【急募】高育のAクラスで快適に過ごす方法 作:人生谷あり罠あり
A.はい。
子(鼠)グループ────試験終了後グループの全員の正解により結果1とする。
丑(牛)グループ────試験終了後グループの全員の正解により結果1とする。
寅(虎)グループ────試験終了後グループの全員の正解により結果1とする。
卯(兎)グループ────試験終了後グループの全員の正解により結果1とする。
龍(辰)グループ────試験終了後グループの全員の正解により結果1とする。
巳(蛇)グループ────試験終了後グループの全員の正解により結果1とする。
午(馬)グループ────試験終了後グループの全員の正解により結果1とする。
未(羊)グループ────試験終了後グループの全員の正解により結果1とする。
申(猿)グループ────試験終了後グループの全員の正解により結果1とする。
酉(鳥)グループ────試験終了後グループの全員の正解により結果1とする。
戌(犬)グループ────試験終了後グループの全員の正解により結果1とする。
亥(猪)グループ────試験終了後グループの全員の正解により結果1とする。
これが学校側から送られてきた干支試験の最終結果だった。見事なまでのオール『結果1』、今頃学校は大慌てでポイントを用意してて欲しい。
といってもケヤキモールみたいな大赤字ショッピングモールを運営してる時点でそんなことは起こり得ない気もするけど。
試験結果を眺めていると、部屋のドアが開く。この時間ここに来るのは神室以外いないので、俺は振り返ることもなくただ待った。
「流石ね」
「どうも」
「何を話したのか、聞くつもりはないけど、1つだけ聞かせてくれない?」
「何を?」
「前話してた綾小路の件は、どうするつもりなの」
ああ、その件か。確かに、まだ神室というか誰にも話していなかったな。普通に考えれば怪しまれるであろう綾小路の移籍。しかし、今の状況を利用することは可能だ。
「その前に、一緒に遊んだときどうだった? 感想聞きそびれてたからさ」
「まあ、普通にいい奴に思えたけど。ただ、少し世間知らずな感じもしたわね」
「そ、あいつは世間知らずなんだ。だけど、言う通りいい奴でもある。だから、クラスに引き入れるんだ」
「あんたがただ『友人のため』ってだけの理由で2000万を使うとも思えない。というか、もしかして今回の作戦って
「うーん。
「半分? じゃあもう半分の理由は何よ」
「分からないの? 前にも言ったけど、俺は君が思っているよりずっと君を大事にするつもりなんだ。もう半分の理由は………
「そ、そう。正直、あんたがそこまで私のために動くとは思ってなかったから、その、驚いた」
「まぁ、それは置いておいて、綾小路移籍の件だっけ。それなら問題ないよ、打つ手はすでに脳内にあるからね」
今の混沌とした状況、クラスの代表が各々を信用できない現状、そして消えたポイントの行方を利用すれば、賢い相手も騙せる。
「つまり?」
「君から貰うポイントの総額は6000万。そのうち2000万は綾小路の移籍に使い、2000万は葛城に渡す。すると、残るポイントは?」
「2000万」
「そう。そしてそのポイントの行方は、俺と君以外には
「………そして、そのポイントを何かに使うわけ?」
「いいや、使わない。その『消えたポイント』を利用すれば、綾小路がAクラスに移籍したとしても黒幕がAクラスの生徒にいるとは確定できなくなるからね」
それから俺はこの通称・『消失ポイント作戦』の全容を神室に伝えた。大層な名前を付けてはいるけど、実のところやるのは単なる目くらましなんだけど。
「──────確かにそれなら、Aクラスの確率が高いとはいえ一択に絞れなくなるわけか………」
「そういうこと。このポイントは使っても使わなくても効力を発揮する魔法のポイントなんだ。どうぞ天才って呼んでくれ」
「あんたが天才なのは言うまでもないでしょ。流石ね、秋月は」
◆
────船上の特別試験が終了してから1週間が経った日、神室真澄は学校へと足を進めていた。
理由は真嶋から直接『4人からポイントを受け取ったら学校へ来い』と連絡を受けたからだ。だるいと思いつつも、役目を果たすため校舎へと入る。
「来たか」
「はい。ポイントを貰えますか?」
「そういう契約だからな。俺も渡さないわけにはいかない」
携帯を渡すと、数秒操作した後返却された。残高を確認すると、直前に見たときから丁度6000万ポイント増えている。
こんな高額な表示、始めて見たかも。それだけ凄いことを、あいつはやったんだ。
「振り込まれていたか?」
「はい。ちゃんと」
「そうか。ならこれで目的は終了………と、言いたいところなんだが、神室のバックにいる人間に伝言を頼めないか?」
「伝、言………ですか」
「ああ。『色々と大立ち回りをするのは構わないが、自分の身を滅ぼすようなことは絶対にするな』と、伝えてくれ」
「私はてっきり『Aクラスが不利になるようなことはするな』とか言われると思いました」
「生徒の言動を拘束することは原則できない。校則を破らないのなら何をしても自由だが、生徒が傷つくのを黙って見ていることはしたくないからな」
「分かりました。伝えておきます」
秋月が教師の言葉を聞くとも思えないけど、伝えることは可能だし、別にいいでしょ。これからアイツが何をするのかはさっぱり分からないけど、私も危険なことはなるべくして欲しくない。
…………龍園や一之瀬、坂柳たちに負けるとも思えないけど、何か策はあるの? 秋月。
◆
『Aクラスに行けるぞ! 秋月』
神室が真嶋から回収してきたポイントを整理し、葛城に振り込んでから約2時間後、綾小路から電話がかかってきた。
出た瞬間にこれなのだから、余程嬉しいのが伝わってくる。なんか、なでなでしたいよね。この大型犬。
「本当?」
『ああ。今さっき葛城と会ってきたんだが、船の上の試験で色々やっていたのは葛城だったらしい。それで2000万以上貯まったから2学期からはAクラスに入れるって』
「それは良かった。俺も綾小路くんがクラスに来てくれるのは嬉しいよ。今暇?」
『む? 特段用事はないが』
「ならお祝いも兼ねて一緒に遊びに行かない? ケヤキモールで映画でも」
『いいのか? 是非行こう。秋月と遊べるのなら公園で蟻観察でも行くさ』
嗚呼………それなら適任が丁度うちのクラスにいますよ。あげようか? 持て余していたところなんだ。
「誰か誘ってもいい? 前に綾小路くんも会ったと思うけど、神室さんとか山村さんとかも」
『あの2人か。夏休み前に一緒にゲームセンターに行ったな。2人がいいなら俺も大歓迎だ』
「オッケー、じゃあそういう感じで。決まったらこっちから電話かけるね」
『分かった。待ってる』
電話を切り、一旦携帯をベッドに投げる。それから俺自身も身も放り出すと、背中に鈍い衝撃が走る。このままだと寝ちゃいそうだ。
2学期からは綾小路がAクラスに来て、葛城により統一されたクラス運営が開始される。坂柳を止め、一之瀬はともかく龍園とはいずれ衝突するだろう。
──────このままフェードアウトしたいところだけど、後片付けはやらないとね。