ウィンターサマー育成日記   作:全智一皆

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 …月…日

 今日から日記を描く事にした。何故かと言われると、まぁ少々、いや、かなり複雑な話になる。正直、自分でも未だに困惑している。

 今日は酷い雨だった。しがない工場勤務の俺は、今日も今日とて極寒に反抗する様に熱心に仕事をしていた。こんな時期なのもあって、しっかり残業までしてだ。

 そんか帰りの途中に、二人の子供がびしょ濡れで歩いているのを見た。女の子と男の子だ。まだまだ、ずっと幼い子供だった。

 どうしたの?と尋ねてみても、何も答えてはくれなかった。けど、その女の子の目からは強い怪訝が零れていた。多分、捨て子だろう。じゃなきゃあんな目はしない。

 

 見なかった振りなんて出来る訳もなく、なんとか女の子を説得して、男の子と一緒に家へと連れ帰った。本当に疑い深い子だ。あの歳にしては、精神が発達し過ぎな気もしたけど……きっと、優しい子なんだろう。

 だから、弟であろう男の子の為に疑ってたんだと思うと、寧ろ尊敬の念が湧いてくるばかりだった。

 

 

 …月♪日

 あんな雨に打たれていたからか、女の子の方が風邪を引いてしまった。男の子の方は熱は無かったけど、少しぼーっとしていた。

 会社には暫く休むと連絡を入れた。社長に子供を拾ったことを話したら、快く受け入れてくれた。ありがとうございます、社長。ほんとすいません。

 ただ、病院に連れて行こうとしたけど、女の子の方は頑なに行こうとしてくれなかった。その否定の様子から、ただ病院が怖いだけじゃないって事は察せた。

 虐待の末に捨てられたのかもしれない。可哀想に……いったい、どんな精神をしていればこんなに家族思いの子を虐待しようなんて思うのか。俺には分からないし、分かりたくもないなと思った。

 とは言え、だからって放置しておく訳にはいかない。なので、俺は躊躇なく頭を下げてお願いした。子供が苦しんでるんだ、それを放置するなんて出来ない。プライドなんてクソ喰らえ。

 

 俺の行動に引いたのか、はたまた認識を改めてくれたのか、女の子は頷いてくれた。良かった、頭下げた甲斐があった。

 病院で検査してもらうと、ただの風邪だった。1週間もすれば治るらしい。良かった。

 

 

 …月♡日

 今日も女の子の方は気分が良くないみたいだ。まぁ、薬を処方されてそんなに経ってないから、当然と言えば当然なんだけど。

 取り敢えず、お粥を作ってみた。まぁ、お粥と言うよりは雑炊っぽくなってしまったけど。

 ちょっと躊躇いながらも、女の子は1口食べて、美味しいって言ってくれた。素直に嬉しかった。自分の作ったもので、美味しいと言われるのがこんなに嬉しいものなのかと、軽く感動した。

 すると、男の子も興味を示していた。女の子が食べさせてあげて、美味しいと笑ってくれた。なんだこの子は、天使か? そりゃ守りたくもなる。全面的に同意だ。

 

 寝る前に、女の子がありがとうと言ってくれた。少しは心を開いてくれたのかな? これも、素直に嬉しかった。

 

 

 …月♥日

 女の子、完全復活。血色も良くなって、完全に元気になった。良かった良かった。

 ありがとうございますって感謝された。別に気にしなくていいのに。子供を助けるなんて、当然の事なんだから。

 まぁ、その女の子が治ったと思ったら男の子の方が風邪を引いてしまったんだけど。多分移っちゃったんだろうな。スプーンは別々にしておけばよかったな、と反省した。

 念の為、という事で男の子の分も処方してくれていて助かった。病院の先生に感謝だ。

 またお粥を作ってあげようと思っていると、女の子が手伝うと言ってきた。復活したとはいえ、まだ小さい子供には火は危ない…とは思ったが、その方がこの子も安心だろうと思い、手伝ってもらった。

 完全に信頼は出来ない大人が一人で作るより、自分の目が届く範囲であれば、男の子に危害が無いって確信できるだろうし。

 

 本当に、良いお姉ちゃんだ。多分、お姉ちゃんだ。きっと。

 

 

 …月@日

 流石に連続では休めず、今日は会社に行った。正直、かなり不安ではあったけど、まだ男の子の方も完全には治り切っていないから、大丈夫だろうと信じることにした。

 社長や常務からは、子供は大丈夫か?って心配してもらった。あと、相談所には連絡したかって聞かれた。

 うーん、どうしたものか。普通ならそうするのがセオリーなんだろうけど……如何せん、そういう普通が通用する様な境遇に居る気がしないんだよな、あの子たち。

 女の子の方、やけに力強かったし。あの小ささに宿る力じゃない。やっぱり、特殊な境遇にあるんだと思う。

 仕事中もそればっかりで、気が付いたら終わってた。勿論、定時で帰った。心配だし。

 

 帰宅すると、女の子の方がおかえりなさいとぎこちなく言ってくれた。居なくなっていなくて安心したと共に、ちょこっと嬉しくなった。……事案にならないよな、これ?

 

 

 …月#日

 男の子が寝てる時に、思い切って親の事を聞いてみた。女の子が言うには、親は居ないとの事だ。そして、捨てられたのではなく、逃げてきたのだと。

 やはり複雑な事情があったらしい。正直、当たって欲しくはなかったんだけどな……思わず、泣きそうになった。

 何とか涙を堪えながら、男の子の方が治った後にどうするつもりなのかを尋ねた。ついでに、君が良ければ住んでくれても構わない、とも。

 だって心配だし。多分この子は、色々と無茶をしてしまうだろうし。弟であろう男の子を守らなきゃ、という考えでいっぱいだろうから。

 女の子は酷く悩んでいた。すぐに答えなくても大丈夫だと言うと、少し考えたいと返された。まぁ、そうなるよな。

 

 信用出来ないよな、大人のこと。そういう環境の中に居たんだろうし。でも、だから尚のこと……見捨てなくないんだよなぁ。

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