【完結】キラメキ・リンク!~煌めきの彼方へ~ 作:匿名女児
──私立きらめき中学校。
放課後のアイドル研究部。
「もっと練習しないと!」
ヒカリが気合いを入れる。
「そうだね」
ユウヒも頷いた。
先日の公式大会。
優勝した。
それは嬉しかった。
けれど──
天原カサネのライブを見てから、三人の中には同じ想いが芽生えていた。
もっと上手くなりたい。
もっと遠くまで、煌めきを届けたい。
「というわけで!」
リカが両手を叩く。
「特訓!」
「特訓?」
ヒカリが首を傾げる。
「そう!」
リカは笑った。
「今度の連休、思いっきり身体を鍛えようよ!」
「えっ、休みの日も?」
「当たり前じゃん!」
「でも、何をするの?」
「走る!」
「走る?」
「登る!」
「登る!?」
ヒカリの顔が引きつる。
「えっと……アイドルの練習だよね?」
「もちろん!」
リカは胸を張った。
「歌って踊るには、体力が必要でしょ?」
「それは……そうだけど」
ユウヒが考える。
「なら、私もやるよ」
「ユウヒちゃんまで!?」
「カサネさんとの差を縮めたいから」
「……」
リカが一瞬黙る。
そして。
「さすがユウヒ、話が早い!」
嬉しそうに笑った。
「じゃ、決まり!」
「えぇ……」
ヒカリだけが困った顔をした。
「……あわわ」
キャルが三人を見比べる。
「なんだか大変なことになってきたネコ……」
◆
──休日。
街外れの岩場。
「よし!」
リカが岩場を見上げる。
「まずはここから!」
「本当に登るんだ……」
ヒカリが呟く。
「もちろん!」
リカが駆け出す。
岩場を登る。
足場の悪い斜面を進む。
手をついて身体を引き上げる。
「ユウヒ!」
「うん!」
ユウヒも続く。
「待ってぇ!」
ヒカリも慌てて追いかける。
しばらくして。
「はぁ……はぁ……」
ヒカリは地面に座り込んだ。
「もう……無理ぃ……」
「まだ一回目だよ?」
リカが笑う。
「ええっ!?」
「ほら、行こう!」
ユウヒは苦笑する。
「ヒカリ、休んでからでいいよ」
「うん……」
◆
昼過ぎ。
今度はダンスの練習。
リカが音楽を流す。
「昨日より速く!」
ステップ。
ターン。
ジャンプ。
何度も繰り返す。
ユウヒも真剣な表情で動きを合わせる。
「もう一回」
「うん」
「もう一回!」
「分かった」
リカとユウヒは何度も踊る。
「すごい……」
ヒカリは二人を見つめていた。
「二人とも、全然疲れてない……」
「疲れてるよ」
ユウヒが答える。
「でも、まだできるから」
「それ、すごいよ……」
ヒカリは笑った。
「よしっ!私も頑張らなきゃ!」
◆
──夕方。
三人は帰り道を歩いていた。
「今日はこれくらいかな」
リカが伸びをする。
「明日から歌の練習も増やそう」
ユウヒが言う。
「いいね!」
リカが笑う。
「じゃあ、朝から!」
「朝から!?」
ヒカリが驚く。
「ひえぇ……二人とも、元気すぎるよぉ……」
キャルがため息をつく。
「このままだと、ヒカリが先に倒れるネコ……」
◆
──翌日。
街の商店街。
三人は合宿のための買い出しに来ていた。
「食材はこれで全部かな?」
ユウヒが買い物袋を確認する。
「たぶん!」
ヒカリが答える。
「じゃ、帰ろう!」
リカが歩き出した、その時。
「ん?」
足元に、小さな何かが落ちていることに気づいた。
「これ……」
リカがしゃがみ込む。
拾い上げたのは、色とりどりの糸と、小さな裁縫道具だった。
「誰か落としたのかな?」
「リカちゃん、どうする?」
ヒカリが尋ねる。
「もちろん、届けるよ」
リカが辺りを見回す。
「……あっ!」
少し先を、一人の少女が歩いていた。
緑色の髪。
肩には大きなバッグ。
そのバッグから、糸や布の切れ端が顔を見せている。
「ねえ!」
リカが声をかける。
「これ、落としたんじゃない?」
「え?」
少女が振り返る。
「これ!」
リカが手芸用品を見せる。
「あ……!」
少女が慌てて駆け寄ってくる。
「それ、私の!」
「やっぱり?」
リカが手渡す。
「はい!」
「ありがとう……」
少女は受け取った手芸用品を確認する。
「よかった……これ、大事なものだから」
「そんなに?」
「うん」
少女は小さく頷いた。
「これがないと、続きを作れないから」
「作る?」
リカが首を傾げる。
「何を作ってるの?」
「……衣装」
「衣装!?」
リカの目が輝く。
「へぇ!」
カリンが持っているバッグを見る。
「見てもいい?」
「ちょっと待って」
少女は少し迷ったあと、バッグから衣装を取り出した。
「まだ完成してないけど……」
色とりどりの布。
細かな装飾。
丁寧に施された刺繍。
「かわいい!」
リカが声を上げる。
「すごく素敵!」
ヒカリも目を輝かせる。
「本当に?」
少女の表情が少し明るくなる。
「うん!」
「……ありがとう」
少女は少し照れたように笑った。
「私は緑ヶ丘カリン」
「ウチは黄瀬原リカ!」
「私は桃井ヒカリ!」
「青木ユウヒです」
「これから三人は、どこかお出かけですか……?」
カリンが三人を見る。
「うん!」
ヒカリが答える。
「合宿!私たち、アイドル研究部で活動してるの!」
「そうですか……」
カリンは三人をじっと見つめる。
「……だったら、ちょうどいいかも」
「え?」
カリンが持っていた布を見せる。
「私、アイドル用の衣装も作ってるんです」
「アイドル用も?」
「はい」
カリンは頷く。
「いつか、自分が作った衣装を着て、ステージで歌って踊ってくれる人を探してるんです」
「それなら!」
リカが手を上げる。
「ウチたちがやる!」
「え?」
カリンが驚く。
「本当に?」
「もちろん!」
ヒカリも頷く。
「私たち、ライブするの大好きだから!」
「……わかりました。まだ完成したばかりですけど……」
カリンは少し不安そうに衣装を抱えた。
「着てもらえるなら、お願いしていいですか?」
「決まりだね!」
リカが笑う。
「じゃあ、ライブしよう!」
◆
──数日後。
小さなステージ。
カリンが作った衣装を身につけた三人が立っていた。
桃色。
青。
黄色。
三色の衣装が、ステージの照明を受けて輝いている。
「……似合ってる」
客席からカリンが呟く。
音楽が始まった。
ヒカリが歌う。
ユウヒが続く。
リカが大きく身体を動かす。
三人の動きが重なる。
「もっと!」
リカが声を上げる。
「うん!」
ヒカリが笑う。
「いけるよ!」
ユウヒも続く。
三人の周囲に、少しずつ煌めきが集まり始める。
桃色。
青。
黄色。
けれど──
いつものように、ただ輝くだけではない。
光が三人の動きに合わせて揺れる。
集まる。
そして──
「……!」
カリンが目を見開く。
三人が最後の振り付けに入る。
同時に手を伸ばす。
その瞬間。
三色の煌めきが、一斉に強く輝いた。
「わぁ……!」
光が三人を包み込む。
ほんの一瞬。
それでも、これまでとは明らかに違う。
まるで三人の想いに応えるように、煌めきが大きく弾けた。
「……今の……」
ユウヒが驚く。
「これは!?」
リカも目を輝かせる。
「すごい!」
ヒカリが笑う。
三人の周囲を、煌めきがきらきらと舞っている。
やがて光が静かに消えていく。
最後のポーズ。
拍手が起こった。
「ありがとうございました!」
三人が頭を下げる。
◆
ヒカリは自分の手を見る。
「なんだか、すごく楽しかった!」
「ウチも!」
リカが笑う。
「なんだか、いつも以上に力が出せた気がする!」
「私も」
ユウヒが頷く。
◆
「カリンちゃん!」
ヒカリが笑う。
「素敵な衣装を作ってくれてありがとう!」
「……うん」
カリンは嬉しそうに微笑んだ。
「こちらこそ」
◆
帰り道。
「今日の光、なんだったんだろうね」
ヒカリが空を見上げる。
「分からない」
ユウヒも考える。
「でも、今までとは違った」
「絶対、もっとすごくなるよ!」
リカが拳を握る。
「だったら、もっと練習しよう!」
「うん!」
「そうだね」
三人は歩き出す。
その後ろ姿を、カリンが遠くから見つめていた。
「……あの三人なら」
カリンは小さく呟く。
「私の衣装を、もっと輝かせてくれるかもしれない」
この時のカリンちゃんは、まだ知りませんでした。
自分自身が、いつかその煌めきの中に立つことになるなんて。
ちゃっぴーくん「崖は危ないから、岩場にしといだで」