【急募】高育のAクラスで快適に過ごす方法 作:人生谷あり罠あり
体育祭が行われるということもあり、時間割に体育が増えた。俺としてはこのまだ暑い時期に運動するのは好きじゃないため、あまり乗り気じゃない。
が、授業として行われている以上不参加でクラスポイントに影響を与えるわけにもいかないので日々汗をかきながら走っているわけだ。
「暑すぎ……」
「大丈夫か?」
項垂れながらトラックを奔っていると、綾小路が隣に並んできた。微塵も汗をかいてないから、この程度ならやっぱり余裕なんだろうね。
意図的に汗をかく練習をした俺を見習いなさい。
「平気平気。清隆くんはまだ結構余裕あるんだね」
「まあな。だが、そう言う緋彩もまだ余裕を残しているように見えるが?」
「だったら俺も嬉しいんだけどね。生憎と結構本気だよ」
俺は後ろを振り返る。クラスの男子の内半数以上がそこにいた。俺の前を行っているのは鬼頭や橋本、清水などの少数だ。
「そう言えば、少し話があるんだがいいか?」
「いいけど、それ走りながらする話なの?」
「別に走りながらである必要はないが」
「じゃあこれ終わったらにしよ。心臓が潰れそう」
「それは大変だな」
綾小路はオーバーリアクションをすると、ペースを少しだけ落とした。やっぱり、コイツはいい奴だ。変なことさえしなければの話だけど。
「それで、話って?」
「この前緋彩に勧められた漫画を読んだんだが、かなり面白くてな。他にも聞きたいんだ」
「お気に召したようで嬉しいよ。そうだなぁ………」
『この世界』もちゃんと日本ということもあり、ドラ〇ンボールやワン〇ースなどの漫画もきちんと存在している。俺が勧めたのも結構有名どころだ。
「清隆くんってどういうジャンルが好きなの?」
「数を読んでないから分からないが、いわゆる『アクション系』は好きだぞ。この前ワン〇ンマンのアニメを見たんだが、あれは映像が凄かったな」
夏休みという膨大な時間を使って、綾小路は漫画やアニメという新たな娯楽への扉を開いた。ここから先は彼の好奇心の赴くまま好きにさせてやるのが良いだろう。
「じゃあ新しいのにも挑戦してみよう。例えば『頭脳戦系』とか………」
そんな話をしていると、教師が全体に向けて集合を促した。仕方なく水分補給のフリをして行っていた密談を中止し、他の皆と同じよう教師の元へ小走りで向かう。
「参加表についてだが、少しだけ皆に話がある」
SHRが終わり、各々が好きに動き出そうとしたとき、葛城が切り出した。今回の体育祭に関しては、あまり運動が得意な生徒が多くないということもあり、大まかな内容は彼が決めることになってる。
坂柳も、多少だが助言などをする気になったらしい。軽く訳を聞いたら、『綾小路くんの前ですから。いいところを見せるのは当然でしょう』って言ってた。
「なんですか、葛城さんっ!」
「俺自身含めだが、運動神経が良いと言い切れる生徒が少ないというのがAクラスの現状だ。だからこそ、俺も策を考えることにした」
「………というと?」
「今回はDクラスと組むことになっているな。綾小路の件があるとはいえ、彼らとしてもなるべくマイナスは避け、可能ならクラスポイントをプラスにしたいはずだ。
そこで────参加票を共有し合い、優秀な生徒同士での潰し合いを避けるというのはどうだろうか」
そういう手を打ってくるのか。正直、ここで葛城からこの提案が出る確率は10%以下だと思っていたんだけどな。思ったよりも『勝利』に固執するらしい。
契約したときに言っていた『Aクラス維持に全力を尽くす』という言葉を疑っていたわけじゃないけど、ここまでするとは。
「どういう意味?」
「これはクラス同士の対決でもあるが、最も重要なのは『赤組の勝利』だ。これを成し遂げなければクラスポイントはマイナスになる。だからこそ、赤組の得点を稼ぐためにも参加表を共有するのは合理的だと考えている」
彼の言う通り、体育祭において重要なのはクラスではなく組としての勝利だ。これだけでプラスになるわけじゃないが、これに失敗すればクラスポイントは確定で減る。
そしてDクラスには一点特化型の生徒に加え、運動のできる面子もある程度揃っている。そう考えれば、ただでさえ貴重な戦力を平田や須藤で潰されるのは悪手でしかない。
「向こうが乗ってくれるならいいと思いまーす」
「自分も賛成です! Dクラスの奴らと協力するのは癪ですけど、CクラスやBクラスを突き放す方が大事ですし」
原作と違い、櫛田には自分以外を相手に裏切りをしないよう口止めをしてあるので、CクラスがDクラスを狙い撃ちにすることはできない。それに、無人島試験での結果も違っているからまずまず興味を抱いてないだろうね。
「他のみんなもいいだろうか? いいなら明日の組合同練習の際に俺から持ち掛けようと思う」
その問いに全員が頷いたことで、放課後の短時間作戦会議は終了した。まだ参加表の内容を全て決めたわけじゃないだろうし、会談が上手くいけば一緒に決めていくことになるだろう。
がんばれ葛城。陰ながら応援してるよ。
余談だけど、坂柳が派閥解体を宣言したからか鬼頭もしっかり葛城に協力してくれるようになった。あんまり話すタイプじゃないけど、どの競技でもそれなりに活躍すると約束したらしい。流石、OOA身体能力Aは違うね。
「そういえば、龍園に対する策はもう打つつもりなわけ?」
「そうだなぁ。一応、打っておこうかなとは思ってるよ」
真っ直ぐ寮へ向かっている途中、神室はそんなことを聞いてきた。龍園をどう仕留めるかについてはもう考案済みだけど、決して褒められたやり方じゃないのは確かだね。
「私も何かする?」
「あ~、するよ。真嶋への伝達を頼みたい」
「また?」
「その方が君もドキドキするでしょ。でも残念、ちょっとだけスリルとは遠ざかるかも」
「どういうこと?」
首を傾げる神室に対して、俺は少しだけ言葉を選ぶ。やることはシンプルだけど、その行動で今後が大きく変わる。
「最初に言っておくと、これは本命じゃない。あくまでそれを補強する策だから」
「で、何をすればいいわけ」
「──────ああ、それはね………」
俺は作戦の導入部分を神室に伝える。これは、龍園、そして同時に一之瀬すら嵌めれる可能性のある一手だ。確実に仕留めるためには、罠は何重にも用意しておくものだからね。
折角アンケートとったので上位の面子とは絡ませていきたいなぁ、なんて思いつつきっかけを考えるのにまた時間がかかってしまう