少しけだるさを感じながら目を開ける。
「んっ……」
意識がはっきりしてくるにつれて、直前の記憶を思い出す。
(えっと、若葉さんの体になって、パチュリーさんと会って、それから若葉さんと――)
「嬢ちゃん……?目ぇ覚めたか?」
起きた私にゴーストハスターさんが声をかけてくれたことで、ようやく自分の状況を理解し始める。
私は病室で眠っていたようだ。
「えっと……おはようございますゴーストハスターさん」
「おう、おはようさん。嬢ちゃんが起きてくれてよかった。とりあえず、外で話してるあいつら呼んでくるからちょっと待っててくれ」
そう言ってゴーストハスターさんは病室を飛び出して行ってしまった。
時計を見ると06:32、窓の外は暗いのでおそらく午後だろう。
そんな考察をしていると、ドアから皆がなだれ込んできた。
「冰鞠!起きてくれてよかった!私のことわかるか?私たちの知ってる冰鞠だよな?」
「冰鞠……!戻って来てくれて本当によかった……!」
「大丈夫です網玉さん。皆さんのことちゃんと分かりますよ。ご心配をおかけしました、ラウさん」
大切な二人の声に返事を返す。
「冰鞠、この指は何本に見える?」
「気持ち悪いとかない?大丈夫?」
「3本です、殺戮の女神さん。体調は悪くないです、三上さん」
心配してくれる二人に答える。
皆安堵の表情を浮かべているが、網玉さんはお化粧が落ちていたり、ラウさんは目元が腫れている。
とても心配させてしまったようで、申し訳なく思ってしまう。
「えっとその……説明しづらいんですけど、何が起きたかっていうのは分かりますか?」
「あぁ、異なる世界線の冰鞠と入れ替わってしまった、ってことは違う世界の冰鞠と話して理解してる。信じられない話だがな。そっちでは何があったんだ?」
網玉さんが私を起こしながら質問する。
「別の世界に行って若葉さんと会ってきたんです」
私がそう答えると皆表情を曇らせてしまう。
私は何か言ってはいけないことを言ってしまっただろうか。
「冰鞠、若葉が生きている世界に残りたかった――」
「そんなことはないです!」
網玉さんの言葉を遮る。
その言葉は否定しなきゃいけなかった。
「私は皆さんと幸せに生きていくって決めたんです。ずっと皆さんに助けてもらって私は生きています。皆さんがいるこの星じゃないと嫌なんです」
あっちの世界の私のように強くはないけれど自分の気持ちを言葉で伝えることはできる。
私の言葉に網玉さんが答えた。
「ありがとう、冰鞠。ちょっと弱気になってたみたいだ」
ようやくいつも通りの空気に戻ったところで、私は皆に提案する。
「とりあえず、おうちに帰りましょう。帰ってからあったことを話したいんです」
「あぁ……、そうだな冰鞠。帰ろう」
破顔した網玉さんが賛成した。
「冰鞠、ジャンパーと手袋だ」
「気が利くなラウ」
「途中でラーメン屋によろう。いろいろあって腹が減ったからな」
「医院長よく食べられますね……」
「さすがに俺でも今は食べれん」
神様が見させてくれた不思議な旅から現実へと帰る。
まだ肌を刺すような空気の外、暖かい居場所へ帰ってきたことに胸がほころぶ。
帰って来たんだから必ず言わなきゃ。
「皆さん」
少しだけ立ち止まって、みんなを呼ぶ。
「ただいま帰りました!」
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。