【完結】キラメキ・リンク!~煌めきの彼方へ~   作:匿名女児

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第2話 青い歌声

「ありがとうございましたー!」

 

配信終了の表示が画面に映る。

 

ヒカリは、ほっと息を吐いた。

 

「ふぅ……今日も楽しかった~!」

 

「お疲れ様、ヒカリ」

 

隣で配信機材を片付けていたユウヒが、静かに声をかける。

 

「今日、コメント結構多かったよね!」

 

「うん。最初の頃よりは増えてきたね」

 

ユウヒが確認すると、今回の配信についたコメントは六十近く。

 

数週間前。

 

初めてライブ配信をした時には、十にも届かなかった。

 

「歌もダンスも、少しずつ良くなってると思う」

 

「ほんと!?」

 

「うん。でも、まだまだこれからかな」

 

「えへへ……頑張らないと!」

 

ヒカリは嬉しそうに笑う。

 

そんな二人を、キャルが眺めていた。

 

「ヒカリ、最初の頃よりずっと楽しそうになったネコ」

 

「そう?」

 

「そうネコ」

 

キャルが頷く。

 

「最初はカチコチだったネコ」

 

「あー……確かに」

 

ヒカリは苦笑する。

 

「でも、ユウヒちゃんが一緒にいてくれたから頑張れたんだよ」

 

「私は何もしてないよ」

 

「そんなことないよ!」

 

ヒカリが即座に否定する。

 

「ユウヒちゃん、いつも配信の準備とか手伝ってくれるし、ライブのことも教えてくれるし!」

 

「……そう」

 

ユウヒは少しだけ目を逸らした。

 

「じゃあ、休憩するネコ!」

 

キャルが声を上げる。

 

 

「そういえば、ユウヒちゃんとキャルって、どのくらいの付き合いなの?」

 

「私とキャルの付き合い?」

「ユウヒとぼくの付き合い?」

 

二人の声が、ぴったりと重なった。

 

「……あまり面白い話じゃないよ」

 

「聞きたい!」

 

ヒカリが身を乗り出した。

 

ユウヒは少し考えてから、口を開いた。

 

「あれは……私が中学一年生だった頃の話」

 

 

 

冬休み。

 

まだ雪の残る公園を、一人の少女が歩いていた。

 

青木ユウヒ。

 

当時、十三歳。

 

「……寒い」

 

ベンチの近くを通りかかった、その時だった。

 

「……お腹、空いたネコ……」

 

「え?」

 

ユウヒが足を止める。

 

声のした方を見る。

 

そこには、一匹の黒猫がいた。

 

背中には、小さな翼。

 

「……」

 

猫がこちらを見る。

 

「……ご飯、持ってないネコ?」

 

「……猫が喋った」

 

「猫じゃないネコ!」

 

猫がむっとした顔をする。

 

「アイドルマスコットネコ!」

 

「……変な猫」

 

「変な猫じゃないネコ!」

 

それが、ユウヒとキャルの初対面だった。

 

話を聞けば、キャルは妖精界からやって来たアイドルマスコット。

 

人間界でアイドルになってくれる子を探していたらしい。

 

しかし。

 

「スカウトに失敗し続けて、お腹が空いてしまったネコ……」

 

「……そうなんだ」

 

ユウヒは少しだけ考えた。

 

そして。

 

「これ、食べる?」

 

「……!」

 

差し出されたパンを見て、キャルの目が輝く。

 

「食べるネコ!」

 

夢中になってパンを食べるキャル。

 

その様子を、ユウヒは呆れたように眺めていた。

 

「……本当に変な猫」

 

「だから猫じゃないネコ!」

 

それでも。

 

その日から、二人は少しずつ一緒に過ごすようになった。

 

「ユウヒには、アイドルになってほしいネコ」

 

「私が?」

 

「そうネコ」

 

キャルはユウヒを見る。

 

「ユウヒには、光るものがあるネコ」

 

「光るもの……?」

 

「歌とかダンスとか、そういうのだけじゃないネコ」

 

キャルは笑った。

 

「ユウヒがステージに立ったら、きっと誰かを惹きつけるネコ」

 

「……」

 

ユウヒは、すぐには答えなかった。

 

けれど。

 

その言葉を聞いた時、頭に浮かんだのは一人の少女だった。

 

白銀の髪。

 

紫水晶の瞳。

 

星空を駆けるようなライブ。

 

天原カサネ。

 

「……私、あの人みたいになりたい」

 

「カサネネコ?」

 

「うん」

 

ユウヒは頷いた。

 

それが、ユウヒとキャルがアイドルマスコットとアイドルとして歩き始めたきっかけだった。

 

 

「……というのが、私とキャルの出会い」

 

「へぇ~!」

 

ヒカリが目を輝かせる。

 

「じゃあ、ユウヒちゃんもカサネさんに憧れてるんだ!」

 

「うん」

 

「わたしと一緒だ!」

 

「そうだね」

 

ユウヒは小さく笑った。

 

 

「ユウヒ、配信の準備ができたネコ」

 

「わぁ……ユウヒちゃんの配信!今日はなにするの?」

 

「うーん…久々にライブでもしようかな?」

 

 

──数分後

 

簡易スタジオの照明が落ちる。

 

青い光が、ステージ中央を照らした。

 

そこに立っているのはユウヒ。

 

ヒカリの衣装と似たデザインの、青を基調とした衣装。

 

「それじゃあ、始めるネコ!」

 

キャルの声とともに、配信が始まった。

 

コメント欄が一気に流れる。

 

《ユウヒちゃんキター!》

 

《今日はライブか!》

 

《待ってた》

 

ユウヒは静かに目を閉じる。

 

イントロ。

 

少し低めの音から始まる、落ち着いた曲。

 

目を開く。

 

歌声が響く。

 

ヒカリの歌とは違う。

 

明るく弾むような歌ではない。

 

静かで、凛としている。

 

青い光がステージを流れる。

 

ユウヒが一歩踏み出す。

 

その動きに合わせて光が弧を描く。

 

続くダンスも、ヒカリより洗練されていた。

 

ターン

 

ステップ

 

腕を伸ばす

 

その一つ一つが、曲に合わせて正確に重なっていく。

 

「すごい……」

 

ヒカリは画面に釘付けになっていた。

 

コメントも増えていく。

 

《やっぱりユウヒちゃん上手い》

 

《歌もダンスも安定してる》

 

《新人枠とは思えない》

 

ライブは順調に進んでいく。

 

最後のサビ。

 

ユウヒが腕を掲げる。

 

青い光が一気に広がった。

 

そして──

 

最後の一音。

 

ユウヒが静かにポーズを決める。

 

ライブ終了。

 

コメント欄には、次々と感想が流れていく。

 

「……すごい」

 

ヒカリが呟く。

 

「ユウヒちゃん、すっごく格好いい!」

 

「そう?」

 

「うん!」

 

ヒカリは目を輝かせる。

 

「歌も上手だし、ダンスも綺麗だし……わたしもこんな風になりたい!」

 

「……ありがとう」

 

ユウヒは少しだけ照れたように目を逸らした。

 

「でも、ヒカリだってちゃんと良くなってるよ」

 

「本当?」

 

「うん」

 

その言葉に、ヒカリは嬉しそうに笑った。

 

ヒカリが何かを思いついたように顔を上げる。

 

「ユウヒちゃん!」

 

「なに?」

 

「わたし、ユウヒちゃんと一緒にライブしてみたい!」

 

「……一緒に?」

 

「うん!」

 

ユウヒは少し考える。

 

「いいんじゃない?」

 

「やった!」

 

「キャル。二人用の曲ってある?」

 

「もちろんネコ!」

 

キャルが得意げに胸を張る。

 

「こんな日が来ると思って、ちゃんと用意しておいたネコ!」

 

「準備いい!」

 

「アイドルマスコットだから当然ネコ!」

 

 

そして。

 

二人の初めてのコンビライブが始まった。

 

ステージに立つヒカリとユウヒ。

 

桃色と青。

 

二人の衣装が、光の中で鮮やかに映える。

 

イントロが流れる。

 

最初に歌うのはヒカリ。

 

少し緊張しながらも、楽しそうに歌う。

 

続いてユウヒ。

 

安定した歌声が重なる。

 

二人の声が、一つになる。

 

「……!」

 

ユウヒは少し驚いた。

 

ヒカリの歌声は、まだ未熟。

 

それでも。

 

楽しそうに歌うその声には、不思議な力があった。

 

ユウヒも自然と笑っていた。

 

二人が手を伸ばす。

 

桃色と青の光が交差する。

 

その瞬間。

 

ステージに、いつもより強い煌めきが集まった。

 

踊る

 

笑う

 

そして、最後のポーズ

 

無数の光が二人を包み込んだ。

 

──ライブ終了

 

コメント欄が一気に流れる。

 

《二人とも最高!》

 

《コンビライブ待ってた!》

 

《この二人、相性いいな》

 

《また二人でやってほしい!》

 

その数は、これまでの配信とは比べ物にならなかった。

 

「……すごい」

 

キャルが画面を見る。

 

「コメント、いっぱいネコ!」

 

ユウヒも画面を確認する。

 

 

「……ヒカリ、ちょっといい?」

 

「ん?」

 

ヒカリが覗き込む。

 

ユウヒが取り出したのは、一枚の用紙だった。

 

「きらめき商店街 出し物芸大会?」

 

「うん」

 

ユウヒは紙をヒカリへ見せる。

 

「個人でも参加はできるけど、さっきのライブで思ったんだ。二人で……どうかな?」

 

ヒカリを見る。

 

「!」

 

ヒカリが大きく頷く。

 

「うん!一緒に出よう!」

 

「決まりネコ!」

 

キャルが嬉しそうに飛び跳ねた。

 

「ふふっ……わかった。申請しておくね」

 

 

──商店街

 

「嬢ちゃん!よかったら、どうだい!まだまだ募集中だよ!」

 

商店街のどこかで、一人の少女が紙を手に取った。

 

「へっ……」

 

楽しそうな声。

 

「おもしろそーな大会じゃん!」

 

 

 

この時は、まだ誰も知りませんでした。

この小さな大会が、少女たちの運命を大きく動かすことを。

 

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