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…月&日
つかれた。すっごくつかれた。
今日はすごくつかれた。工場は環境的に夏が地獄だが、冬は仕事の量が多いという意味では夏以上の地獄だ。
しがない溶接職人である俺とて例外はなく、普段の倍の残業だった。基本立ち仕事なのもあって、これがキツイ。務め始めて3年になるが、寒い環境の中での立ち仕事はわりと足にくる。
帰りも遅くなってしまったので、今日は弁当を買って帰った。2人の好きな物が分からなかったから、無難に唐揚げにした。
二人はちょこっと微妙そうだった。美味しくなかったかなと思っていたら、男の子の方が「まえのがいい!」って言ってくれた。女の子の方も、頷いてくれた。やはり天使だ、この子達は。つい撫でてしまった。反省。
…月*日
休みだー! 土曜出勤の無い休日程嬉しいもんはないぞー!
基本的に休日はドラマかアニメかゲームかの三択に限られるのが俺の日常。だが、この子達が居る以上はそうもいくまいというのが現実である。
何処か楽しい場所に連れて行ってあげたいけど、男の子の方は少し前まで風邪引いてたからな。ちょっと悩ましい。
試しに何処か行きたい場所はないか聞いてみたけど、特に無いと言われてしまった。というか、そもそもどんな場所があるのかも知らないと。
失言しちゃったな、と反省すると共に、それならとショッピングに出掛けた。二人の服も買わないとだったし、丁度良いよな。
ただ、服屋に出向いてはみたものの、男の子も女の子も、服を見てもよく分かってない様だった。どこまで情報を遮られて生活してきたのだろう。また泣きそうになってしまった。
結局、俺が二人の服を選んだ。これからは二人が興味を示せる様なものを見せたり、与えたりした方が良いのかもしれない。
…月$日
朝から、女の子が千冬と一夏と言ってきた。織斑千冬と織斑一夏。それが、二人の名前らしい。
千冬ちゃんと一夏くんか。良い名前だね、と言うと、二人はこてんと首を傾げていた。そうなの?と聞かれたら、そうだよと教えると、一夏くんは喜んでくれた。かわいい。
千冬ちゃんはよく分からないままだったけど、俺がすっごく可愛いよと言うと、少し照れ臭そうにしていた。二人揃って可愛過ぎるだろ。益々この2人を捨てた親が理解出来なくなってきた。
織斑という名前も含めて、良い名前だと俺は思う。斑を織る―――入り乱れた違った色を一つに組み合わせるって意味になるのかな? 千の冬を彩って、一つの夏になる―――うん、やっぱり素敵だと俺は思う。
千冬ちゃんが名前を教えてくれたってことは、それなりに信頼されたと思って良いのかな? そうだったら、嬉しいな。
名前を教えてくれたから、今日はちょっと晩御飯を豪華にした。二人の笑顔が眩しい。
…月¥日
社長から、養子縁組に関する書類を貰ってしまった。あの、社長……気持ちはありがたいんですけど流石に気が早くないですか?
しかも、普通の養子縁組のやつではなく特別養子縁組の。これって配偶者が居ないとダメで、なんなら子供も15歳くらいじゃないと出来ない筈なんですけど。
それを指摘したら、社長が「こういう時の為のコネだよ」と笑ってはぐらかされた。いやコネ云々の話じゃないですよねそれ。法律に関わりますよ。ちょっと社長が怖くなった。
受け取りはしたけど、流石にこれは今の段階じゃ話せないよな。いきなりは二人も怖いだろうし。
とは言え……この子達を何処かに通わせてあげる為には、必要な条件ではあるのか。出来ることなら、学校には通わせてあげたいけど…そこは、二人の意思を尊重しないとだよな。
…月’日
千冬ちゃんが「わたしも働きたい」と言い出した。思わず水を噴き出してしまい、心配させてしまった。申し訳ない。
どうしてか聞くと、住まわせてもらっているのに何もしていないのが嫌との事だった。本当に真面目で優しい子だなと思いつつも、流石に難しい話だ。
だって千冬ちゃんはまだ子供だし、アルバイトが出来る年齢でもない。それに学校だって通ってないんだ。雇ってくれる場所なんてある訳もない。
けどなぁ……千冬ちゃん的には、やっぱり自分で何かする方が安心なんだろうな。その気持ちは汲んであげたいけど…如何せん条件が厳し過ぎる。
思い切って、社長に相談してみた。そしたら、
「取り敢えず中学校まで通わせてみるのはどう? 千冬ちゃんの気持ちを汲むという前提なら、中学まで上がったら私の知人に話を付けれるよ」
と言ってくれた。本当に貴方は何者なんですか社長。ちょっと本当に怖いです。
千冬ちゃんにその話をすると、分かったと納得してもらえた。良かった……本当に社長には頭が上がりません。
あと、その話を聞いていたのか、一夏くんも学校に行ってみたいと言い出してくれた。これは嬉しい誤算だ。でも……そうなると、本気であの書類のことを話さないといけなくなるなぁ。大丈夫かなぁ……結構不安だ。
…月'日
しょるいがじゅりされた。しゃちょうってすげぇ……
不肖、私こと
・鶴巻秋二
今年で21歳になり、そして長女と長男の子持ちとなったヤングファザー。町の小さな溶接工場に新卒で勤務しており、今年で3年目。かなり優秀。
・織斑千冬
まだ小学校高学年くらいの頃のブリュンヒルデ。体格的にまだ幼いが、腕相撲なら秋二を瞬殺できる人類最強の少女。特別養子縁組の手続きによって、戸籍上は鶴巻千冬となっている。
ただ、嫌悪しつつあった自分の名前に対して『素敵で可愛い名前だね』と言ってくれた秋二の影響もあり、織斑のままで通している。
・織斑一夏
まだショタショタのショタなワンサマー。我らの天使いちかくん。特別養子縁組の手続きにより、戸籍上は鶴巻一夏となっているが、千冬と同じく秋二の影響によって織斑一夏という名前を気に入っている。
大変可愛らしい天使が、いつかタラシになるとは秋二も予想していなかった。
・社長
秋二が勤務している工場の社長。普段から穏やかな雰囲気を絶やさず、社員達にも優しい事から自社だけでなく他社からも密かな人気がある若社長。
しかし国家法律関連の手続きを大したことではないと平然と済ませたり、『仕事やっといたよ』のテンションで入学手続き諸々を終わらせるなど、何かと只者ではない所業をやってのける、人脈が異常に広くてちょっと怖い人。