【急募】高育のAクラスで快適に過ごす方法   作:人生谷あり罠あり

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『勝利』

 

 

 

 

──────無人島試験開始から7日目、朝。

 

俺は葛城くんを起こし、洞窟の外に連れ出す。当然、誰も起きていないのを確認してからだ。それから、話を切り出した。

 

 

「それで、話とはなんだ? 秋月」

 

「葛城くんなら気付いてるんじゃないの。戸塚くんが夜中にリタイアした」

 

「なにっ?! いないのには当然気付いていたが、てっきりトイレにでも行っているのかと………」

 

「昨日の深夜、トイレに行こうとしたら倒れてる人を見つけたんだ。近づいたら戸塚くんだって気付いた。足を怪我してたし意識もなかったから仮設本部まで運んでリタイアさせたよ」

 

「そうだったか。先生は何か言っていたか?」

 

「安静にしてれば半日程度で起きるだろうって。それと、リーダーは変わってもらったよ。最終日だしラストスパートをかけるだろうと思って」

 

「秋月がか? 平気なのか、体調の方は」

 

「1日くらい平気だよ。それと、もう1つ大事な話がある」

 

 

俺がそう言うと、重要な話であると理解した葛城が俺の方を向き直した。ここからが本題だ、戸塚なんておまけに過ぎない。

 

 

「─────俺の友達が、Aクラスに入りたいって言ってる。そのためならクラスを裏切るとも」

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

「──────何? それは本当か?」

 

 

葛城康平は、クラスメイトである秋月緋彩の言葉を受けて、今までにない衝撃を受けていた。

 

 

真嶋先生から他クラスに行くためには2000万ポイントが必要なことは聞かされている。そして、この学校でクラスを裏切るという行為が何を意味するのかも、俺は他人より理解していつもりだ。

 

だからこそ、2年生や3年生になった後ではなくこのタイミングでの打診というのは理解ができない。なぜ、今なのか。

 

 

「本当だよ。名前は綾小路清隆、Dクラスの生徒だ。クラスメイトにかなり面倒な人がいる上に、公にはできないけど教師の介入もあるって。昨日の夜たまたま会ったんだ」

 

「昨日の夜? それは、おまえが点呼後に走っていった後の話か?」

 

「うん。先生に訊きたいことがあったんだ、できれば他クラスの先生にも。だから、教師陣が集まってる仮設本部にね。そこで」

 

「そうか。とりあえず、詳しい話を聞かせてくれ。おまえも、俺以外にはまだ言わない方がいいと判断してこのタイミングを選んだんだろ?」

 

「そうだね。じゃあ、とりあえず聞いたこと全部話すよ──────」

 

 

 

◆

 

 

 

 

「そうか。分かった」

 

 

綾小路が話した内容を伝えると、葛城は考え込むような顔をした。いきなりこんな話を持ち込まれれば無理もないけど、決断は既に見え切っている。

 

この話に断る理由なんて存在しないし、メリットも大きい。尤も、それは綾小路自身が証明する必要があるけどね。

 

 

「とりあえず、クラスの皆に伝えるのはまだ早いだろう。おまえの言った内容が本当なら、Dクラスのリーダーを当てられる上に向こうにミスを強要できる(・・・・・・・・・・・・)」

 

「……確かにそうだね。綾小路くんも、自分ならリーダー指名をいじれるって言ってたし、確かにできる」

 

「ああ。それにしても、決して言うべきことではないだろうが、運が良かったな(・・・・・・・)」

 

 

葛城が少し複雑そうな顔で呟く。木々の間を夏特有の湿気を多分に含んだ風が吹き抜ける。少しだけ、雰囲気が変わった気がした。

 

 

「そう、だね。龍園くんにリーダーを見抜かれてる可能性を知った直後に、偶然戸塚くんが怪我をして(・・・・・・・・・・・・)しまった(・・・・)」

 

「そしてリタイア、か。ということは、弥彦にリーダーを続けさせる選択肢も与えられた上で、秋月はリーダー変更を選んだということか」

 

「うん。どのみちリタイアは避けられないし、ならスポットも占有できるし他クラスを騙せるかもしれないリーダー変更を選んだ。もし綾小路くんと会わなかったとしても、俺は変更を選んでたと思う」

 

 

これは紛れもない事実だ。仮に無人島試験が全て俺の計画通りに進んでいたとしても、俺はリーダーを変更していた。その場合でも、Aクラスを圧勝させることは可能だった。

 

 

「そうか。綾小路の件は、今回の試験の結果次第で検討するとしよう。キーカードの確認はしたからこれは返してくるといい。それと、俺は堅実な戦い方を好む。悪いが、証拠がないから龍園の指名はしないと伝えてくれ」

 

「了解。彼の武器については今後絶対に証明するって言ってたし、検討してくれるだけでもありがたいよ」

 

「クラスのためになるのなら当然の判断だ。それと、最後に訊いてもいいか?」

 

「いいけど、何を?」

 

「おまえから見た綾小路という人間の率直な感想が聞きたい」

 

 

『綾小路清隆』、ホワイトルームという非人道的な研究施設で育てられた教育の被害者であり、同時に普通の人間では到底太刀打ちすることのできない高精度な能力を持つ最高傑作。

 

だが、強力な武器というのは使い手次第では有効に活用することもできる。今の綾小路の精神性のままうちに引き込み悪人の介入を防げれば、善の方向に持っていくことも可能なはずだ。

 

 

「一言でいえば、良いやつだよ。DクラスとCクラスの揉め事は覚えてるよね、あのとき矢面には立ってないけど問題解決に尽力していたのは堀北さんと綾小路くんの2人だ」

 

「しかし、あの裁判はCクラスが訴えを取り下げたことで結局なしになったと記憶しているが」

 

「それは当人にしか分からないけど。少なくとも俺がAクラス内で目撃者を募ったのは彼に頼まれたからだ。明らかにクラスの異分子である須藤くんを助けようとする程度の善性は持ち合わせてるよ」

 

 

他にも佐倉を助けたりと、綾小路の根底にあるのは『善』であると俺は思ってる。他者を容赦なく切り捨てたり駒としか思っていないのはホワイトルームでの徹底した思想教育のせいであると。ま、可能性の域を出ることはない持論だけど。

 

 

「そうか。分かった」

 

「じゃあ、綾小路くんにこれ返してくるよ。指名の件も伝えておく」

 

「ああ。スポット占有ポイントも今日のを合わせれば210を超える予定だ。動く準備を済ませておけ」

 

 

俺は葛城と別れ、昨夜綾小路と話した付近へと向かうことにした。この無人島試験では色々とあったけど(・・・・・・・・)、これでようやく終幕だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────ではこれより、結果発表を行う。全員、心して聞くように」

 

 

前置きをしてから、真島が拡声器を持ち直す。解答が分かっている問題っていうのは、ここまで心躍らないものなんだね。

 

 

「まずは最下位──────Cクラス、0ポイント」

 

 

原作と同様に自信を覗かせて結果発表に乱入してきた龍園が、目を見開く。そして、その次に険しい顔をした。きっと、その対象はうちのクラスの中にいるんだろうね。

 

 

「3位は──────Dクラス、110ポイント」

 

 

原作の半分以下の数値、こうしてみると如何に彼らにとって綾小路が大きな存在だったかが浮き彫りになる。裏切ったとはいえ、綾小路がいなければこの様だ。

 

 

「2位は──────Bクラス、140ポイント」

 

 

原作とまったく同じポイント数、だからなのか反応も大して新鮮味はなかった。一之瀬や神崎は悔しそうな顔をしてるけど、クラスメイトの方はお気楽だ。

 

俺もあっちにいたら、大多数と同じように笑っていたのかもしれない。今となっては、もう絶対にありえない世界線だけど。

 

 

「そして1位だが──────Aクラス、406ポイント。以上だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、カモメ」

 

 

自分のすぐ横から声がした。どこかで聞いたことのあるような声だ。微睡の中を揺蕩う自分の意識は、まだ戻らない。

 

 

「ふふっ、呑気ね」

 

 

少しだけ、頭が揺れた。隣に誰か座っていると気付き、自分が海を一望できるベンチに座ったまま寝ていたことを思いだした。

 

 

「………かむろ」

 

「あれ、起きたわけ?」

 

 

重い瞼を開き前を見ると、海が赤く染まっていた。昼過ぎに試験は終了して帰船したはずだから、数時間は意識を手放していたらしい。

 

 

「なんでいるんだ?」

 

 

隣を見ると、神室がいた。視界が傾いていることに気付いて、頭をあげる。どうやら、彼女の肩に凭れてしまっていたようだ。

 

 

「あんたがここで呑気に寝てるのを見つけて、仕方なく支えてあげたんじゃない。試験で疲れてるだろうし、なんか体調も悪かったんでしょ?」

 

「そう、だったんだ。ごめん、重かったでしょ」

 

「そんなことは気にしなくていいのよ。病人に労わられるほどヤワじゃないから」

 

 

神室はそう言って微笑んだ。好感度は、悪くないみたいだ。でも、どうしてここにいるって分かったんだろう。わざわざ探してでもない限り、人がよく通る場所じゃない。

 

 

「どうしてここに来た、って聞きたそうね」

 

「エスパー?」

 

「珍しく顔に出てたから。あんたに聞きたいことがあったのよ、試験関連でね」

 

「………答えられるものなら、答えるよ」

 

「じゃあ聞くけど、戸塚のリタイアの件、あんたでしょ?」

 

「正解だよ。あれは俺やったことだ」

 

 

山村が戸塚を外へ誘き寄せ、意識を向けさせた直後に俺が闇討ちをして止めを刺す。全て、当初の計画通りに起きたことだ。

 

 

「言い訳はどうするつもり? 何も、戸塚だって永眠したわけじゃないんでしょ」

 

「そりゃ、流石に犯罪はやれないよ。言い訳も当然用意してある」

 

「あっそ。っていうか、あんた1人の単独犯じゃないわよね?」

 

「当然。山村さんにも協力してもらったよ。外に誘き出したのは彼女だ、けど『リーダー変更の可能性』に気付いて、リーダー本人である戸塚に最初に教えたかったと言えばいいだけだ」

 

「なるほどね。確かにそれなら、戸塚も疑うことはなさそうだし、葛城も納得させられる。全部、最初から思いついてたわけ?」

 

「ルール説明を聞いた段階で、やれることには気付いてた。その上で、橋本含めた坂柳派の動き次第で帳尻を合わせるつもりだったんだ。結局、やることになったけどね」

 

「つまり、あんたは坂柳についてる奴らがどう動いても(・・・・・・)勝てる算段がついてたわけね」

 

「そうなる」

 

 

更に言えば、無人島試験に参加している人間(・・・・・・・・・・・・・・)全員が(・・・)どう動こうと、最終的な『Aクラスの勝利』という結果が揺らぐことはなかった。

 

もし綾小路がここで裏切らなくても、仮に橋本が裏切らなくても、例え龍園が原作と同じ作戦を選ばなくても。

 

 

 

──────すべての行動は、俺の想定内(・・・)に過ぎない。

 

 

 




無人島試験終了時クラスポイント
Aクラス:1489
Bクラス:804
Cクラス:491
Dクラス:200


Aクラスの獲得ポイントの矛盾に気付いた人がいるかもしれませんが、間違ってないので安心してください

オリ主と(もっと)関わって欲しいキャラいますか

  • 葛城康平
  • 坂柳有栖
  • 綾小路清隆a.k.a最高傑作
  • 神室真澄
  • 山村美紀
  • 戸塚弥彦
  • 森下藍
  • 一之瀬帆波
  • 龍園翔
  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 白石飛鳥
  • 橋本正義a.k.a蝙蝠
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