【完結】キラメキ・リンク!~煌めきの彼方へ~   作:匿名女児

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第1話 桃色の一歩

「詳しく説明するって言ってたけど、うちの学校にアイドル部なんてあったんだね~」

 

私立きらめき中学校。

 

その校舎の一角を歩きながら、桃井ヒカリは首を傾げていた。

 

昨日、突然現れた黒猫――キャル。

 

背中に翼が生えていて、人の言葉を話す。

 

しかも自分を「アイドルマスコット」だと言った。

 

そして今日。

 

詳しい話をするからと、学校にあるという部室へ案内されたのだ。

 

「えっと……部室棟って、こっちだよね?」

 

少し不安になりながら廊下を進む。

 

やがて、一枚のプレートが目に入った。

 

そこには、

 

――アイドル研究部。

 

と書かれている。

 

「ほんとにある……」

 

ヒカリが扉を開ける。

 

「こんにちはー……?」

 

「待ってたネコ!」

 

「わっ!?」

 

机の上からキャルが飛び出してきた。

 

「キャル!」

 

「昨日ぶりネコ、ヒカリ!」

 

その隣には、一人の少女が立っている。

 

青い髪。

 

落ち着いた雰囲気。

 

ヒカリより一つ年上くらいに見える少女だった。

 

「初めまして、桃井さん」

 

「あ、初めまして!」

 

「私は青木ユウヒ。このアイドル研究部の部長だよ」

 

「部長さん!?」

 

思わず声が大きくなる。

 

「と言っても、部員は私一人だけなんだけどね」

 

ユウヒは少しだけ苦笑した。

 

「キャルと契約して、本格的にアイドル活動を始めることになったから、作ったの」

 

「じゃあ、青木さんもアイドルなんだ!」

 

「うーん……まだ、そう名乗れるほどじゃないよ。歌ってみたとか、簡単な企画配信をちょっとだけ」

 

ユウヒは少し照れたように視線を逸らす。

 

「そうなんだぁ。そういえば、契約って……?」

 

「アイドルマスコットとの契約ネコ!」

 

キャルが胸を張る。

 

「アイドルマスコットと契約した子は、専用のライブ配信ができるようになるネコ!」

 

「ライブ配信……」

 

ヒカリは先日見たカサネのライブを思い出した。

 

あの星空。

 

空を駆ける少女。

 

光に包まれたステージ。

 

「……わたしも、やってみたい」

 

思わず呟く。

 

「じゃあ」

 

ユウヒがヒカリを見る。

 

「体験してみる?」

 

「え?」

 

「アイドル研究部。まずは実際にライブをやってみた方が分かりやすいと思う」

 

「きょ、今日!?」

 

「今日」

 

ユウヒは静かに頷いた。

 

「大丈夫。私も一緒にいるから」

 

「……うん!」

 

 

 

 

部室に備えられた簡易スタジオ。

 

中央に立つヒカリの前には、一台のカメラ。

 

画面には配信開始までの時間が表示されている。

 

「本当にこれで配信されるの……?」

 

「そうネコ」

 

キャルがカメラの横で羽を動かす。

 

「準備できたネコ!」

 

「ヒカリ」

 

隣に立つユウヒが声をかける。

 

「最初は緊張すると思う。でも、楽しめばいいよ」

 

「楽しむ……」

 

ヒカリは胸に手を当てる。

 

心臓が早い。

 

足も少し震えている。

 

誰も見てくれないかもしれない。

 

でも──

 

もしかしたら、自分の歌を聞いてくれる人がいるかもしれない。

 

「……うん」

 

ヒカリは顔を上げた。

 

「やってみる!」

 

「それじゃあ──ライブスタートネコ!」

 

カメラのランプが点灯した。

 

配信が始まる。

 

最初に画面へ流れたのは、わずかなコメントだった。

 

《始まった?》

 

《新人かな?》

 

ヒカリの目が大きくなる。

 

「わ……」

 

コメントが流れている。

 

本当に、見てくれている人がいる。

 

「……ありがとう!」

 

マイクを握る。

 

イントロが流れ始めた。

 

最初の一音。

 

少しだけ声が震えた。

 

振り付けも、完璧とは言えない。

 

歌だって、特別上手なわけではない。

 

それでも──

 

ヒカリは笑った。

 

歌う。

 

踊る。

 

画面の向こうにいる人たちへ、届くように。

 

少しずつ、コメントが増えていく。

 

《かわいい!》

 

《初ライブ?》

 

《頑張れー!》

 

《なんか楽しそう》

 

その一つ一つを見るたびに、ヒカリの表情が明るくなる。

 

もっと歌いたい。

 

もっと踊りたい。

 

もっと、この気持ちを届けたい。

 

曲が終わる。

 

最後のポーズ。

 

そして──

 

《お疲れ様!》

 

《よかったよ!》

 

《また見たい!》

 

「……っ」

 

ヒカリは胸元を押さえる。

 

嬉しい。

 

ただ、それだけだった。

 

 

 

 

「……楽しかった!」

 

ユウヒが微笑む。

 

「うん。良いライブだったと思う」

 

「本当!?」

 

「うん」

 

少しだけ間を置いて。

 

「桃井さんは、アイドルに向いてると思う」

 

「……!」

 

その言葉に、ヒカリの顔がぱっと明るくなる。

 

「じゃあ……わたし、この部活に入りたい!」

 

ヒカリがユウヒを見る。

 

「……うん。今日からよろしく、桃井さん」

 

ユウヒは頷いた。

 

「ヒカリでいいよ。青木さん……青木部長?」

 

「私もユウヒでいいよ」

 

「うん!よろしく、ユウヒちゃん!」

 

二人の間に、小さな笑顔が生まれた。

 

「これで部員は二人ネコ!」

 

キャルが嬉しそうに飛び跳ねる。

 

「まずは部員集め第一号、大成功ネコ!」

 

「どんどん活動してこうね!ユウヒちゃん、キャル!」

 

ユウヒはそんな盛り上がる二人を見て、静かに笑った。

 

こうして。

 

新設されたばかりのアイドル研究部に、二人目の部員が加わった。

 

まだ、たった二人。

 

けれど。

 

少女たちのアイドル活動は、この日から始まった。

 

 

 

 

その頃。

 

一つのライブ配信が、静かな部屋の中で再生されていた。

 

画面に映っているのは、先ほどのヒカリ。

 

白銀の少女――天原カサネは、ソファに腰掛けたまま画面を見つめていた。

 

「随分機嫌が良さそうだけど、何かあったトン?」

 

「ええ」

 

カサネは画面から目を離さない。

 

歌。

 

ダンス。

 

表情。

 

まだまだ未熟。

 

それでも。

 

画面の向こうへ届けようとする意思だけは、はっきりと伝わってくる。

 

曲が終わる。

 

ヒカリが笑顔で頭を下げる。

 

カサネは静かに口元を緩めた。

 

「……期待の新人ですわね」

 

「トン?」

 

「ええ」

 

それ以上、何も語らない。

 

ただ画面の中で笑う桃色の少女を、しばらく見つめていた。

 

シュートンもまた、何も言わずにその横に浮かんでいる。

 

静かな部屋に、配信終了の音だけが響いた。

 




ユウヒ⇒ヒカリ⇒○○
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