鬱蒼と生い茂る森の奥にその集落はあった。本来は人など到底住める場所ではない、どころか、そもそも人が他種族の家畜程度の扱いが優しい部類になる大陸中央部、その遥か南西に位置するアーヴィンジャー大密林。
約五百年前に突如として起きた八欲王と呼ばれる者達の世界を巻き込む大乱の際に、1人の王が一時的な根城にしたと伝わるこの密林は、現地の様々な種族から入ることすら躊躇われる禁域とも呼ばれ、更には八欲王に仕えた魔神がいたという噂も相まって、立ち入る者など皆無であった。
そんな密林の奥地に人の隠れ里があった。先祖が八欲王によって救われ、しかし、共謀した竜王共の手によって殺された彼らの王は、死に瀕した際に隠れ里の彼らに一つ、戯れに命じた。
『私の血を絶やすな。いずれか私の血から強き王が現れる』
ただのプレイヤーであり、殺されたと言っても、アイテムで復活する彼にとっては、完全な戯れで口にした言葉は。五百年この隠れ里を縛る呪いの言葉となった。
以降、隠れ里では彼の血を引く者同士での歪んだ営みが繰り返された。王の為に、人の為に、他種族の奴隷・家畜に甘んじる我らを救う偉大な王を。
幸いだったのは、神と呼ばれた者のその力は、血すらも強靭にしたのだろう。現代医学の観点では恵まれぬ子を産む可能性が高かったその歪んだ営みは、しかし、英雄の領域に至る圧倒的強者を産む可能性の方が高く、故にこの里は大陸中央部の中では比較的安全で且つ、人類の生存圏に近い場所に位置するとはいえ、今まで生き残ってきた。
それでも五百年の時と、その歪んだ営みによる皺寄せか、ここ十数年、隠れ里に神の血を強く引く者は産まれなかった。昔なら、逸脱者と呼ばれる領域の存在もいたが、今では英雄の領域に至った者が数人いる程度。
里の者達は感じていた。五百年の時がもしや血を薄めてしまったのではと。
そんな中だった。ある日、王の血を最も強く引くかのような子が産まれた。かの王の如き新雪のような白髪と白い肌を持ち、深い赤色の目をした彼の誕生を里の者たちは歓迎した。
始めは英雄たるを期待された彼は、しかし、弱冠10の齢ながら古き王を彷彿とさせる圧倒的な、人の強さを逸脱したその有り様と、隠れ里始まって以来のその強さから、この子こそ王の残された言葉の指す、強き王ではと里の者は噂した。
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「そうして、他種族を殲滅する英雄になるのを期待されてるのが俺って訳」
俺の名前はヤマダ・アーヴィンジャー。この激ヤバな世界に転生させられた哀れなオバロファンだ。
俺の前世はまあ普通だから飛ばすとしよう、強いて言うなら趣味がネット小説を読み漁る事ぐらいだ。
さて、そんな俺は死んだ後に転生モノの小説の際によくある神様みたいな奴と会話をした。
そして、そこで神様から言われたのだ。『オマエ、この企画の選択内容全部Sで転生ね』と。
そこで強制的にオバロ世界に転生である。それで‥‥あー?企画の内容がわかんない?
まあ簡単に説明すると、オーバーロードの作者、丸山くがね様がある企画をやった。それは
『あなたの分身がオーバーロード世界にいたら』
って奴だ。企画ではS、A、B、C、D、Eの六枚のカードが与えられる。左に行くほど価値が高く、もちろんカードは使い切りだ。そこで六つの選択が与えられる。
選択内容は限界レベル、出身、能力値、特殊アイテム、タレント、コネクション。
それぞれ、選択内容から能力値でSを選ぶと天才になったり、逆に出身でEを選ぶと産まれが奴隷になったり。まあ六枚のカードを割り振って、自分のオーバーロードでの分身を作ってみよう。みたいな企画だ。
こういうのは、配られたカードを考えながらあーでもない、こーでもないって選ぶのが醍醐味だと俺は思う。しかし、あの神様名乗るクソ野郎はあろうことか『全部Sにしてやるから感謝しろ』とかほざきやがった。こっちに選ばせろ!
ごめん、嘘。オバロ世界は人類が本当にキツい世界だ。そんな世界に転生するのだから一部を除いてSは非常に嬉しい。神に感謝。そして、選択内容のSランクはどれも強力だ。
例えば限界レベル。なんとSだと限界レベルが41だ。‥もし低いと思った貴方は感覚が麻痺してる。転移してくるプレイヤーがみんなレベル100だから感覚がバグるが、そもそも現地人で限界レベル41なんて強すぎる。
なんせあの序盤でイキリ倒してたクレマンティーヌ様やみんな大好きデスナイト君ですらレベルでは30前後辺り。いい感じの比較対象は魔法キチのフールーダ爺さんだろう。あの人は確か推定でレベル40以下だった‥はず。
そして魔法キチガイ爺さんはキチガイ部分ばかり目を惹くが、現地人にしてはかなりの強者。原作のセリフでも、フールーダの存在を仄めかすだけで他国を威圧できるとかあった。つまり、俺はその領域まで強くなれると確定している。俺最強!ガハハ!
え?プレイヤー?真なる竜王?
ハハッ、申し訳ないが人間は、人型の神やドラゴン名乗ってるだけの神話生物に勝てるようにできてないんだ。
まあ、そんな超越者たち以外の現実的な強者と戦う可能性を考えても、限界レベル41というのは安心できるものではない。例えばイビルアイ辺りの強さと戦闘が成立するかも怪しいレベルな事を考えれば、決して油断はできない。
この里の立地から、現実的な脅威を考えても大陸中央部にある亜人種の国にいるであろう、逸脱者クラスの個体が襲ってきたら確実に勝てるかはわからない。
そう考えると限界レベル41というのは丁度良い。雑魚相手は安心して無双できる、英雄の領域にいる存在には普通に勝てる、同格の逸脱者は相性次第。
それ以上の、人間の逸脱者程度では勝てない存在は考慮する必要がない。なんせ勝てない存在に勝つ可能性を考えるのは文字通り無意味だからだ。
まあ俺は、里の人達からそのレベルの存在を倒して、人類を家畜や奴隷にする穢れた(笑)亜人種や異業種から解放する事を求められてるんですけどね?
‥いや、無理だって。種族スペック違い過ぎるって。真なる竜王とか100%無理じゃん。亜人種の英雄クラスとかならいけるけどさ。大人しくプレイヤーの降臨待つか、法国行こうぜって話だ。俺ら八欲王の血引いてるけど。
まあ、こんな感じだ。Sでこれだ。そもそも人類が弱い世界だから仕方ないんだがな。しかし!俺は全項目Sのチート転生者!まだまだ強いところはいっぱいある。
そうだな、限界レベルも含めた全六項目の中で一番Sの性能が高いのはどれだと思う?名称だけ見た直感で考えてくれても、色々考えてくれてもいい。
限界レベル、出身、能力値、特殊アイテム、タレント、コネクション。
今説明した限界レベルだと思うか?それとも強さなんて関係なくコネクション?はたまた特殊性抜群のタレント?もしかして強力なアイテム?
個人的に全部違う。この六項目の中で一番Sの性能が高いのは能力値だ。もし、俺に配られたカードが全部Sではなく、元ネタ通りちゃんとS、A、B、C、D、Eでも、俺は能力値Sを選択すると思う程度にはこれしかない。
なんで能力値なのかだが、能力値Sを選択すると天才になれる。しかも、エルフの奴隷虐めてる自称天才なんてレベルじゃない。なんとナザリックや竜王といった高位の存在から
『まず間違いなく一度は勧誘される。敗北したとしても命を助けられ、もう一度勧誘される』
ほどの天才になる。どんな天才なんだって話だ。
原作じゃあラナー様辺りが近い比較例だと思うが、別にラナーがナザリックに敗北して命を助けられ、もう一度勧誘される程の天才かと言われたら疑問が残る。そう考えると、この項目のSの異常さがわかると思う。
あのナザリックに一度は敵対して、それでも仲間になるかと勧誘される程の才能。それが手に入る。
あーあと、天才だから成長速度とか、レベルアップ時の能力値の上昇量もついでに上がる。どのぐらいの上昇量かと言うと、限界レベルに+50%して良い程度に上がる。
だから、俺が限界まで強くなった時の実質的な能力値のレベルは41を1.5倍して、だいたいレベル61相当になる。
勿論、この世界でレベル差はかなりの影響を与えるから、能力値がレベル61相当とはいえ、レベル差の影響でレベル60の奴に勝てるとは思えないが、それでも能力値が1.5倍は破格だろう。
実質限界レベル1.5倍に超越者から勧誘される程の才能という効果が、全て一つの項目に付いてるいるのは、流石に盛りすぎだ。
一応、転生してから頭の回転などは前世より早くなったと感じる。だが、ラナー様ほど頭良くないし、なんか天才になったと言われてもイマイチ実感が湧かない。
それでも、もしナザリックが来ても、命を助けられて勧誘される事が保証されてるのは、このオバロの世界に転生する上でかなり心の安寧に寄与した。
これがなかったら最悪、
ナザリック「お前転生者だな!魔法『記憶操作』発動!死!」って結末も余裕であり得たし、他にも、真なる竜王「竜帝の汚物か?汚物っぽいしキレイにしたろ、〈始原の魔法〉発動!死!」みたいなのもあり得た。オバロの世界は、超越者達の気紛れで余裕で死ねる世界だ。だからこそ、絶対安全とは言えないが、能力値Sの保証は安心できる。
さて、こうして選択内容のSがかなり強い事をわかって貰えたのではないだろうか。
現状わかっているだけでも、俺は実質61レベル相当まで強くなる。流石にこれ以上強くならないだろと考える人もいるだろうが、残念だったな!まだ四項目残っている。
次はタレントのSついて紹介しよう。タレントのSだが、端的に言うと『やばい』タレントを獲得するらしい。なんじゃそりゃと思うが、そうサイトに書いてるんだからしょうがない。
具体的な効果はゲーム的な例だが、100%の耐性相当の効果だそうだ。使用回数に制限や条件がついてるなら、一日一回だけ第八位階魔法や、一週間に一回だけ第十位階魔法を行使可能なレベルに相当する効果になるらしい。
ちなみに、原作に出てる例で比較するならンフィーレアのタレントはSよりだがAで、イビルアイがEXらしい。つまり俺のタレントは大雑把だがンフィーレアの「ありとあらゆるマジックアイテムを使用可能」以上でイビルアイの「受けたり、見たりしたどのような魔法でも1つだけストックし、自分の魔法のように発動させることができる」以下の効果になる。
一応、魔法で確認したりはしていないが、俺のタレントの能力これじゃね?みたいなのは、なんとなくわかっている。
ズバリ「あらゆる武技を適性を無視して発動可能」だ。
というのも、この世界に転生し、強くなるための鍛錬の最中にふとガゼフやブレインの武技を形だけ真似しようとした時だ。最初は軽い気持ちで、それこそ傘で牙突するみたいな気持ちだった。でも、やってみたらなんか〈領域〉とか〈六光連斬〉とかできたのだ。
最初は怖かった。カメハメ波打とうとして、本当に打てたみたいなもんだ。ただ、色々試してわかった。多分俺はタレントの影響でどんな武技でも使えるのだと。試しにやったら〈超能力向上〉や〈不落要塞〉なんて一発で使えた。他の武技も思いつく限り全て使えた。
正直このタレントはかなり有り難かった。なんせ複数の武技を使った複合技なら少し格上ぐらいの相手とも戦える。英雄の領域、つまり30レベル超えてたぐらいのブレインが、40レベルだと思われるような攻撃を武技によって行使している事からわかる通り、武技は戦闘に置いて結構重要だ。
そんな武技を思いつく限りだいたい使えるのは、非常に強力だろう。
「ヤマダ様、そろそろ狩りのお時間です」
そんな考え事をしていると、里の人が呼びに来た。さて、他の項目のSも紹介したい所だが、狩りをしないと俺の昼飯が無くなってしまう。
愛用している魔法武器の刀を装備して、部屋を出た。