【急募】高育のAクラスで快適に過ごす方法 作:人生谷あり罠あり
とりあえずペーパーシャッフルまでの大まかな構想は完成しました
──────2学期初日。
朝教室につくと、皆というわけではないが大半がなんだかソワソワしている。理由は言うまでもなく綾小路だろう。
彼がこの後うちのクラスに移籍してくる。Dクラスにお別れを告げたのかは知らないけど、そんなことをしてもらえるような人は少なかったと思う。
「─────先程2000万プライベートポイントポイントを使用しこのクラスに移籍してきた綾小路清隆です。入れて良かったと思ってもらえるよう、できることはやるつもりです」
SHRが始まる直前、真嶋に案内されて教室に入ってきた綾小路は促されるままそう挨拶をした。表情は相変わらず硬いが、暗いわけじゃない。
「ようこそAクラスへ」
「待ってたぜ綾小路」
「お待ちしていましたよ、綾小路くん」
俺や吉田、坂柳が言葉を返したことで、各々が彼に言葉をぶつけ始める。最初は驚いていたが、その後絶妙な表情に変わり、最後は雰囲気で笑ったような気がした。
「みんな、ありがとう。改めてだが、是非ともよろしく頼む」
そんなこんなで綾小路移籍の儀は終了した。Dクラスの面々たちの反応を見てみたい気持ちがないわけじゃないけど、今行くのは得策じゃないだろうね。
そもそも、大多数の人間はなんでうちが引き抜いたかも、それでどれだけの可能性が潰れたかも分かってないだろうし。
「………では改めて。今までは不用意に競い合っていましたが、それも今日でお終いです」
クラス内に、異様な空気が立ち込める。綾小路が移籍してきてから数分後の出来事だ。坂柳が葛城に話しかける。
「どういう風の吹き回しだ?」
「リーダーの座を追い求める理由は先日なくなりましたので。もちろんクラスへの貢献を疎かにするつもりはないので安心して下さい」
「深くは聞かないが、今後はAクラスのために協力していけると考えてもいいのか、坂柳」
「まぁ、私にできることでしたら。あなたの周りを飛び回っている羽虫がもう少し静かならやる気も出るんですが」
誰のことを指しているのかは明確だが、戸塚は自分のことだとは気づいてないらしい。葛城の少し後ろで真面目そうに話を聞いている。
「っ、まぁ分かった。おまえと争うことをやめれたのなら幸いだ。これからも仲間としてよろしく頼む」
「ええ。是非」
葛城の差し出した手を坂柳が握った。従うつもりは毛頭ないんだろうけど、派閥を畳むならみんなの前でやる方が都合が良かったんだろう。
とにもかくにも、これで俺の目的は大方達成できた。残る問題は──────
体育祭の説明が行われた。10月初めにやるらしいけど、やっぱり急ピッチだ。それでも、このメンバーで体育祭というと楽しみでもある。
待ちきれないってほどじゃないけど、あと何日だなんて数えるくらいには待ち遠しい。2学期はこれ以降特にイベントもないから暇だろうし、楽しもう。
「Dクラスと組むのか………」
「ちょっと気まずいね」
「気にするだけ無駄よ。どうせ恨んでなんかないと思うけど」
昼休み、購買で入手した惣菜パンやコンビニで買った弁当などを漁りながら話をする。綾小路は古巣であるDクラスと一緒の組になったのが気になるらしい。
「そうですよ。それに、してきたことを考えれば文句をいう資格すらないと思います」
「そう言ってもらえるとありがたい。思っているよりオレの交友関係は狭いし、そこまで気にする必要もない気がしてきたな」
「なんか言ってきたら俺が言い返してあげるよ」
「それは助かる」
綾小路は焼きそばパンをモグモグしながらドアの方向に視線を向けた。その先には、クラスメイトと談笑している坂柳。そういえば、もう話してるのかな。
「坂柳さんがどうかした?」
「あ、ああ。実は友達にならないかって言われてな。少し話すようになったんだ」
「大丈夫なの? なんか裏ありそうだけど」
「今のところはなさそうだ。なんでか知らないが、友達が増えるのは嬉しいからな」
坂柳に悪意があれば綾小路が気付かないはずがないし、そもそも坂柳は綾小路と敵対することを望まないだろう。もし何かするようなら消すけど、少なくとも今は大丈夫らしい。
そんなことを話しながら綾小路にオススメの携帯でできるゲームを紹介しようとしていたタイミングだった。坂柳がトコトコとこちらに歩いてくる。
「──────何をお話しされているのですか?」
ニッコリ微笑んでいる。怖い。今のこの人は権力もなくただの天才女子小学生なのだが、なんだか不吉な強者感を備えている。
「ゲームとか色々。誰かに用あった?」
とりあえず周りに視線を配る。隣の席に山村、前の空いている席に神室、そして神室の隣に綾小路。うーん、100%綾小路だねこれは。
「少しだけ綾小路くんを借りてもいいでしょうか?」
「本人が良いなら」
「別に構わないぞ。ただ、こいつらを食べ終わるまで待ってくれないか?」
綾小路は自身の机に並べられている食べ物たちを見てから言った。坂柳は少し意外そうな顔をしてから頷き、談笑の輪に戻っていく。
「変なこと吹き込まれてない?」
「坂柳にか? アイツはいい奴だぞ。一緒に遊んでくれたしな」
「へぇ。何したの?」
「ボードゲームだ。今度チェスをやりたいと言っていたな」
神室の過剰な気がする言葉にも綾小路は普通に返す。良い奴になってくれたのなら、俺も安心なんだけどな。にしても、まだチェス勝負はやってないのか。
「綾小路くん頭いいしそういうの得意そうだよね」
「まぁ、チェスは幼い頃からやっているな。ただ向こうも相当自信があるらしい。オレに練習期間を設けてくれるくらいだしな」
確か、遊びでやったら勝敗は五分五分なんだっけ、綾小路と坂柳って。ナチュラルボーンな天才の坂柳と、人工的な天才の綾小路。どっちを応援するかと言われれば多分綾小路だ。
「──────それで、何かするわけ? 今回の体育祭では」
手に入った金を少し使おうかと神室と一緒にレストランに来た。綾小路は何か気になるものがあるとかで辞退、山村はなんか森下に連れていかれた。なんなんだアイツ。
「何も。真面目にやるだけだよ」
俺はカルボナーラを、神室はオムライスを注文してから来るのを待っていると、不意に質問された。やっぱり気になるらしい。
「へぇ? じゃあ、運動神経良いのもバラすの?」
「別に良くないけどなぁ」
「一昨昨日行ったあと、山村も気にしてたわよ。あんたが結構いい身体してたって」
「それは大問題だ。変に期待されちゃ困る」
前にも言ったけど、俺の身体能力はあくまで凡才の域を出ない者の中で最高クラスというだけだ。須藤なんかには素の身体能力じゃ敵わないし、来年入学してくる宝泉なんかにも及ばないだろう。
「よく言うわよ。でも、じゃあこれから先は何かする予定はあるの?」
「まぁ、問題は最低でも1つ残ってるよ」
「何?」
「そりゃもちろん『龍園翔』だよ。他は何も問題ないけど、彼だけは面倒だ」
「あんたにそう言われるって中々じゃない? 無人島の試験じゃ最下位だったけど」
確かに、結果だけ見れば彼の功績は今のところ大したことない。ただ、原作を知ってる俺からすると綾小路、坂柳の次に面倒なのがアイツだ。
戦う相手が強すぎるだけで十分すぎる計画性や発想力を持ってる。何よりその執念深さが一番面倒だ。負けたら勝つまで繰り返す、そんなイカれ野郎を真正面から相手する気はない。
「無人島試験でやった0ポイント作戦、船上試験で行おうとしていた優待者の法則。奇策という面においては一部の例外を除いて最高値を有する男だよ。だからこそ、仕留める」
「潰すの?」
「俺の『Aクラスでぬくぬく大作戦』の1年生で最後の障害が彼だからね。ドラゴン退治さ」
「ま、あんたなら直接話すこともなく退学させちゃいそうってのが素直な感想よ」
──────龍園、おまえは強いよ。綾小路や坂柳という作中屈指の実力者たちに認められてるんだから、それは疑う余地のない事実だ。
だからこそ、君は排斥しなくちゃいけない。似合いな『結末』を用意しよう。
3年生編5巻おもしろかったですね!
ネタバレは避けますが、石上くんが想像よりも凄かった! あと七瀬無理しないで休め