【完結】キラメキ・リンク!~煌めきの彼方へ~   作:匿名女児

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第4話 自由なリズムと、譲れない想い

数日後。

 

私立きらめき中学校。

 

放課後のアイドル研究部。

 

「それじゃあ、今日からよろしく!」

 

部室の扉を開けるなり、黄瀬原リカが元気よく声を上げた。

 

「よろしくね、リカちゃん!」

 

ヒカリも笑顔で迎える。

 

「よろしく、黄瀬原さん」

 

ユウヒも頷く。

 

「……で、今日は何すんの?」

 

「え?」

 

リカは部室を見回す。

 

「練習するんでしょ?」

 

「うん。まずは基礎練習から──」

 

「じゃ、ウチは踊ってくる!」

 

「えっ?」

 

リカはさっそく部室を出ようとする。

 

「ちょっと待って、黄瀬原さん!」

 

ユウヒが呼び止めた。

 

「部活動なんだから、みんなで練習するものだよ」

 

「えー?でも、ダンスなら一人でもできるじゃん」

 

「そういう問題じゃないよ」

 

「じゃあ、何の問題?」

 

「……」

 

ユウヒは少し考える。

 

「アイドルは、一人でやるものじゃないから」

 

「へぇ」

 

リカは面白そうに笑った。

 

「ユウヒって、真面目だねぇ」

 

「普通だよ」

 

「ウチ、そういうの苦手なんだよね」

 

「……」

 

ユウヒの眉が少し動く。

 

「決められたことを、決められた通りにやるのってさ」

 

「でも、練習は必要だよ」

 

「分かってるって」

 

リカは軽く手を振る。

 

「だから、自分が必要だと思ってることをやってるの」

 

「それなら、なおさら一緒にやったほうが──」

 

「はいはい。その話はまた今度!」

 

「ちょっと……!」

 

「まあまあ、二人とも!」

 

ヒカリが慌てて間に入る。

 

「ケンカはダメだよ!」

 

「ケンカしてないよ」

 

「してないって」

 

二人の声が重なる。

 

「……あわわ」

 

キャルが二人を見比べる。

 

「なんだか前途多難ネコ……」

 

 

──結局、その日はリカの正式入部を保留することになった。

 

「……本当に入部する気があるのかな」

 

ユウヒが呟く。

 

「きっとあるよ!」

 

ヒカリは笑う。

 

「リカちゃん、楽しそうだったし!」

 

「……そうかな」

 

ユウヒは少し考え込んだ。

 

 

休日。

 

ユウヒは街を歩いていた。

 

すると──

 

「あれ?」

 

見覚えのある黄色い髪が、前方を横切った。

 

「黄瀬原さん?」

 

リカだった。

 

普段とは違い、誰かと遊びに来ている様子ではない。

 

スポーツウェア姿で、どこかへ向かっている。

 

「……何をしてるんだろう」

 

先日のリカの言葉が、ユウヒの頭に浮かぶ。

 

──だから、自分が必要だと思ってることをやってるの。

 

「……本当に、アイドルをやる気があるのかな」

 

気になったユウヒは、少し離れて後を追った。

 

 

街外れ。

 

人の少ない場所。

 

その先には、ちょっとした岩場があった。

 

「ここなら、誰にも邪魔されないね」

 

リカは荷物を置く。

 

そして──

 

「よし!」

 

走り出した。

 

岩場を駆ける。

 

足場の悪い斜面を登る。

 

手をついて身体を引き上げる。

 

さらに上へ。

 

「……!」

 

ユウヒは物陰から、その姿を見ていた。

 

「何を……?」

 

リカは頂上まで登ると、息を整える。

 

「まだまだ!」

 

すぐに引き返す。

 

そして、もう一度。

 

走る。

 

登る。

 

降りる。

 

また登る。

 

何度も繰り返す。

 

「……すごい」

 

ユウヒは思わず呟いた。

 

しばらくして。

 

リカは岩場を降り、今度は音楽を流した。

 

「ここから……」

 

ダンスの練習が始まる。

 

ステップ。

 

ターン。

 

ジャンプ。

 

大会で見せた動き。

 

それを何度も繰り返している。

 

「……違う」

 

リカが止まる。

 

「今の、遅い」

 

もう一度。

 

同じ振り付け。

 

また止まる。

 

「……もう一回」

 

汗が額から流れる。

 

それでも、リカは止まらない。

 

「もう一回!」

 

何度も。

 

何度も。

 

同じ動きを繰り返す。

 

やがて。

 

リカがその場に座り込んだ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

肩で息をする。

 

けれど、その顔には笑みが浮かんでいた。

 

「……やっぱ、ダンスって最高!」

 

その言葉を聞いて、ユウヒは目を伏せた。

 

「……そういうことだったんだ」

 

先日のリカの言葉を思い出す。

 

──自分が必要だと思ってることをやってる。

 

その意味が、今なら分かる。

 

 

「……で?」

 

「え?」

 

突然、声がした。

 

ユウヒが顔を上げる。

 

リカがこちらを見ていた。

 

「どうだった?」

 

「……!」

 

「ウチの練習」

 

「いつから……?」

 

「最初から」

 

「……」

 

ユウヒは固まった。

 

「気づいてたの?」

 

「そりゃ気づくよ」

 

リカは呆れたように笑う。

 

「あんた、尾行下手すぎ」

 

「……ごめん」

 

「別にいいけど」

 

リカは汗を拭う。

 

「それで?」

 

「それで?」

 

「ウチ、入ってもいい?」

 

ユウヒは少し黙った。

 

「……うん」

 

「へぇ」

 

「最初は、ちゃんと練習しない人なのかと思ってた」

 

「ひどくない?」

 

「でも、違った」

 

ユウヒはリカを見る。

 

「黄瀬原さんは、自分で必要なことを考えて、自分で努力してる」

 

「……」

 

「ダンスに対して、本気なんだね」

 

リカは少しだけ目を丸くした。

 

「……そっか」

 

そして笑う。

 

「じゃあ、入ってあげてもいいよ」

 

「上から目線だね」

 

「だってウチだし」

 

「……ふふ」

 

ユウヒも小さく笑った。

 

「よろしく、黄瀬原さん」

 

「リカでいいよ、ユウヒ」

 

 

翌日。

 

アイドル研究部。

 

「というわけで!」

 

リカが胸を張る。

 

「ウチ、正式に入部することになったから!」

 

「やったぁ!」

 

ヒカリが喜ぶ。

 

「これで三人ネコ!」

 

キャルも嬉しそうに飛び跳ねる。

 

「それじゃあ……」

 

キャルがリカの前に浮かぶ。

 

「アイドルになる準備をするネコ!」

 

「おっ!」

 

リカが目を輝かせる。

 

「これが契約ってやつ?」

 

「そうネコ!」

 

キャルが手を差し出す。

 

「リカ、アイドルとして頑張れるネコ?」

 

「もちろん!」

 

リカがその手を取った。

 

黄色い煌めきが、二人を包み込む。

 

「わぁ……!」

 

ヒカリが目を輝かせる。

 

「きれい……!」

 

青い煌めき。

 

桃色の煌めき。

 

そして、新たな黄色い煌めき。

 

三つの光が部室を彩る。

 

「……これが、ウチの煌めき」

 

リカは自分の手を見つめる。

 

「なんか、いいね」

 

 

そして、その日の放課後。

 

「せっかくだし!」

 

リカがステージ衣装に身を包む。

 

「三人でライブしようよ!」

 

「えっ、今日!?」

 

ヒカリが驚く。

 

「だって、三人揃ったんだよ?」

 

リカは笑った。

 

「でも、……」

 

ユウヒが言いかける。

 

「大丈夫、大丈夫!なんとかなる!」

 

リカは笑った。

 

「楽しくやろうよ!」

 

「……」

 

ユウヒはリカを見る。

 

そして。

 

「……そうだね」

 

ヒカリも笑う。

 

「うん!」

 

 

──ステージ

 

桃色。

 

青。

 

そして黄色。

 

三人が並ぶ。

 

音楽が始まる。

 

ヒカリが歌う。

 

ユウヒが続く。

 

リカが身体全体を使って踊る。

 

三人の動きが重なる。

 

桃色の煌めき。

 

青い煌めき。

 

黄色の煌めき。

 

三つの光がステージを彩る。

 

「楽しい!」

 

ヒカリが笑う。

 

「イイね!」

 

リカも笑う。

 

「もっといけるよ!」

 

ユウヒも笑顔で応える。

 

三人の歌声が重なる。

 

最後の振り付け。

 

三人が手を伸ばす。

 

一瞬の静寂。

 

そして──

 

会場から大きな拍手が沸き起こった。

 

三人は顔を見合わせる。

 

「……楽しい!」

 

ヒカリが笑う。

 

「うん」

 

ユウヒも笑う。

 

「やっぱ、ライブって最高!」

 

リカも笑った。

 

 

「……これからも!」

 

ヒカリが手を差し出す。

 

「三人で頑張ろう!」

 

「うん」

 

ユウヒが手を重ねる。

 

「もちろん!」

 

リカも手を重ねた。

 

その上に、キャルが飛び込む。

 

「三人で頑張るネコー!」

 

 

 

桃色。

 

青色。

 

黄色。

 

三つの煌めきが、夕暮れの空へ舞い上がる。

 

アイドル研究部は、ようやく本当の意味で始まったのでした。

 

そして──

少女たちは次のステージへ向かって、歩き出しました。

 




ユウヒ⇒ヒカリ⇒リカ
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