【完結】キラメキ・リンク!~煌めきの彼方へ~ 作:匿名女児
大会当日。
私立きらめき中学校から少し離れた場所にある、きらめき商店街。
今日は、その一角で「きらめき商店街・出し物芸大会」が開催される。
「待っててね、ユウヒちゃん!」
桃井ヒカリは、商店街へ続く道を走っていた。
今日は、ユウヒとの初めての大会。
遅刻するわけにはいかない。
「急がないと……!」
そう思った、その時だった。
「お嬢ちゃん、ちょっといいかい?」
「え?」
振り返ると、大きな荷物を抱えたお婆さんが立っていた。
「これを運びたいんだけどねぇ……ちょっと重くて」
「わたし、手伝います!」
ヒカリは迷わず荷物を受け取った。
「どこまで運べばいいですか?」
「この先の角までなんだけど……」
「じゃあ、一緒に行きましょう!」
荷物を届け終えると、お婆さんは何度も礼を言った。
「本当に助かったよ。ありがとう」
「いえいえ!」
ヒカリが笑顔で手を振る。
さあ、急がなきゃ。
そう思った矢先。
「おかあさーん……!」
泣き声が聞こえた。
そこには、小さな男の子が立っていた。
「どうしたの?」
「お母さんが……いなくなっちゃった……」
「迷子?」
ヒカリはしゃがんで、男の子と目線を合わせる。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんと一緒に探そう」
「……うん」
二人で辺りを探していると、男の子が突然声を上げた。
「ぼくのワンちゃんも、いなくなってる!」
「じゃあ、その子も探そう!」
「いいの?」
「もちろん!大事な家族なんでしょ?」
「うん!」
しばらく探し回り、二人は路地の奥で小さな犬を見つけた。
「わん!」
「わんちゃん!」
男の子が駆け寄る。
犬は嬉しそうに尻尾を振った。
「よかったぁ……!」
ヒカリも笑う。
「これで一安心だね!」
「お姉ちゃん、ありがとう!」
「ううん。よかったね!」
無事、母親とも合流した男の子を見届けて、ヒカリも笑った。
――そして。
「……あ」
時計を見る。
「時間……!」
大会開始まで、ほとんど時間がない。
「大変!急がなきゃ!」
ヒカリは商店街へ向かって走り出した。
◆
その頃。
大会会場。
「ヒカリ、まだ来ないネコ……」
キャルが辺りを見回す。
「でも、まだ開始には少しあるから」
ユウヒは時計を確認した。
「ヒカリなら、きっと来るよ」
「……そうネコ?」
「うん」
その時。
「へぇ。ずいぶん余裕じゃん」
背後から声がした。
振り返ると、黄色い髪の少女が立っている。
「誰?」
「黄瀬原リカ。よろしく!」
少女は胸を張った。
「ウチも今日の大会に出るんだ」
そして、ユウヒを見る。
「まぁ、ウチが勝つけどね」
「そう」
「……それだけ?」
「うん」
「はぁ……なんか調子狂うなぁ……」
リカは肩をすくめる。
「ま、いいや。ステージで会おうよ」
そう言って、リカは離れていった。
「……変わった子ネコ」
「そうだね」
ユウヒは小さく笑った。
◆
大会が始まった。
何組もの参加者が出し物を披露していく。
そして――
「次は、黄瀬原リカさん!」
「よっしゃ!」
リカがステージへ駆け上がる。
「それじゃ、いくよ!」
音楽が流れ、黄色い光がステージを照らす。
リカが跳ぶ。
回る。
軽やかなステップ。
身体を大きく使ったダンス。
荒削りな歌声を、勢いのあるダンスが補っていく。
「……!」
「ダンス、上手いネコ」
「うん」
最後のポーズ。
観客から拍手が起こる。
「どう?ウチのダンス!」
リカは満足そうに笑った。
◆
その頃。
「はぁ……はぁ……!」
ヒカリは商店街へ向かって走っていた。
「急がないと……!」
大会開始の時間が迫っている。
「間に合わない……!」
その時。
「まあ。随分と急いでいますのね」
「え?」
前方に、帽子と眼鏡をかけた少女が立っていた。
「どうかされましたか?」
「あの、大会に出るんですけど……!急いでるんですけど、間に合わないかもしれなくて……!」
「まあまあ」
少女は微笑んだ。
「それなら、送って差し上げますわ」
「えっ、いいんですか?」
「ええ。ちょうど車がありますから」
「ありがとうございます!」
◆
──車の中
「ところで、今日は何の大会ですの?」
「商店街の出し物芸大会です!」
「まあ。楽しそうですわね」
「はい!ユウヒちゃんと一緒に出るんです!」
「お友達と?」
「はい!」
ヒカリは少し俯く。
「……でも、ちゃんとできるかな」
「不安なのですか?」
「最近、少しずつ歌もダンスも上手くなってきたけど……ユウヒちゃんの方がずっと上手だから。足を引っ張りたくないんです」
少女は微笑んだ。
「上手に歌おうとしなくてもいいのですわ」
「え?」
「あなたが楽しいと思った気持ちを、そのまま届けてみなさい」
「……楽しいと思った気持ち」
「ええ。歌は、上手さだけで人を惹きつけるものではありませんもの」
「……」
「あなたが心から楽しんでいれば、その気持ちはきっと誰かに伝わりますわ」
ヒカリは、その言葉を胸に刻む。
「……はい!」
やがて、会場が見えてきた。
「あっ!」
「間に合いましたわね」
「ありがとうございます!」
ヒカリは車を降りる。
「本当に助かりました!」
「ふふっ。頑張ってきなさい」
「はい!」
ヒカリが会場へ走っていく。
少女はその背中を見送り、帽子のつばを少し上げた。
「……頑張ってくださいませ、ヒカリ」
◆
「ユウヒちゃん!」
「ヒカリ!」
ステージ裏で二人が合流する。
「遅れてごめん!」
「大丈夫。間に合ったから」
「よかったぁ……!」
「それじゃあ、次の出番だよ」
「うん!」
二人はステージへ向かう。
客席の後方では、先ほどライブを終えたリカが二人を見ていた。
「……二人で出場するんだ?」
ユウヒと並ぶヒカリ。
「へぇ」
リカは腕を組む。
「どんなもんか、見せてもらおっかな」
◆
ステージ中央。
桃色と青の衣装。
ヒカリとユウヒが並ぶ。
音楽が始まる。
最初に歌うのはヒカリ。
「……!」
緊張する。
けれど、隣にはユウヒがいる。
そして、さっきの言葉を思い出す。
──上手に歌おうとしなくてもいい。
──あなたが楽しいと思った気持ちを、そのまま届けてみなさい。
「……うん」
ヒカリは笑った。
歌う。
踊る。
ユウヒと目を合わせる。
楽しい。
この時間が、楽しい。
ユウヒも、そんなヒカリを見て微笑んだ。
二人の歌声が重なる。
桃色と青の煌めきが、ステージを彩る。
観客から歓声が上がる。
その時だった。
ヒカリの周囲に、いつもより強い煌めきが集まり始める。
桃色の光。
それはまるで花びらのように、ヒカリの周りを舞っていく。
「ヒカリ……?」
ユウヒが目を見開く。
けれど、ヒカリ自身は気づいていない。
ただ歌っている。
ただ踊っている。
ただ──楽しんでいる。
その気持ちに応えるように、煌めきがさらに集まっていく。
「……わぁ」
ヒカリが思わず笑う。
最後の振り付け。
二人が手を伸ばす。
ユウヒの青い煌めきと、ヒカリの桃色の煌めきが重なった。
その瞬間。
桃色の光が、ふわりと大きく弾ける。
「……!」
まるで花が一斉に開いたように、光の粒がステージいっぱいに舞い散った。
ほんの一瞬。
けれど──
会場にいた誰もが、その光を目にした。
「なに、今の……」
リカも思わず目を見開く。
そして、その光を見た瞬間。
リカの脳裏に、一人の少女の姿が浮かんだ。
白銀の髪。
紫水晶の瞳。
星空の中を駆けるようなライブ。
「……天原カサネ?」
リカは呟いた。
二人はそのまま最後のポーズを決める。
桃色と青。
二つの煌めきが重なり、ステージを淡く包み込む。
一拍──
会場からも、大きな拍手が起こった。
「……楽しかった!」
ヒカリが笑う。
「うん」
ユウヒも笑った。
「私も楽しかったよ」
◆
会場から聞こえてくる拍手を背に、先ほどヒカリを送り届けた少女は歩き出す。
「……素敵なライブでしたわ」
手には先ほどまで被っていた帽子。
眼鏡も、もう外している。
「これなら、きっと大丈夫ですわね」
少女は小さく微笑む。
「最後まで見なくていいトン?カサネ」
「ええ、結果を見るまでもありませんわ」
そう呟いて、そのままその場を後にした。
◆
「それでは、結果発表です!」
大会の司会者が声を上げる。
「今回の優勝は──」
「桃井ヒカリさん、青木ユウヒさんのペアです!」
「やったー!」
ヒカリが両手を上げる。
「よかったね、ヒカリ」
「うん!」
ユウヒも嬉しそうに笑う。
「優勝ネコ!優勝ネコ!」
キャルが二人の間を飛び回った。
◆
数日後。
私立きらめき中学校。
放課後。
アイドル研究部の部室。
「……ここか」
一人の少女が扉の前に立っていた。
黄色い髪。
腕を組み、少しだけ笑う。
「失礼するよ」
扉が開く。
「……あれ?」
ユウヒが振り返る。
「たしか……黄瀬原さん?」
「よっ」
リカが手を上げる。
「ウチも、この部活に入るから」
「リカが入部するネコ!?」
リカは笑った。
「あんたたちと一緒にやったら、もっと面白そうだから」
リカは部室を見回す。
「それに──」
少しだけ口元を上げる。
「もっと近くで、あの煌めきが何なのか見てみたいしね」
リカは静かにヒカリを見る。
「え…誰?」
困惑するヒカリを他所に、キャルが嬉しそうに飛び跳ねる。
「これで部員は三人ネコ!」
桃色。
青色。
そして黄色。
アイドル研究部に、三人目の仲間が加わりました。
少女たちの物語は、次のステージへ進み始めたのでした。
ちゃっぴーくん、何度も女子高生に車を運転させようする件