【完結】キラメキ・リンク!~煌めきの彼方へ~ 作:匿名女児
数日後。
私立きらめき中学校。
放課後のアイドル研究部。
「それじゃあ、今日からよろしく!」
部室の扉を開けるなり、黄瀬原リカが元気よく声を上げた。
「よろしくね、リカちゃん!」
ヒカリも笑顔で迎える。
「よろしく、黄瀬原さん」
ユウヒも頷く。
「……で、今日は何すんの?」
「え?」
リカは部室を見回す。
「練習するんでしょ?」
「うん。まずは基礎練習から──」
「じゃ、ウチは踊ってくる!」
「えっ?」
リカはさっそく部室を出ようとする。
「ちょっと待って、黄瀬原さん!」
ユウヒが呼び止めた。
「部活動なんだから、みんなで練習するものだよ」
「えー?でも、ダンスなら一人でもできるじゃん」
「そういう問題じゃないよ」
「じゃあ、何の問題?」
「……」
ユウヒは少し考える。
「アイドルは、一人でやるものじゃないから」
「へぇ」
リカは面白そうに笑った。
「ユウヒって、真面目だねぇ」
「普通だよ」
「ウチ、そういうの苦手なんだよね」
「……」
ユウヒの眉が少し動く。
「決められたことを、決められた通りにやるのってさ」
「でも、練習は必要だよ」
「分かってるって」
リカは軽く手を振る。
「だから、自分が必要だと思ってることをやってるの」
「それなら、なおさら一緒にやったほうが──」
「はいはい。その話はまた今度!」
「ちょっと……!」
「まあまあ、二人とも!」
ヒカリが慌てて間に入る。
「ケンカはダメだよ!」
「ケンカしてないよ」
「してないって」
二人の声が重なる。
「……あわわ」
キャルが二人を見比べる。
「なんだか前途多難ネコ……」
◆
──結局、その日はリカの正式入部を保留することになった。
「……本当に入部する気があるのかな」
ユウヒが呟く。
「きっとあるよ!」
ヒカリは笑う。
「リカちゃん、楽しそうだったし!」
「……そうかな」
ユウヒは少し考え込んだ。
◆
休日。
ユウヒは街を歩いていた。
すると──
「あれ?」
見覚えのある黄色い髪が、前方を横切った。
「黄瀬原さん?」
リカだった。
普段とは違い、誰かと遊びに来ている様子ではない。
スポーツウェア姿で、どこかへ向かっている。
「……何をしてるんだろう」
先日のリカの言葉が、ユウヒの頭に浮かぶ。
──だから、自分が必要だと思ってることをやってるの。
「……本当に、アイドルをやる気があるのかな」
気になったユウヒは、少し離れて後を追った。
◆
街外れ。
人の少ない場所。
その先には、ちょっとした岩場があった。
「ここなら、誰にも邪魔されないね」
リカは荷物を置く。
そして──
「よし!」
走り出した。
岩場を駆ける。
足場の悪い斜面を登る。
手をついて身体を引き上げる。
さらに上へ。
「……!」
ユウヒは物陰から、その姿を見ていた。
「何を……?」
リカは頂上まで登ると、息を整える。
「まだまだ!」
すぐに引き返す。
そして、もう一度。
走る。
登る。
降りる。
また登る。
何度も繰り返す。
「……すごい」
ユウヒは思わず呟いた。
しばらくして。
リカは岩場を降り、今度は音楽を流した。
「ここから……」
ダンスの練習が始まる。
ステップ。
ターン。
ジャンプ。
大会で見せた動き。
それを何度も繰り返している。
「……違う」
リカが止まる。
「今の、遅い」
もう一度。
同じ振り付け。
また止まる。
「……もう一回」
汗が額から流れる。
それでも、リカは止まらない。
「もう一回!」
何度も。
何度も。
同じ動きを繰り返す。
やがて。
リカがその場に座り込んだ。
「はぁ……はぁ……」
肩で息をする。
けれど、その顔には笑みが浮かんでいた。
「……やっぱ、ダンスって最高!」
その言葉を聞いて、ユウヒは目を伏せた。
「……そういうことだったんだ」
先日のリカの言葉を思い出す。
──自分が必要だと思ってることをやってる。
その意味が、今なら分かる。
◆
「……で?」
「え?」
突然、声がした。
ユウヒが顔を上げる。
リカがこちらを見ていた。
「どうだった?」
「……!」
「ウチの練習」
「いつから……?」
「最初から」
「……」
ユウヒは固まった。
「気づいてたの?」
「そりゃ気づくよ」
リカは呆れたように笑う。
「あんた、尾行下手すぎ」
「……ごめん」
「別にいいけど」
リカは汗を拭う。
「それで?」
「それで?」
「ウチ、入ってもいい?」
ユウヒは少し黙った。
「……うん」
「へぇ」
「最初は、ちゃんと練習しない人なのかと思ってた」
「ひどくない?」
「でも、違った」
ユウヒはリカを見る。
「黄瀬原さんは、自分で必要なことを考えて、自分で努力してる」
「……」
「ダンスに対して、本気なんだね」
リカは少しだけ目を丸くした。
「……そっか」
そして笑う。
「じゃあ、入ってあげてもいいよ」
「上から目線だね」
「だってウチだし」
「……ふふ」
ユウヒも小さく笑った。
「よろしく、黄瀬原さん」
「リカでいいよ、ユウヒ」
◆
翌日。
アイドル研究部。
「というわけで!」
リカが胸を張る。
「ウチ、正式に入部することになったから!」
「やったぁ!」
ヒカリが喜ぶ。
「これで三人ネコ!」
キャルも嬉しそうに飛び跳ねる。
「それじゃあ……」
キャルがリカの前に浮かぶ。
「アイドルになる準備をするネコ!」
「おっ!」
リカが目を輝かせる。
「これが契約ってやつ?」
「そうネコ!」
キャルが手を差し出す。
「リカ、アイドルとして頑張れるネコ?」
「もちろん!」
リカがその手を取った。
黄色い煌めきが、二人を包み込む。
「わぁ……!」
ヒカリが目を輝かせる。
「きれい……!」
青い煌めき。
桃色の煌めき。
そして、新たな黄色い煌めき。
三つの光が部室を彩る。
「……これが、ウチの煌めき」
リカは自分の手を見つめる。
「なんか、いいね」
◆
そして、その日の放課後。
「せっかくだし!」
リカがステージ衣装に身を包む。
「三人でライブしようよ!」
「えっ、今日!?」
ヒカリが驚く。
「だって、三人揃ったんだよ?」
リカは笑った。
「でも、……」
ユウヒが言いかける。
「大丈夫、大丈夫!なんとかなる!」
リカは笑った。
「楽しくやろうよ!」
「……」
ユウヒはリカを見る。
そして。
「……そうだね」
ヒカリも笑う。
「うん!」
◆
──ステージ
桃色。
青。
そして黄色。
三人が並ぶ。
音楽が始まる。
ヒカリが歌う。
ユウヒが続く。
リカが身体全体を使って踊る。
三人の動きが重なる。
桃色の煌めき。
青い煌めき。
黄色の煌めき。
三つの光がステージを彩る。
「楽しい!」
ヒカリが笑う。
「イイね!」
リカも笑う。
「もっといけるよ!」
ユウヒも笑顔で応える。
三人の歌声が重なる。
最後の振り付け。
三人が手を伸ばす。
一瞬の静寂。
そして──
会場から大きな拍手が沸き起こった。
三人は顔を見合わせる。
「……楽しい!」
ヒカリが笑う。
「うん」
ユウヒも笑う。
「やっぱ、ライブって最高!」
リカも笑った。
◆
「……これからも!」
ヒカリが手を差し出す。
「三人で頑張ろう!」
「うん」
ユウヒが手を重ねる。
「もちろん!」
リカも手を重ねた。
その上に、キャルが飛び込む。
「三人で頑張るネコー!」
桃色。
青色。
黄色。
三つの煌めきが、夕暮れの空へ舞い上がる。
アイドル研究部は、ようやく本当の意味で始まったのでした。
そして──
少女たちは次のステージへ向かって、歩き出しました。
ユウヒ⇒ヒカリ⇒リカ