装甲騎兵ボトムズ 惑星デゲンの奇跡   作:黒猫アプロ

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第6話 思惑

ワイズマンとは別の超古代クエント人を名乗る、ダニエルのステーション。

 

復活したフィアナとキリコ、

そしてダニエルが語り合う。

 

「約束通り、フィアナは治療してもらった。

 ダニエル、お前の要求はなんだ。」

 

立体映像のダニエルは、

先ほどまでフィアナを見てもらい泣きしているようだったが、

打って変わってまじめな表情になる。

“いま、フィアナに使ったのは超古代クエントの科学の力。”

“これをずっと後生まで引き継いでいきたいの”

“だけど、私には『原形質保存装置』なんて野蛮なものはないから”

“これをどこかに継承しなければならない”

 

そう言ってから、少しすまなそうに、上目使いでキリコとフィアナを見つめる。

“・・・それと、治療もまだ終わりじゃないの”

 

「まだ何かあるのか?」とキリコ

 

“あなたの細胞を材料にしてフィアナに注入したものをおおよそ1年間”

“定着させるための素材が必要”

“それは、特定の植物からしか抽出できない物質”

“ある星系の惑星にしか自生しない植物”

“これがおよそ1年分、1千トンくらい必要”

 

「それがないとどうなるの?」とフィアナ

 

“今の2人の状況だと、これがなくてもなんとかなりそうだけど”

“科学的な確証はない。なにせ前例なんてないから”

“今の状況を確定させるためには、その植物が必須といってもいい”

 

2人は顔を見合わせるが、即答。

「いいだろう。

 それを取ってこよう。

 その植物はどこにあるんだ。」

 

それを聞いてダニエルは関係した図面を出す。

 

“ここがこのステーションの現在地”

“その植物があると言われるのはこの惑星”

“惑星デゲン”

 

キリコは腕組みして聞く。

「そこまでどうやって移動するんだ。」

“そこは心配ない。ステーションは亜空間移動機能がある。”

「近くまで行ったとして、どうやって上陸するんだ。

 その星の状況次第では戦闘になるだろう。

 なんでもこっそり、とはいかないと思うぞ。」

 

“あぁ、それなら『大きい子』と『小さい子』と小さな船があるわ”

 

キリコは怪訝な顔だが、何かを察したフィアナがキリコの口に手をあてて

発言を封じる。

(おい、フィアナ!)

(ちょっと黙っていて。私、気づいたことがあるのよ。)

2人は目線で会話。

 

「わかったわ」笑顔でフィアナが答える。

「ところで、その『大きい子』たちはどこにいるの」

“・・・そう言えばしばらく見てないわね。”

 

キリコは再び(えっ!)という顔をするが、フィアナが続ける。

「そこの端末から、私が探してもいいかしら」

“いいわよ。”

 

フィアナは大型コンピューターらしい端末を操作すると、

このステーションの全容と機能の一覧が現れる。

 

表示された画面で、ステーションの大きさ、周辺の航宙図、近隣惑星の概要などが

表示されている。

別の画面はステーションの機能図

亜空間移動のためのエンジン

動力発生部

生物実験施設と実験動物の育成施設

 

そして端の方に

・AT整備施設

・AT製造施設(仮運用)

が表示された。

 

“おー、それよそれ!久しぶりにその子たち見たわ!!”

 

「それで、“大きい子”って、キリコは乗ることができるかしら」

“うん。できるわよ!”

フィアナがキリコにこっそりと告げる。

(ダニエルはATも生き物だと思っているみたい。)

(!)

 

「それから、“大きい子”って1人だけ?」

“そうなのよね。この子だけみたい。”

「昔はいたのかしら?」

“よくわからないけど、そうみたい。”

 

(こっちは追々考えないとね)

キリコは先ほどから、フィアナの“ダニエル使い”の才能とダニエルの偏った知識に

驚愕を隠せない。

 

表示された画像とデータは以下の通りである。

[X-ATH-02-R](現有機1機、部品追加製造可)

一般呼称 ラビドリードック(後期改装型)

主要武装 ハンディソリッドシューター

     内蔵型マシンガン

オプション ハンディ・ガトリングガン

      大型ソリッドシューター

コメント パーツ交換によりX-ATH-01へ改修可。

     天候・環境に応じてオプションパーツを提案。

 

[X-ATL-01-R2](現有機3機)

一般呼称 ツヴァーグ(汎用改修型)

主要武装 ハンディソリッドシューター

     内蔵型マシンガン

オプション 溶接用ハンド

      採掘用精密作業マニュピレータ

      大型ソリッドシューター

      サンドローダー

      輸送用大型コンテナ

      武装つき大型コンテナ

コメント 人工知能起動後は自律稼働可

 

とりあえず危険な“作業”もできそうなものが見つかった。

 

 

「・・・植物とはいえ、かなりの量だな。

 ツヴァーグは自律稼働できるのか。」

“ちょっと待ってね。”

 ダニエルは何か思い出して作業しているようだ。

“・・・これで大丈夫。話しかけてみて。”

「話しかける? しゃべるのか、これ?」

 

<そりゃ、しゃべることくらいできるよぅ>

<音声モジュールがあるからね!>

<・・・作業は得意。任せて>

 

「随分個性的なAIなのね。」フィアナが感心する。

“専門外だから残っていたメモリにあったものをコピーしたの。”

(・・・でも3体ともバラバラの個性に見えるわね・・・)・

 

キリコもあきれていたが、作業にかからないといけないので話を進める。

「ところで、こいつら、名前はついているのか?」

“一応は。”

「それじゃ左から順に教えてくれ」

“えーっと、AT011・・”

「型番は名前じゃない」

“あら違うの?それじゃ・・・”

“アルフィア、ベティア、ガンミアで。”

 

どうも記号っぽい感じではあるが、要するに各自が認識できればいい、

キリコはその程度で納めることとして、「採集」に出かけることとした。

 

1台だけのラビドリードック(改)を上陸用舟艇にのせ、

アルフィア、ベティア、ガンミアも続く。

 

「それじゃ行ってくる。フィアナは管制を頼む」

「わかったわ」

「ダニエル、ハッチを開けてくれ」

“よろしくね。1回で採取しきれないと思うので、指示した位置から少しだけ

サンプルをとってくれればいいわ。”

「わかった。」

上陸用舟艇は惑星デゲンに向けて出発した。

 

 

上陸地点はヒュロスの領域とされていたが、モラニア軍が迫っている。

『ダニエル、いま、この惑星はどんな状況なんだ』

“バララント側のモラニアという国がほぼ全土占領間際。”

“だけど、目的の植物はヒュロスという敵対国側にあるの”

“ヒュロス軍は防備を固めているので、出てこないから、モラニア側を蹴散らして

 持ち帰って頂戴。”

『了解だ』

 

上陸用舟艇は森林の中に隠し、ATは全機出発。

「ところで、アルフィア、ベティア、ガンミア、お前達は戦闘ができるのか」

“できるよ”“問題ないね”“任せて・・・得意”

「では、アルフィアは大型ソリッドシューター、ベティアはミサイルランチャーを使ってくれ。ガンミアは採集装置を頼む」

“了解”

 

目的のポイントは森から出た丘の上、小さな赤い花が咲く背の低いものであった。

「ではガンミアは採取してくれ。採取したらコンテナに積み込んでくれればいい」

“了解”

 

「アルフィアとベティアは周囲を警戒」

“・・・・何を警戒すればいいの?”

「・・・俺たち以外の何かが見つかったら言ってくれ。

 対象は生物でも無機物でも同じだ」

“了解”

 

危うくこの3体が普通のATではないことを思い出したキリコ。

自分でもセンサを全開にして探査。

 

“キリコ”

「何だ」

“丘の下のほう、4時方向?から、何か集団で来ている。”

 

キリコは自機で確認すると、ATの集団。

「ダニエル、あれがモラニア軍か」

“たぶん。登録はバララントのAT。”

「アルフィア、ベティア、ガンミアともとりあえずは警戒。」

“撃ってきたらどうする?”

「その時は反撃するが、少し待て。」

 

集団は先頭が真っ赤な塗装のチャビィー。

その後に20機ほど、同じく赤い塗装の陸戦型ファッティーが続いている。

残りは少し間隔をあけて輸送車と護衛のファッティー。

総勢は50機程度か。

 

どうも先頭機に高性能センサがあるらしく、あっさりとキリコ達に気づいたようだ。

『・・・%#&!!!!』バララント語での警告

続いて標準アストラーダ語での警告

『ヒュロス軍がそこで何をしている!攻撃されたくなければATを降りて

 投降しろ!』

 

仕方なくキリコも回線を開いて応答。

「こちらはヒュロス軍じゃない。民間の科学調査キャラバンだ。

 この惑星の植物資源を調査中だ。」

『そのようなキャラバンは聞いていない!

 武装解除しないなら敵対行為と見なす!』

 

“ダニエル、聞こえているか”チャンネルを変えて通信。

『あ、キリコ、聞こえているわ』フィアナが応答。

「目的のサンプルは入手したが、簡単に帰れそうにないな。

 とりあえずひと当てして突破を図る!」

『キリコ!』

 

無茶を止めようとしたフィアナだったが、

別作業から意識を戻したダニエルは“え、大丈夫でしょ?”とあっさりしたもの。

 

「ガンミアはコンテナを守って艦に退去。アルフィアとベティアは俺を援護。」

“退去、了解。”

“援護って何すればいい?”

(そこからか・・・)キリコは頭を抱えつつ、わかりやすく説明。

「俺があの集団に突っ込んで、順に奴らを倒していく。

 俺を狙っているようなヤツがいれば、とりあえず撃て。

 また、相手もこっちを撃ってくるから、左右に分かれて移動しながら

 撃て。」

“わかったよぅ”

 

「ベティアは固まっている連中と、できたら輸送車の周囲のATへ

 ミサイルを撃ち込め。

 ミサイルを全弾撃ったら艦に退去だ」

“了解!”

 

それを合図に、キリコは丘の上から敵の集団に飛び込んだ。

 

丘の下のモラニア軍は、後ろがモラニアの現地兵で輸送を担当。

前はバララント本星からきた、強化人間とその支援隊だった。

隊長は強化人間だが、暴走した時に備えて、ベテランの兵が副長になっている。

 

「カスペリウス少佐、敵が突っ込んで来ます」

「・・・たった1機だけとは、バカなのか?」

 

「よし、俺が仕留める。

 おまえらは援護だ。ヤツの動きを止めろ。」

 

しかし、丘の上から飛び込んで来たドッグタイプの新型機は

妨害してきた赤の陸戦型ファッティーをすさまじい早さでアイアンクローを使い

引き裂く。

 

続いて周囲にいた同型機へ自機を回転させながらガトリングガンを射撃。

あっさりと10機ほど撃破。

 

強化人間のカスペリウスより相当に早い反応速度。

(なんだ・・・あの機体)

副長のベリアル中尉は何かがひっかかっていた。

(青紫の新型機・・・惑星クエントの単騎行・・・!)

(まずい、まずい、まずいぞ!!)

 

「少佐、退いてください。

 あれは本部から接触を禁止されている機体です!」

「中尉、キサマ、何を言う!」

「あれは普通じゃない!」

 

カスペリウスはそれを聞いて激高。

「なら、俺が仕留めるまでだ!」

 

先ほどの瞬時の10機撃破で、後ろの部隊は完全に足を止めた。

そこに丘の上からミサイルランチャーが降り注ぐ。

今度は後ろにいたモラニア軍のファッティーが全機撃破。

ミサイルは追尾装置つきだったようだ。

 

かろうじて輸送車の陰にいた1機のファッティーは逃走を開始。

しかし、そこに大型ソリッドシューターの弾が命中。

爆散する。

 

50機の集団はあっという間に

2機と輸送車のみになっていた。

 

「少佐、退いてください!このままでは部隊が壊滅します!」

だが、頭に血が上ったカスペリウスは通信をカット。

青紫のドッグタイプへ突っ込んでいく。

 

「この、強化人間め!」

ベリアルはそのまま戦場からの撤退を決める。

 

走り出したところ、脚部に被弾。

先ほどの大型ソリッドシューターの弾であった。

 

続いて、ガトリングガンの弾の雨。

コクピットを穴だらけにされ、ベリアル機も力尽きるように倒れ込んだ。

 

「案外、あっけない連中だな。」

キリコは20機ほど破壊したところで、後ろを見るが、

そちらはアルフィアとベティアが粉砕していた。

 

ふと見ると、1機の赤いチャビィーが突っ込んでくる。

「多少動きは速いようだが!」

キリコ機の一斉射が、チャビィーの左肩アーマーを吹き飛ばす。

だが、敵はそのまま突っ込んできて、右手に装着していた

パイルバンカーを作動。パイルバンカーは槍のようにキリコ機に向かうが、

ちょうど機体の半分くらいずれたところにすっとんで行き、命中せず。

 

距離を詰められ、近接武器も失ったチャビィーは、

頭部をアイアンクローで潰され、内蔵ガトリングガンをゼロ距離で猛射されて

倒れた。

 

ほんの5分の出来事であった。

 




<次回予告>
ヒュロスの大地を侵す赤い悪魔
しかしそれは一陣の青い暴風に吹き飛ばされた。
それは神が遣わした天の御使いか
あるいは罪深き人類に下す新たなる鉄槌か
次回「ヒュロス」
触れ得ざる者の到来は新たな福音となるのか。
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