【完結】キラメキ・リンク!~煌めきの彼方へ~   作:匿名女児

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第10話 昼に咲く、もう一つの煌めき

──夏休み。

 

アイドル研究部の活動もない。

 

今日は、久しぶりの完全な休日だった。

 

「うーん……」

 

ヒカリは一人、街の中を歩いていた。

 

特に予定があるわけではない。

 

ただ、なんとなく外へ出てみたくなったのだ。

 

「夏休みって、こんなに暇なんだ……」

 

少しだけ寂しそうに呟く。

 

すると。

 

「……あれ?」

 

ヒカリの視界に、一人の少女が入った。

 

帽子。

 

眼鏡。

 

長い髪。

 

人混みに紛れるように歩いている。

 

「……もしかして」

 

ヒカリは足を止めた。

 

見覚えがある。

 

あの姿。

 

あの雰囲気。

 

「あの時の……!」

 

ヒカリは駆け寄る。

 

「すみません!」

 

「……?」

 

少女が振り返る。

 

「えっと……」

 

ヒカリは少し戸惑いながら続ける。

 

「前に、私を助けてくれた人ですよね?」

 

「……!」

 

一瞬。

 

少女の表情が変わった。

 

けれど、すぐに穏やかな笑顔へ戻る。

 

「……よく覚えていましたね」

 

「やっぱり!」

 

ヒカリが嬉しそうに笑う。

 

「あの時は本当にありがとうございました!」

 

「いえ。大したことではありませんよ」

 

「そんなことないです!」

 

ヒカリは首を横に振る。

 

「あの時、あの人が助けてくれなかったら……私、どうなってたか分からないです」

 

「そうですか」

 

少女は小さく微笑む。

 

「それなら、よかったです」

 

「はい!」

 

ヒカリは元気よく頷く。

 

「そうだ!」

 

ヒカリが思い出したように顔を上げる。

 

「私、あれからアイドルを続けてるんです!」

 

「……知っています」

 

「え?」

 

「……いえ」

 

少女は少しだけ慌てたように眼鏡を直す。

 

「頑張っているんだな、と思っただけです」

 

「そうなんです!」

 

ヒカリは嬉しそうに話し始める。

 

「私、最初はアイドルのこと何も知らなくて……」

 

「……」

 

「でも、ユウヒちゃんとリカちゃんと出会って、一緒に練習して、ライブもして」

 

「はい」

 

「それから、キャルちゃんにキラメキアクトのことも教えてもらって」

 

少女は黙ってヒカリの話を聞いている。

 

「最初は、ただキラキラしててすごいなって思ってたんです」

 

ヒカリは空を見上げる。

 

「でも、今はちょっと違います」

 

「どう違うんですか?」

 

「煌めきって、私たちだけのものじゃないんだって」

 

ヒカリは胸元に手を当てる。

 

「歌って、踊って、それを見てくれる人がいて……その気持ちが重なった時に生まれるものなんだって、少し分かってきました」

 

「……」

 

「それに、私一人じゃできないことも、みんなと一緒ならできる」

 

ヒカリは笑う。

 

「この前、カリンちゃんも仲間になってくれました」

 

ヒカリは嬉しそうに続ける。

 

「カリンちゃんは衣装を作ってくれて、それから一緒にアイドルを始めて……」

 

そして。

 

「四人で、Color☆Linkっていうグループになったんです!」

 

「Color☆Link……」

 

少女はその名前を口にする。

 

「素敵な名前ですね」

 

「はい!」

 

ヒカリが笑う。

 

「みんな違う色だけど、それがつながって、もっと大きな煌めきになるっていう意味なんです」

 

「……なるほど」

 

少女は満足そうに頷いた。

 

「ずいぶん、成長しましたね」

 

「え?」

 

ヒカリが首を傾げる。

 

「……前に会った時より、ずっとアイドルらしい顔をしています」

 

「本当ですか!?」

 

「はい」

 

少女は微笑む。

 

「あなたがアイドルを続けていてくれて、よかったです」

 

「ありがとうございます!」

 

ヒカリは嬉しそうに頭を下げる。

 

その様子を見つめながら、少女は少しだけ考える。

 

「……ところで」

 

「はい?」

 

「今、少し時間がありますか?」

 

「ありますけど……?」

 

「それなら」

 

少女は街の先にある小さなステージを見る。

 

「あなたのライブを見てみたいです」

 

「私の?」

 

「はい」

 

「でも、今日は私一人ですよ?」

 

少女は微笑む。

 

「今のあなたが、どんな煌めきを放つのか……見せてくれませんか?」

 

ヒカリは少し驚いた。

 

そして。

 

「……分かりました!」

 

笑顔で頷いた。

 

「見ていてください!」

 

 

「今日は一人だけど……」

 

深呼吸する。

 

客席を見る。

 

帽子と眼鏡の少女が座っている。

 

ヒカリは笑った。

 

「よし!」

 

音楽が始まる。

 

ヒカリがステージへ飛び出す。

 

歌う。

 

踊る。

 

一人でも、迷わない。

 

最初の頃なら、きっと不安になっていた。

 

誰かが隣にいなければ。

 

誰かが支えてくれなければ。

 

けれど、今は違う。

 

ユウヒ。

 

リカ。

 

カリン。

 

キャル。

 

これまで出会ったみんなの顔が浮かぶ。

 

「私は──一人じゃない!」

 

ヒカリが大きくステップを踏む。

 

その瞬間。

 

──煌めきが生まれた。

 

桃色の光。

 

いつもの煌めきとは、少し違う。

 

強く。

 

まっすぐに。

 

ヒカリ自身の周囲へ集まっていく。

 

「……!」

 

客席の少女が目を見開く。

 

桃色の煌めきが、ヒカリの身体を包み込む。

 

そして──

 

光が弾けた。

 

舞台の上に、色とりどりの花が咲き始める。

 

昼の太陽の下。

 

青い空を背景に。

 

桃色、黄色、白。

 

無数の花々がステージいっぱいに広がっていく。

 

風が吹く。

 

花びらが舞う。

 

その中心で、ヒカリが踊る。

 

「わぁ……!」

 

ヒカリは笑う。

 

「これが……」

 

花びらを受けながら、ヒカリは最後の振り付けへ入る。

 

「私の煌めき!」

 

最後のポーズ。

 

昼の光を浴びた花畑が、まばゆい光へ変わる。

 

そして──

 

ぱぁっ!

 

ステージいっぱいに煌めきが広がった。

 

光はゆっくりと消えていく。

 

「ありがとうございました!」

 

ヒカリが深く頭を下げる。

 

 

ライブが終わった。

 

ヒカリはステージから降りると、少女のもとへ駆け寄る。

 

「どうでしたか!?」

 

「……」

 

少女はしばらく何も言わなかった。

 

そして。

 

「……素晴らしかったです」

 

「本当ですか!?」

 

「はい」

 

少女は満足そうに笑う。

 

「歌も、ダンスも、表情も」

 

一つ一つ確かめるように言葉を続ける。

 

「以前とは、まるで違いますね」

 

「えへへ……」

 

ヒカリが照れたように笑う。

 

「みんなと一緒に練習してきたからです」

 

「それだけではありません」

 

「え?」

 

「あなた自身が、アイドルとして何を届けたいのかを理解し始めている」

 

少女はステージを見る。

 

「だから、あれほどの煌めきが生まれたのでしょう」

 

「……!」

 

ヒカリは自分の手を見る。

 

「まだまだあの人には遠いですけど……」

 

「それでも」

 

少女は微笑む。

 

「十分、立派な一歩です」

 

「ありがとうございます!」

 

ヒカリは頭を下げる。

 

「私、もっと頑張ります!」

 

「はい」

 

少女も頷く。

 

「あなたなら、きっともっと先へ行けます」

 

しばらく二人は、静かに笑い合った。

 

やがて。

 

「それでは、私はこれで」

 

「あっ……」

 

ヒカリが少し寂しそうな顔をする。

 

「もう行っちゃうんですか?」

 

「はい」

 

少女は立ち上がる。

 

「今日は、素敵なライブを見せてもらいましたから」

 

「こちらこそ!」

 

ヒカリが笑顔になる。

 

「あの時助けてもらったお礼、少しは返せましたか?」

 

「……十分です」

 

少女は穏やかに笑う。

 

「とても素敵なものを見せてもらいました」

 

「よかった……!」

 

「それでは」

 

「はい!」

 

少女は帽子を直す。

 

「これからも、アイドルを続けてください」

 

「もちろんです!」

 

ヒカリは大きく頷く。

 

「私たち、Color☆Linkで、もっともっと煌めきを届けます!」

 

「……楽しみにしています」

 

少女はそう言って歩き出す。

 

「さようなら!」

 

「……さようなら」

 

ヒカリは手を振る。

 

少女の姿が、人混みの向こうへ消えていく。

 

「……不思議な人だったなぁ」

 

ヒカリは小さく呟いた。

 

それでも。

 

胸の中には、不思議と温かなものが残っていた。

 

「私も、もっと頑張ろう!」

 

ヒカリは空を見上げる。

 

夏の青空。

 

まぶしい太陽。

 

そして──

 

その光の中に、一瞬だけ桃色の煌めきが見えた気がした。

 

 

夏休み最終日──

 

Color☆Linkの四人は、部室で練習をしていた。

 

「よし!」

 

リカが汗を拭う。

 

「今日もいっぱい練習したね!」

 

「うん」

 

ヒカリも頷く。

 

「夏休みから、ずっと忙しかったもんね」

 

「ライブも増えましたし」

 

カリンが笑う。

 

「少しずつ、私たちのことを知ってくれる人も増えてきました」

 

「これからもっと頑張らないとね」

 

ユウヒが笑う。

 

その時。

 

部室に置かれていたテレビから、ニュースが流れ始めた。

 

『続いて、アイドル界のニュースです』

 

「ん?」

 

ヒカリが振り返る。

 

『現在、トップアイドルとして活躍するカサネさんが、今年十二月に開催される公式大会を最後に、アイドル活動から引退すると発表しました』

 

「え……?」

 

ヒカリが目を見開く。

 

「カサネさんが……?」

 

リカも驚く。

 

「引退!?」

 

ユウヒ達は黙ってテレビを見つめる。

 

テレビには、華やかなステージに立つカサネの姿が映っていた。

 

圧倒的な歌唱力。

 

美しいダンス。

 

そして──

 

眩しいほどの煌めき。

 

「そんな……」

 

ヒカリは画面を見つめたまま呟く。

 

なぜだか。

 

胸の奥が、少しだけざわついた。

 

あの日。

 

自分を助けてくれた、あの少女。

 

そして。

 

今日まで、自分たちの前を走り続けてきたトップアイドル。

 

その二つの姿が、ヒカリの中で重なった気がした。

 

「十二月……」

 

ヒカリは無意識にそう繰り返していた。

 

 

 

秋の気配も感じる中──

 

カサネさんのラストステージが、少しずつ近づいていました。

 

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