縛られた者への思い。
人間は元来、自分を救う事は出来ないのです。
バシリカの至聖所にて先生達とベアトリーチェとの戦闘が行われている中、裏で動く影が一つあった。そう、確容タモツである。
彼女はカタコンベの暗い廊下を1人で歩いていた。
タモツ「先生達が注意を引きつけているおかげでとんとん拍子で事が進んだよ。と、目的地に到着っと。」
彼女の目の前には厳重そうな扉が一つ。タモツが目指していた場所とは『ベアトリーチェの研究室』だった。
タモツ「厳重に施錠しているけど...」カチャ...
タモツは鍵穴に銃口を向け、そのまま引き金を引いた。
バァン!バァン!...ギィ...
タモツ「こうなると意味はないよね。お邪魔しますよ。」
ベアトリーチェの研究室に入り、そのまま机の上に置かれている書類を手に取り目を通し始める。
タモツ「これじゃない...『色彩について』?これでもないな...」
一つ目の束の確認が終わり、二つ目の束の確認を始めるタモツ。そして...
タモツ「お、あったあった。『X』についての記録。私が渡されたのは所々削除されていた物だったし、これで心残りはなくなるね。さてと、何が書かれ...て...え?」
タモツは目当ての記録を見つけることが出来た。しかし、彼女はすぐに後悔した。
タモツ「何...これ...『実験で生じた死体の処理をXに与える事で解決』...は?実験って...」
タモツはあの時の光景を思い出した。肉の焼ける匂い、焦げた血の匂い、倒れ伏した動く事のない仲間達...実験が終われば、その死体を壁にある穴に落とす...忘れる事のないあの時の惨状を。
タモツ「あの穴って...保管場所に繋がっていた筈じゃ...」
タモツは一筋の希望を抱いて記録に目を通す。しかし記録に書かれていたのは、
『穴の先にあるのは自動で死体を加工する設備』
タモツの希望はへし折られた。
タモツ「私は...仲間達の命を奪っただけじゃなく...その亡骸も...貶していたのか...」
"そう、君は全てを奪っただけじゃなく、その亡骸も貶したんだ?これでわかったでしょ?"
あたまの中にひびく声がいつもより大きくきこえる。だめだ、耐えなきゃ...
"我慢なんてしないで、したい事をしよ?君がしたい事は何?"
したいこと...
タモツ「もう...何も見たくない...何も...したくない...」
沈む、沈んでいく...耐えられない、やだ、助けて...わたしが、わたしじゃなくなって...
マル....
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重厚感のある鉄の壁に覆われた一室に2人の異形がいた。
1人はタキシードを纏った双頭のマネキン人形「マエストロ」、もう一方は後ろ向きのシルクハットを被った男性が写っている写真を持つ頭のない異形だった。
マエストロ「ゴルコンダ、デカルコマニー少し良いか?」
ゴルコンダ「どうかしましたか、マエストロ。」
デカルコマニー「そういうこった!」
コートを纏い、ステッキを持った首のない異形が「デカルコマニー」、そしてデカルコマニーが持つ写真が「ゴルコンダ」。
どちらもマエストロと同じくゲマトリアに所属する存在だった。
マエストロ「マダム...ベアトリーチェの回収だが、私が行っても良いか?」
ゴルコンダ「別に構いませんが...珍しいですね、貴方からそのような言葉が聞けるとは。」
デカルコマニー「そういうこった!」
マエストロ「感謝する。では私はこれで...」
コツン、コツン、コツン...
(青い髪の少女よ、忠告はした筈だ...その闇は救済ではなく、自らもを滅ぼすものだと...)
マエストロ「最悪の場合は...その命を終わらせるしかあるまい。」
マエストロは自らの研究室に戻り、アリウスに向かう準備を始めた。
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とある廃墟...
マル「すぅ〜、ムニャムニャ...」
仮拠点としている廃墟の一室でマルは眠っていた。
『た...け...ル...』
マル「すぅ〜...すぅ〜...うん?」
突然頭の中に声が響き、マルが目を覚ます。その声は自らがよく知っている者の声だった。
マルは声を聞き取る為、静かにして目を閉じる。
『たすけて...マル...』
今度はよく聞き取れた。自らの友達が助けを求めてる。行かなくては。
マル「やっとか...やっと言ってくれたね、タモツ。それじゃ...」ガチャン‼︎
マル「行きますか。」
マルは武装を整え、アリウスに向かう。全ては自らを導いてくれたただ唯一の友だちの為に。
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タモツ?「なんだろう...妙にスッキリしてるなぁ...全部が透き通って見える。」
タモツ?「我慢なんかしてたからかなぁ...ん?」
タモツ?は耳を澄ませる。
タモツ?「戦闘音が止んだ...じゃあ行くか。」
彼女はベアトリーチェの研究室を後にする。
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バシリカの至聖所での戦闘は決着が着いていた。
先生、アリウススクワッドはベアトリーチェを打ち破り、アツコを助け出す事に成功していた。
しかしベアトリーチェにはまだ奥の手があるようで...
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ベアトリーチェ「まだです...!私にはまだバルバラもアリウスの兵力も無傷で残っている!複製能力だって保持しているのです!!」
ベアトリーチェ「一度の勝利で...一度の勝利ごときで、終わりになど『いや、この話はこれで終わりだ、ベアトリーチェ。』ッ!!」
先生「この声...マエストロか...」
暗がりの奥から姿を見せたのはマエストロだった。
マエストロ「先生、それにアリウスの生徒達よ、銃を下ろして欲しい。今回は敵対をしている訳ではない。あくまで彼女の回収に来たのだ。」
ベアトリーチェ「私を...?!」
先生「信用して大丈夫なんだな?」
マエストロ「私は嘘はつかん。それとやるべき事がもう一つ...いるのだろう?確容タモツ。」
マエストロが十字架に向けて言葉を投げかける。
その直後、十字架の陰から1人の生徒が現れた。
タモツ「気づいていたんですね、マエストロさん。」
マエストロ「気づくも何も、そのような異質な気配を発していれば嫌でも気づく。」
先生「君は、あの時の...!」
タモツ「やあ、先生。久しぶりですね、お元気ですか?元気ならば何よ「丁度いいところに来ましたね、タモツ!早く私を助けなさい!!」....」
タモツが話しているところに被せるようにベアトリーチェが自らを助けるように命令を出す。
しかしベアトリーチェは知らない。彼女は既にアリウスから離反した身だという事を。
その事を知っているアリウススクワッドは助ける事はないだろうと思っていた。
しかしタモツの返答は彼女達を驚かせるものだった。
タモツ「ええ、いいですよ。さ、私の手を取ってください。」
アリウススクワッド『え....?』
なんとベアトリーチェにタモツが手を差し伸べたのだ。
先生「な...?!」
サオリ「何故だ!タモツ!!何故そんな奴に手を差し伸べる!!」
ヒヨリ「なんで...タモツさん...」
ミサキ・アツコ「.......」
各々がタモツの行動を非難する中、マエストロだけは違った。
マエストロ(私が観察していた限り彼女はアリウスからは離反した身だ...何故ベアトリーチェに手を差し伸べる?彼女にはなんのメリットもない筈...ん?)
突如、マエストロは不可思議な物を見た。丁度ベアトリーチェの背後に当たる空間に黒い穴が出現していた。
マエストロ(アレは...なんだ?あの様な物は無かった筈...)
ベアトリーチェ「貴女は聞き分けが良いですね、タモツ...!ここから立て直して反撃『ザシュッ』...を...?」
ベアトリーチェがタモツの手を取ろうとした瞬間、何か異様な音が周囲に響いた。
ベアトリーチェ「あれ?何故私の手が...下に...」
タモツ「どうしたんです、マダム。早く私の手を取ってください。でないと...」
タモツ『救済(たすけ)る事が出来ませんよ?』
真実を知った時、正気ではいられないでしょう。
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