若葉さんとの別れから1年が経ちます。
私は14歳、いえ、正確には10歳で産まれたので4歳になりました。
身長も少し伸びましたし、網玉さんに教えてもらったおかげで授業にも慣れてきました。
……もう先生に答えを聞いたりはしません。
4歳だから仕方なかったんです。
一年で色んなことがありました。
私は戸籍が無いので生活の問題に直面し、殺戮の女神さんに戸籍を作ってもらいました。
殺戮の女神さんの法知識が如何なく発揮され、順調に手続きが進みます。
けど、その過程で誰が保護者になるかで大喧嘩し始めて、最終的には成人で就職している三上さんが私の保護者になりました。
未成年の網玉さんと手続きをした殺戮の女神さんがずっと文句を言っていたので笑ってしまいました。
学校に通い始めました。
最初は、「二人の負担になりますし、行かなくていい」って遠慮したんです。
けど、網玉さんとラウさんが「たくさんの人と触れ合ってほしい」とお願いしくれたので、学校に行く決意をしました。
最初は私の常識の無さが露呈したり、触手を出してしまったりと失敗ばかりだったんですが、今ではクラスの人たちが受け入れてくれたので、楽しく学校に通ってます。
accelerateの解除で私の中にいた神様……イス人の方の記憶を見ました。
皆が見守ってくれる中、「ちちんぷいぷい」と唱え、遥か彼方の宇宙の記憶と二人の気持ちを知りました。
イス人の方にずっと助けてもらっていたこと、若葉さんからの愛を再確認したことはずっと忘れません。
私は幸せに生きていく、とこの日に誓いました。
……若葉さんの体が息を引き取りました。
静かな病室のベットの上、若葉さんの体はふと起きてきそうなほどあの日のまま綺麗で、触れると氷のように冷たい。
殺戮の女神さんによると若葉さんの体は普通の植物状態の人より衰弱が速かったそうです。
授業中、三上さんから呼吸が浅いと連絡が入ってラウさんと一緒に病室へ飛び込んだときには、もう息がありませんでした。
すでに病室にいた網玉さんは泣いていましたが、私はなんだか悲しくありませんでした。
「若葉さんは私の中にいます」と言うと私を心配していたみなさんは驚いた顔をした後笑ってくれました。
網玉さんも「そうだな」と涙を拭きながら笑って若葉さんを見送ってくれました。
そんな目まぐるしい一年を思い出しながら、若葉さんの遺骨が埋まっている、決着をつけたあの丘に一周忌で来ている。
2月の冷たい晴れた空、ぽつぽつと花が咲く丘に作った若葉さんのお墓に白い菊の花を添えた。
「やっぱり絵になるいい景色だな。若葉もここならゆっくり眠れるだろ」
「そうだな。若葉、こっちは元気だ。そっちは元気にやってるか?」
喪服を着た2人が、若葉さんのお墓に話しかけながら、ラウさんはマリーゴールドを、網玉さんはハルジオンを添える。
「案外草葉の陰で泣いてるかもな。冰鞠の成長に感動して、な」
「医院長ノンデリですよ。けど僕は、案外笑ってるんじゃないかと思います」
スーツを着た2人が網玉さんに話しかけながら、殺戮の女神さんはたばこを、三上さんは白百合を添える。
「私も笑ってると思うぞ。しかしなぁ若葉~聞いてくれよ~最近冰鞠がさぁ——」
網玉さんが笑って答える。
そんなやり取りをぼーっと眺めながら私は一年前のことを思い出していた。
「へ~そんなことが——っと嬢ちゃん、何か考え事か?」
お酒をお墓にかけた後、いつもと変わらない格好のゴーストハスターさんが喋らない私に声をかけてくれた。
「えっと、ここで若葉さんからの手紙を読んだことを思い出して……少し寂しくなってしまって……」
最後の手紙の中にあった「強く生きて、そして幸せになってください」「心から愛しています」。
あの日、若葉さんからの熱と皆の言葉をもらい、若葉さんが死んだことを受け入れ、忘れもしないと決めた。
けど若葉さんとの思い出が頭に浮かび、そのたびに寂しさが胸を締め付ける。
そんな気持ちを払拭するように言葉を発した。
「ですが皆さんといて……」
……話せなくなってしまった。
この気持ちはずっと無くならないものだと、心の穴は埋まることがないと思ってしまった。
「……寂しいときは寂しいって言っていいんじゃないか」
「若葉も冰鞠に寂しさを我慢なんてしてほしくないだろうしな。」
網玉さんとラウさんが声をかけてくれる。
「若葉もこの分だと冰鞠のそばで慌ててるんじゃないか」
「だからラウの言うとおり我慢せず吐き出してください」
殺戮の女神さんと三上さんが元気づけてくれる。
「大丈夫だ。嬢ちゃんは強い子だからその気持ちを背負っていけるさ」
ゴーストハスターさんが頭を優しくなでてくれる。
こんなにも私を思ってくれる人がいて、今度は胸がいっぱいになってしまう。
「あり、ありがとう、ございます」
涙まで出てきてしまった。
「おいゴーハスお前なに冰鞠の頭なでて泣かせてんだおおん!寒中水泳付き紐なしバンジーでもするか?」
「ハッハッハ。それならそうと早くいってくれ。ここに縄があるから手足を縛ろう」
「やれ」
「ちょ、あの、お願いします待ってください。待って、やめ、やめろー!!」
こんなにも暖かい人達がいて、こんなにも私を思ってくれている嬉しさ。
若葉さんもこの場所にいてほしかった寂しさ。
相反する気持ちと笑顔と涙でぐちゃぐちゃだ。
「少し落ち着いてください医院長。墓前ですよ」
「網玉もだ。正直冰鞠の頭をなでていたのは許せないが」
「ッハー!それを言ったらお前ら!この前手ぇ繋いでたじゃないか進展したのか!」
「なんだ、やっと進展したのか」
「なんで知って……!黙れ記憶を飛ばさないと蹴り落とすぞ」
「嬢ちゃんんんー!!頭触ったのは謝るから網玉様を説得してくれ!!」
若葉さん……会いたい。会いたいよ。
皆に声をかけようとして……だんだん意識が…………遠くなって………………