【急募】高育のAクラスで快適に過ごす方法 作:人生谷あり罠あり
今回は前半に『秋月緋彩と葛城康平の契約』、後半に『思い出作り』となってます
そして最後には衝撃の展開が待っている……かもしれません
◇秋月緋彩と葛城康平の契約◇
──────夏休み明け、1年Aクラスに所属する葛城康平が生徒会入りを果たし、一躍大ニュースとなる。これは、その少し前の話である。
「前に決めた通り、2000万を渡すには条件があります」
『聞こう。俺は何をやればいい』
電話口で対応する葛城の声は冷静だ。クラスメイトを1人退学から救済できる、それだけの重みがあるポイントを渡されるのだから緊張してもいいと思うんだけどね。
「いや、命令することは特にないよ。ただ、私の示す条件を飲んで欲しい」
『命令しない? なら何をする。俺を動かすためのポイント、ということじゃないのか』
「君を動かすだけなら簡単さ。態々電話を掛ける必要はない。僕の示す条件は───」
俺は、至極冷静に、冷徹に条件を伝えた。これは俺がAクラスに配属されたことを知った瞬間から決めていたことだ。だから、何があろうと曲げるつもりはない。
『──────なるほど。クラスのリーダーを任せるのだから、それくらいは達成してみせろ。ということだな?』
「まぁ、簡単に言えばね。一年の最後に言うから」
『分かった。2000万ポイントを貰える計画に乗った時から多少のことは覚悟していたから問題ない。それを飲もう』
「分かりました。それじゃあ、諸々の処理はまた後でやりましょう。次にもう1つの要求についてです」
『最初に2つあると言っていたな。聞こう』
こっちも大本命である条件の1つ、これが俺の生命線になる。と、思わせる。当然神室にも明かしてないけど、俺が正体を隠す方法なんていくらでもあるからね。
「2つ目の条件は──────消えた2000万ポイントを使って他クラスの生徒を騙すことに協力してくれないか?」
『消えた2000万ポイントを使う………? 何をするつもりだ』
「皆には『Aクラスの不利になることには使用しない』という契約を結んだ、と説明することで納得させた、俺の持つ2000万ポイント。これを他クラスの生徒が持ってると思わせるんだ」
『思わせる、とは? 綾小路の移籍で勘づいた生徒相手に行うのか?』
「そういうこと。綾小路清隆がAクラスに移籍すれば当然Dクラスでさえ『あれやったのAクラスの誰かじゃん』と気付く。そうすれば当然、あの場の君が演技だったこともバレるだろうね」
『構わないと?』
「ポイントさえ手に入ればこっちのものですから。他者には策を考えたのは君だと伝え、あれだけ早く作戦を実行できたのも他クラスの生徒が情報を流したからだと言えばいい」
消えた2000万ポイントは、その生徒に報酬として渡した。Aクラスが有利になるように動くための契約金として。そういう筋書きだ。
『だがそれでは『優待者』の情報を持っていた者を調べられれば足がつくんじゃないのか』
「問題ないさ。だって、そんな『
──────『櫛田桔梗』、Dクラスの優待者の情報を全て把握し、俺に流した女だ。
Dクラスの生徒が『犯人』捜しに協力するのかは正直読み切れないけど、調べられてもこっちの情報がバレることは絶対にありえない。つまり、あいつを切り捨てることも可能なわけだ。
『その者を犯人として吊るし上げると?』
「証拠は消してあるので辿り着けるとも思えないですけどね。もし吊るされるならあの人だけど、多分大丈夫だと思いますよ。だって、
『仮にも情報を提供してくれた相手にその仕打ちとは俺も今後が怖いな』
「まぁ、あの人がいなかったら確かに俺の計画は為し得なかったね。ただ、それはそれ、これはこれだから」
匂わせではなく、確実にいる人物に裏切らせることは確定していた。何より情報を得やすく、簡単に脅せ、他者を間接的に操るのに適していたのが櫛田だっただけの話でしかない。
もし彼女が存在していなければ、俺は他の人材を探す必要があった。だから、ちゃんといてくれて助かったのも事実だ。
『まぁ、分かった。俺にできることならやろう』
「助かるよ。ああ、これで気が楽になった」
『楽になったなら少し質問しても良いか?』
電話を切ろうとすると、葛城に止められる。どんな質問がくるのかは大体想像がつくけど、一応言葉を待つ。
「いいですよ」
『この際、おまえが誰かなんて無粋な質問はしない。今後、おまえはAクラスの味方でいれくれる、そう解釈していいのか?』
「当然。君を支えたのも活躍を献上したのもAクラスのためさ。これからもずっと卒業するまで俺は君のクラスの味方だから安心してくれていい」
『そうか、分かった。とりあえずはその言葉を信じて、俺もAクラスを維持することに全力を尽くそう』
「うん、頑張って。それと、明日、生徒会を訪ねるといい」
『生徒会? 何の話だ』
「君、一学期に生徒会入りを申請して堀北生徒会長に断られてたよね」
『そうだな。だがあれは俺自身の力不足で────』
あの人も大概だよね。入学してきたばかりの妹に対して特に助言もせず暴行未遂。原作の綾小路を信用するなら後遺症どころか殺人未遂だ。
その上『葛城?一之瀬?南雲の仲間になる可能性あるから入れません。綾小路は俺が直接見定めたからOKです』は横暴だぜ、あんちゃん。
「大丈夫、君にはクラスを率いて学校の役にも立てるだけの実力がある。もう一度申請してみれば、通るはずさ」
『………裏で何かしたのか?』
「ただの助言だよ。別に無視してもいいけどさ、生徒会として学校に貢献すれば後々Aクラスの有利に繋がるかもよ?」
『分かった。行ってみよう』
「それがいい」
今度こそ俺は電話を切る。バカンスの直前に買った2個のボイスチェンジャーを眺めながら、長い付き合いになりそうだなと思った。
さて、学くんに電話しますか。
◇思い出作り◇
夏休みもあと数日で終わってしまう、そんな8月終盤。俺はAクラスで仲の良い面々と綾小路を加えた数人で特別水泳施設を訪れている。
理由は単純に高育での思い出作りの一環だ。折角来たのに閉じこもっていたら勿体ない。楽しめるときに楽しむのが人生のコツなのだ。
「綾小路っ、今日はたくさん楽しもうな!」
「感謝する。オレのような新参者にも優しくしてくれて」
「当然だろ? Dクラスの奴らなんかと一緒にしないでくれってんだ」
綾小路移籍の件については、すでに葛城によってクラス内で共有されている。Dクラスでの惨状と、『船上での大量ポイント獲得の立役者』という情報を流したことで、クラスでは歓迎されている。
元より善思考よりの生徒が多い上、理性もCやDよりはあるので快く受け入れてくれたという面もあるだろう。良かったね、綾小路。
「綾小路は運動できるのか?」
「そこそこだな。普通よりは上だと自負しているが、期待はしないでくれ」
吉田と話していた綾小路の横に並んだ橋本が問いかける。前なら「普通くらいだぞ」とか言ってたと思うから、運動面でもそこそこやる気らしい。
「にしては………いい身体してるわね。綾小路」
「そうか? 自慢じゃないが、中学では帰宅部だったぞ」
俺の横を歩きつつ振り返った神室が綾小路の腹筋をつついた。ちょっとくらいは顔に出るかと思ったけど、綾小路の表情筋は今日は欠勤らしい。
季節限定パフェのときはあんなに嬉しそうにしてたのに…………俺の綾小路は一体何処に行ってしまったんだ。
「本当に自慢になってないのは初めて聞いたぜ。意外と面白いんだな綾小路は」
笑って背中を叩く吉田。ちなみに今日の参加メンバーは俺、綾小路、吉田、橋本、神室、山村の6人だ。
すでに全員水着に着替えているから、綾小路の異常さが浮き彫りになってしまっている。小さな歓迎会も兼ねているのに、他の人から見たら引かれそうだ。
「にしても、神室ちゃんこういう遊びくるんだな。意外だぜ」
「秋月に誘われたからよ。あんたもいるなんて聞いてなかったんだけど」
「きついなぁ相変わらず。綾小路の歓迎会っていうなら来ないわけにも行かないと思ってな」
「へぇ? それはいい心掛けね」
微塵も思って無さそうな神室である。しかし、夏休み中に裏切っておいてよくそんなことを言えたものだと感心する。そのうるさい口にレジン流し込むぞ?
そして会話には参加せずただ最後尾を歩いている山村に誰も触れない。綾小路に関しては以前遊んだ時にそういう人だと知っているからだけど、他の人には多分見えてないね。
その後は結構色んなことをして遊んだけど、普通に綾小路の身体能力がバレかけてた。俺&吉田&神室vs綾小路&橋本&山村のバレー対決でかなり強かったし。
初体験だったからか最初はぎこちなかったのに神室がサーブやスパイクの手本を見せたら覚醒したからね。その上吉田は山村の真正面にスパイク打ったのに返ってきてびっくりしてたもん。
何はともあれ楽しい1日だった。部屋に帰ってから、携帯で撮った写真を眺める。吉田と橋本に肩を組まされて困惑している綾小路の姿に口元が緩んだ。
そして2枚目では撮った瞬間に橋本を睨みつけている神室やその後ろで同じようなことをしている山村も激写できた。撮ってくれた先輩に感謝だ。
◇????◇
「お久しぶりですね。綾小路くん」
「────ん? 誰だ、おまえは」
「あなたがやってくるAクラスの坂柳有栖といいます。約8年半振りの再会、とても嬉しい限りです」
綾小路清隆は、目の前で起きている現象にただ困惑していた。己の過去を知る人物が高育にいるのは完全に想定外だったからだ。
敵ではなさそうだが、警戒心を緩めずに対応する。ただ、悪い予感があまりしない。
「冗談だろ。オレたちは初対面だと思うんだが」
「私が一方的に見ただけですので、再会という言葉は語弊があったようですね。ただ、あなたに仇なすつもりはないので安心してください」
「………オレの過去を知っているのか?」
「ええ。私はただ純粋にあなたと雌雄を決したいのです。………ですから、まずはお友達になりましょう」
「──────え?」
3年生編5巻の試し読み②読みました
天沢可愛すぎませんかね