【完結】キラメキ・リンク!~煌めきの彼方へ~ 作:匿名女児
──本選から、数週間。
Color☆Linkの四人を取り巻く環境は、大きく変わっていた。
「Color☆Linkさん、こちらの番組にも出演していただけませんか?」
「新曲のタイアップのお話なんですが!」
「雑誌のインタビューもお願いします!」
「イベント出演も決まってます!」
「ええっ!?」
次から次へと舞い込んでくる仕事。
テレビ。
雑誌。
イベント。
ライブ。
以前とは比べものにならないほどの依頼が、Color☆Linkのもとへ押し寄せていた。
「すごい……」
ユウヒが予定表を見つめる。
「本選で優勝しただけで、こんなに変わるんだね」
「嬉しいけど……ちょっと忙しすぎない?」
リカが机に突っ伏す。
「毎日がライブみたいです……」
カリンも苦笑する。
「でも、それだけ私たちの煌めきを見たいと思ってくれる人が増えたってことだよ」
ヒカリが笑う。
「だったら、頑張らないと!」
「ヒカリ、元気だね……」
「だって、楽しいもん!」
ヒカリは笑っていた。
忙しくても。
疲れていても。
ステージに立てば、やっぱり楽しかった。
◆
──二月。
ようやく、仕事の波が少し落ち着いた。
久しぶりに何も予定のない休日。
ヒカリは一人で街を歩いていた。
「今日は、何しようかな」
久しぶりの自由な時間。
そんなことを考えながら歩いていると。
「……あれ?」
見覚えのある後ろ姿が目に入った。
銀色の髪。
静かな歩き方。
ヒカリの足が止まる。
「……カサネさん?」
振り返る。
そこにいたのは。
「……ヒカリさん?」
天原カサネだった。
「カサネさん!」
ヒカリが駆け寄る。
「お久しぶりです!」
「ええ。お久しぶりです」
カサネが微笑む。
その笑顔は、以前と変わらなかった。
「まさか、こんなところで会うなんて!」
「私も驚きました」
二人はしばらく顔を見合わせる。
そして。
ヒカリがふと気づく。
「そういえば……今日は?」
「息抜きに散歩中です」
「じゃあ……」
ヒカリが少し考える。
「時間があるなら、公園で少しお話しませんか?」
「公園、ですか?」
「はい!」
カサネは少しだけ驚いた顔をしたあと。
「……ええ。構いませんよ」
静かに頷いた。
◆
二人は近くの公園へ向かった。
冬の空気。
まだ少し冷たい風。
ベンチに並んで座る。
「なんだか、こうして話すのも久しぶりですね」
ヒカリが言う。
「そうですね」
カサネが空を見上げる。
「本選以来ですから」
「うん」
ヒカリも空を見る。
「……あのとき、本当にすごかったです」
「カサネさんのライブ」
ヒカリは笑う。
「あれを見たとき、絶対に勝てないって思いました」
「……」
カサネが小さく笑う。
「それでも、勝ったじゃないですか」
「私一人じゃ、絶対に無理でした」
ヒカリは迷いなく答える。
「みんながいたから」
カサネが頷く。
「……そうですか」
しばらく。
二人の間に静かな時間が流れる。
ヒカリは、ふと口を開く。
「カサネさん」
「はい」
「……聞いてもいいですか?」
カサネがヒカリを見る。
「何でしょう?」
「引退のこと」
「……」
「もし、話したくなかったら……無理に話さなくても大丈夫です」
ヒカリは無理に聞こうとはしなかった。
「ふふ……」
カサネは静かに首を横に振る。
「構いませんよ」
そして。
ゆっくりと空を見上げる。
「大学受験をするためです」
「え……大学?」
「はい」
カサネは頷く。
「煌めきやキラメキアクトを広め、アイドルを次のステージへ導くことができました」
「ですが……アイドルそのものを、この世界の中心に据えるところまでは、まだ届かなかった」
「アイドルが、この世界の中心になるには……私には、時間が足りませんでした」
「……」
「アイドルを続けながら受験することも考えました」
「ですが、私にはどちらも続けるという覚悟を持てませんでした」
カサネは少しだけ笑う。
「それに、一度超えられた壁が居座っているのも邪魔になりますしね」
「だから」
一度、言葉を切る。
「アイドルを引退することにしました」
「……そうですか」
ヒカリは静かに頷く。
「大学に入ったら……新しい勉強も始まります」
「これまでとは違う世界を見ることになるでしょう」
カサネは微笑む。
「楽しみなんです」
「……カサネさんらしいですね」
「そうでしょうか?」
「はい」
ヒカリも笑う。
「カサネさんって、いつも先のことを見てるから」
「……」
「だから、ちょっと安心しました」
カサネがヒカリを見る。
「安心?」
「うん」
ヒカリは笑った。
「引退って聞くと、なんだか寂しいけど」
「……」
「カサネさんが次に進むためなら、それはきっと、ちゃんとした終わりなんだなって」
カサネは何も言わなかった。
ただ。
優しく微笑んでいた。
◆
しばらくして。
ヒカリが立ち上がる。
「……ねえ、カサネさん」
「はい?」
「最後に」
ヒカリが拳を握る。
「もう一回、カサネさんとライブしたい!」
「……」
カサネが目を見開く。
「私と……ですか?」
「はい!」
ヒカリは笑う。
「本選のときは、競争だったから」
「……」
「今度は、競争じゃなくて」
ヒカリが手を差し出す。
「一緒に楽しみたい!」
カサネは、その手を見る。
そして。
「……ふふ」
小さく笑った。
「本当に、ヒカリさんらしいですね」
「えへへ」
「ですが」
カサネが少し困ったように笑う。
「私は、もう引退する身です」
「うん」
「公式のステージに立つことはできません」
「じゃあ……」
ヒカリが首を傾げる。
カサネは少し考えて。
「ですが、非公式のライブでよければ」
「!」
「最後に一度くらいなら」
「やった!」
ヒカリが両手を上げる。
「ありがとうございます!」
「こちらこそ」
カサネは微笑む。
「私も、少し楽しみになってきました」
◆
小さなステージ。
観客は、いない。
公式大会ではない。
順位も。
審査も。
勝敗もない。
ただ。
二人が歌うためだけのステージ。
舞台袖。
ヒカリがカサネを見る。
「カサネさん」
「はい?」
「今日は勝負じゃないよ」
「ええ」
「だから!」
ヒカリが笑う。
「思いっきり楽しもう!」
カサネは少し驚いた顔をして。
「……はい」
微笑んだ。
◆
音楽が始まる。
ヒカリが走り出す。
カサネも続く。
二人の歌声が重なる。
ステップ。
ターン。
ジャンプ。
そして。
「キラメキアクト!」
二人の煌めきが弾ける。
桃色。
銀色。
二つの煌めきが絡み合う。
ヒカリが笑う。
「カサネさん、もっと!」
「ええ!」
カサネも笑っている。
ヒカリが空へ飛び上がる。
カサネも続く。
二人が空中で交差する。
桃色の光と銀色の光が一つになり。
巨大な星が生まれる。
その星から。
無数の花が咲く。
ヒカリが笑う。
カサネも笑う。
──楽しい。
ただ、それだけだった。
順位も。
評価も。
勝敗もない。
ただ。
歌うことが楽しい。
踊ることが楽しい。
煌めきを届けることが楽しい。
カサネは。
その感覚を久しぶりに思い出していた。
◆
ライブが終わる。
二人がステージ中央に並ぶ。
ヒカリは息を切らしながら笑っている。
「楽しかった!」
「……はい」
カサネも笑う。
「とても」
その笑顔を見て。
ヒカリが嬉しそうに笑う。
「よかった!」
「……」
カサネは自分の手を見る。
そして。
ステージを見る。
客席を見る。
まだ煌めきが残っている。
「……不思議ですね」
「何が?」
「引退すると決めたときは」
カサネが静かに言う。
「もう、十分だと思っていたんです」
「……」
「これまでたくさんのステージに立って」
「うん」
「たくさんの煌めきを届けて」
「うん」
「だから、もう悔いはないと」
カサネは笑う。
「そう思っていました」
そして。
ヒカリを見る。
「でも」
「……?」
「今日、ヒカリさんと一緒にステージに立って」
少しだけ。
寂しそうな表情を浮かべる。
「……もう少し、アイドルを続けてもよかったのかもしれない」
ヒカリが目を見開く。
「カサネさん……」
「ふふ」
カサネはすぐに笑った。
「でも」
「……」
「それでも、後悔はしません」
空を見上げる。
「私には、これから進みたい道がありますから」
「うん」
ヒカリが頷く。
「だったら、私たちがカサネさんの分まで、いっぱい煌めくよ!」
「……」
「それで、たまに見に来て!」
カサネが笑う。
「ええ」
「約束!」
「約束です」
二人が小指を絡める。
◆
春。
新学期。
アイドル研究部。
「おはよー!」
ヒカリが部室へ入る。
「おはようございます」
「おっはよー!」
「おはようございます、ヒカリさん」
ユウヒ。
リカ。
カリン。
四人は、いつものように集まっていた。
Color☆Linkは優勝後も活動を続けている。
新しいステージ。
新しい仕事。
新しい歌。
新しい煌めき。
毎日は変わらず続いていた。
「そういえば、今日の予定なんだけど──」
カリンが予定表を開く。
「ちょっと待つネコ!」
突然。
部室の扉が勢いよく開いた。
「キャル!?」
キャルが息を切らしながら飛び込んでくる。
「大ニュース!大ニュースネコ!」
「どうしたの?」
「これを見て!」
キャルがリモコンを取り出す。
テレビの電源を入れる。
画面が切り替わる。
『──本日、芸能界に超大型新人が登場しました!』
「超大型新人?」
リカが首を傾げる。
『その名も──』
画面いっぱいに。
黒いシルエットが映し出される。
長い髪。
マスク。
そして。
どこか見覚えのある立ち姿。
『マスクド・レディ!』
「……え?」
ヒカリの目が見開かれる。
画面に、謎のアイドルが映し出される。
華やかな衣装。
顔を隠すマスク。
そして。
圧倒的な存在感。
『現在、素顔やプロフィールなどは一切非公開!』
『しかし、その実力は本物!』
『突如として現れた謎の超大型新人として、早くも各方面から注目を集めています!』
「ちょ、ちょっと待って!」
リカがテレビへ駆け寄る。
「この人……!」
ユウヒも画面を見る。
「……まさか」
カリンが口元を押さえる。
「そんな……」
ヒカリは。
ただ画面を見つめていた。
マスクの奥。
その瞳。
そして。
あの立ち姿。
忘れるはずがない。
「……カサネさん?」
テレビの中。
マスクド・レディがステージへ歩き出す。
そして。
ほんの一瞬。
こちらを振り返る。
その瞳が。
どこか楽しそうに細められた。
ヒカリは。
思わず笑った。
「……もう!」
ヒカリはテレビを見ながら。
嬉しそうに笑う。
「でも」
「カサネさん、楽しそう」
画面の中で。
マスクド・レディがステージ中央へ立つ。
音楽が始まる。
そして。
新たな煌めきが──
弾けた。
◆
かつて。
夜空の高みに輝いていた銀星。
その星は。
もう一度。
別の場所で輝き始めた。
そして。
地上では。
太陽のような煌めきを放つ花が。
新しい季節を迎えていた。
銀星が照らした道を。
陽花が受け継いでいく。
そしてその先には。
また新しい煌めきが生まれていく。
──アイドルの煌めきに。
終わりはない。
──完。
最初は、カサネ主人公の最強主人公系ギャグを作ろうとしていました。
女児アニメらしい各キャラの決め台詞を盛り込む余裕がなかったり、
アイドルマスコットや配信要素の霊圧が消えたり、
多くの反省点はありましたが、休日に頭悩ませて設定練ったり、
ちゃっぴーくんの文章を直したり、いい経験になったと思います。
ガバが多い作品ではありましたが、これにて完結となります。
もし、最後まで読んでいただいた方がいらしたら、ありがとうございました。