。
「助け出してすぐに冷凍措置をしたのがよかったみたい。
脳神経の機能は正常。ナーヴコネクタは無事とりはずし、普通の神経細胞に
置き換わっているわ。
ただ、長い間寝ていたので、運動能力がどこまで回復するかはわからない。
ここからは2人で相談して。」
ダニエルは部屋に入ると、自分のベッドをめがけてジャンプ。
そのまま寝入ってしまう。
部屋で見ていたキリコとフィアナも心配そう。
「・・・かなり無茶をしたみたいだが、大丈夫か」
「たぶん。普通に寝ているだけだから。」
「そうか、起きた時に何か用意しておくか。」
「そうね」
そういうフィアナは、2人目がお腹に。
幸せそうに微笑んだ。
かつて百年戦争の余波で、惑星全体で抗争していた
惑星デゲン。
その星に今や大きな戦争はなく、ギルガメス/バララントの両勢力も介入しない
「不可侵宙域」
その星で奇跡が重ねて起きた。
かつての戦争の申し子たちは新たな人生を取り戻し、
戦争で傷ついた者も復帰した。
奇跡の星デゲン。
これからもその星で活躍した者たちの英雄譚は語り継がれていくだろう。
(了)
誰もが考えそうな「フィアナを生き返らせる方法ってないの?」から
始めたこの物語も無事エンディングを迎えられました。
随分好き勝手書きましたが、どうかご容赦を。
ところで今年も「総合模型演習」が開催されますね。
このお話を読んで、搭乗ATを再現してくれたりすると、
作者は大変喜びます
押井作品の影響もあって、ボトムズは盛り上がっていますね。
これからも息長く続いてほしいものです。