【急募】高育のAクラスで快適に過ごす方法 作:人生谷あり罠あり
ルキウス・アンナエウス・セネカ
無人島試験開始から1日が経った。今の状況を簡潔に説明すると、俺の視界の中心約20m程度先で、橋本と龍園が密会中ですね。
何を話しているのかは聞き取れないけど、話を聞いている側の龍園の表情を見るに良からぬことなのは間違いない。これだけは神に誓える。
「さて、これでようやく状況が整ったね」
俺は来た道とは違うルートを歩きながら呟く。しっかりとお膳立て(?)してやったんだし、原作通りに動いてもらわないと困るからね。安心安心。
お昼過ぎ。今日は探索班ではなく見張りとしての役割を買って出た俺は吉田と一緒に洞窟の前で待機中である。
「暇だなぁ」
「確かに。しりとりでもする?」
「お、いいなそれ。やろうぜ」
彼は意外といい人である。白石に好意を寄せるザ・男子高校生といった人物だし、性格も悪くない。強いて欠点を挙げるとするなら、たまに小学生みたいなことを言うところくらいかな。
「──────カラスっ!」
「それ8ターン前に言った。俺の『か』攻めに手も足も出ない感じかな?」
「なにを! それに『か』攻めっつったってまだ4回目だろ? 余裕だぜ余裕」
「そうかなぁ? じゃあほら、頑張れ」
そんなやり取りをしながら知恵を絞り合い、20分程の激戦が続いた頃だった。背後から、更に言うと探索班が来るはずのない方向から足音が聞こえた。
「…………お、秋月か」
「あれぇ、綾小路くんじゃん。お久」
茂みの奥から綾小路と、ついでに妹北が顔を出した。そろそろ来るかなとは思ってたけど、生でこのコンビを見れるのは中々嬉しいな。
「なんでここに?」
「他クラスの偵察よ。それで、あなたは綾小路くんと仲が良いのかしら?」
あちゃ、綾小路に訊いたつもりだったんだけどな。ま、別にいいか。鈴音ぇと話す機会も今後あんまりないだろうし、貴重な体験だと思おう。
「もちのろん。あ、因みにAクラスの秋月だから、よろしく堀北さん」
「あまり仲良くする気はないのだけれど。それで、仲が良いのはホントなのかしら?」
「ああ。秋月は一番仲のいい友達だな」
「そう。なら丁度いいわ。あの洞窟はあなたたちAクラスが占有しているのよね?」
「そうだよ。葛城くんがたまたま見つけてくれてね」
葛城は優秀だよホント。それに比べてこの頃の堀北さん(孤高卒業中?)の温度差よ、風邪引くかと思ったわ。
「さっきも言ったけど、他クラスがどんな風に生活しているのかを参考にさせてもらいたいの。中に入れて貰えないかしら?」
「…………流石にそりゃダメだぜ、なぁ?」
今までずっと無口を貫いていた吉田が口を出す。葛城は生憎と今外出中だけど、確かに勝手に中に入れるのはダメだね。リーダーを立てるのが部下の役目ってもんだし。
「どうだろ。そうさせたくないから暗幕で入り口を塞いでるわけだし、あんまりお勧めは出来ないかな」
「でも、ルールでは許可されてるわよ? 禁止されているのはあくまで『他クラスが占有しているスポットの使用』、見学だけなら使用にはならないもの」
「綾小路くんもそのスタンス?」
「いや、オレはどちらでも構わないが。それに、安易にAクラスと揉めたくはない」
「じゃあ、ダメってことで。あと2、3時間もしたら葛城くんが帰ってくると思うから、もし諦めきれないならそのときまた来てよ。そしたら多少進言するからさ」
それから妹北が少しゴネたけど、綾小路の説得や後ろからぞろぞろと出てきた援軍によって引き返していった。申し訳ないけど、俺も従うことにしてるのよ、上にはね。
また来てね~と手を振ったら綾小路は振り返してくれたけど妹北には睨まれた。なんだ? やるのか? おお?
無人島試験5日目。特にここまで目立ったイベントは起きてない。一応探索班として行動して綾小路の地図が奪われるのを軽く止めたくらいかな。
相手も聞き分けの良いヤツだったからなんとかなったよ良かった。クラスのために(強制的に)頑張ってる綾小路の邪魔をするんじゃあないっ!
「ねぇ、これ釣れるの?」
「全然かかりません………」
両手に花、とはまさにこのことだろうか。山内や池なんかに見られたらブチギレされそうな光景である。
「うーん。エサはちゃんとしてるはずなんだけどなぁ」
両サイドに腰掛ける神室と山村に倣うように俺も首を傾げる。今日は気分転換に食料調達班として釣りに勤しんでるんだけど、これが難しい。
「秋月、あんた何とかしなさいよ」
「え、いや、無理だよ? こればっかりは自力で何とかするものでしょ、各々が」
「神室さんでも無理なんでしょうか。それなら私にできるはずもありません」
神室のむちゃぶりに対応しつつも、俺は糸を垂らし続ける。かれこれ2時間くらいはこの低い崖の縁で戦ってるんだけど、未だに3人合わせて成果は0である。
「確かに色々やってるけど、これは専門外よ」
「俺もこれは初めてだから無理」
「私も無理ですね、これ」
三人寄れば文殊の知恵、なんて言ったのはどこのどいつだ。凡人どころかちょっぴり優秀な人間が集まってるのに、解決策なんてものは一切出てこない。
いや、そもそもこれに解決策なんてないのかもしれない。それに、たまたま魚がいないタイミングってこともあるよね。
「っし、切り変えよう。石の上にも三年って言うし、待ってれば何とかなるよ」
「そうね。どうせ暇してたし、丁度いいわ」
「そう思うことにします」
────日が暮れる前にベースキャンプに戻ったときの3人の合計『5匹』、まずまずの成果かな。
特別試験とやらが開始されてから6日目となった。今日も『リーダー』である俺は洞窟の外へ力強い一歩を踏み出す。
葛城さんからも期待されているし、実際に多くのスポットを効率よく占有しかなりのポイントを稼げている。坂柳派の奴らにはできないシゴデキっぷりだ。
あ、言い忘れていたなっ。俺の名前は戸塚弥彦。Aクラスのリーダーである葛城さんの参謀ってやつだな。おまえも葛城さんを凄いと思うだろ?
「にしても、話って何だろうな。
もう真夜中といっていい午後11時、俺は暗幕の端を捲り外に出る。基本的に夜中は危険だからトイレ以外では出ないように言われてるが、今日の俺には大義名分があるからな。
なんと、同じクラスの山村美紀さんに夜中話があるから外で2人で話したいと言われたのだ。こうなってしまっては流石に行くしかない。おまえもそう思うよな?
今夜は曇っている。あたりはよく見えないが、購入した小さいライトで地面を照らしながら歩く。すると、微かな月明かりに照らされる山村さんの姿が目に入った。
「────それで、話ってな」
急に視界が揺れる。転ぶ、そう直感した。下から崩れていく感覚をヒシヒシと感じつつも、同時に
そして、俺の意識はそこで途絶えた。
そういえば明日、一之瀬帆波のキャラクターブック(紙書籍)が発売されるらしいですね
もちろん自分は買います