ポケモントリオン兵導入によるボーダー隊員の反応 作:ジャサス
原作の唐沢さん、本当にどうやって資金を調達してるんでしょうね?
※本文と後書きを訂正しました。
(根付視点)
先ほどラウンジに貼り出した『ポケモン人気ランキング in 三門』の投票結果。その前で嵐山くんたちが集まって話していた。
「よかったなガーディ!」
「俺にも撫でさせてや。しやしやっぱり強いなぁウインディ、これで三連覇やろ?」
「ファイアローは2位か、壁は高いな」
「最初に比べりゃ上がってきてんじゃねぇか」
ワイワイと盛り上がる彼らを微笑ましく感じる一方で、自分の口の端がやや下がっているのは自覚していた。こんな顔を子供達に見せるわけにはいかない。踵を返してメディア対策室に戻る。
周囲に人気が無くなったあたりで息を大きく吐き、気持ちを切り替えようとした。
三門市民を対象に行ったアンケート調査は今回で3回目。そしてその全てで、嵐山隊のファイアローは柿崎隊のウインディに勝てていなかった。
「ウインディが1位ってのがいいですね。嵐山隊のポケモンじゃないからこそ、市民の注目が分かりやすい」
「それは分かってはいるんですけどねぇ…」
本部での会議。珍しく城戸司令以外のメンバーが時間前に揃ったため雑談などをしていると、しばらくして人気ランキングの話になった。唐沢さんの言う通り、嵐山隊より露出回数が少ない柿崎隊のウインディが1位と言うことは、それだけ多くの三門市民がポケモンに、ひいてはボーダーに興味を持っている事を示していた。
開発室が考案したポケモントリオン兵は、ボーダー内部に限らず、広く好意的に受け入れられていた。ぬいぐるみの売上も好調。『ボーダーが開発した自立型サポートロボット』として、三門市内の病院や公共施設、県外のテーマパーク、果ては政府施設や官庁などでも活動している。ポケモントリオン兵のレンタル料は、無視できない利益を産んでいる。
ちなみに国外からも問い合わせも多い。ポケモンを欲しがっているというより、トリガー技術の解析が目的の可能性が高いが、『トリオン製品はトリガー以外では破壊不可能』の性質により、機密を守りながら貸し出すことができている。
製造コストは高いものの人手不足の解消にも一役買っており、隊員の心情的にも実務的にも、ポケモントリオン兵はボーダーにとって非常に重要な資産になっていた。
だが、私としては計算違いもいい所だった。
「まさかポケモンがここまで人気が出ると思ってなかったんですよ…」
「ははは」
「ワシもじゃ」
「便利だろうな、とは思いましたけどね」
導入当初は、ポケモントリオン兵がまさかここまでの一大コンテンツになるとは全く考えていなかったのだ。おそらく上層部のほとんど全員が同じ思いだろう…今の反応からして、唐沢さんは見抜いていたのかもしれないが。
市民受けはいいだろうとは思っていた。だから導入に積極的に賛成したし、メディアでその存在を広めもした。しかしポケモンはあくまでトリオン兵。正体を知った上で活用する隊員の反応は未知数だった。三輪くんのように強く拒絶する隊員が他にもいる可能性もあった。そうなれば、いかに便利であっても定着はしない。予備戦力、あるいは外部へのアピール手段の1つに留まる可能性が高いと踏んでいた。
だからまさか導入3日目にして東隊から猫用ベッドの購入費用の申請が来るとは思ってなかったし(経費では落ちなかった)、風間隊のカクレオンがペットフードを食べて不具合が出たという報告を聞くとも思ってなかった(ご褒美のつもりで食べさせたとのことだった)。
子供達は早々にポケモントリオン兵を仲間として受け入れ、かわいがり、連れ歩くようになったのだ。そうなるとポケモントリオン兵が市民の目に映る機会も増え、気がつけば固定ファンが付くほどに人気が出ていた。
「ここまで人気が出ると分かっていれば、もうちょっと何かできたんじゃないかと思ってましてね」
「何を言ってるんです。ポケモンへの反発の少なさは根付さんの働きも大きいんですよ。ファイアローにしたって、選定段階からずっと、嵐山達と何日もかけて話し合っていたでしょう」
「…ガーディ/ウインディは、嵐山隊のポケモンの最終候補だったな、そう言えば」
「あぁ、なるほど」
忍田本部長の言う通り、広報部隊である嵐山隊のポケモントリオン兵選出には私も大いに関わった。独立を決めていた柿崎くん以外の、つまり嵐山くん・佐鳥くん・時枝くん・綾辻くんの要望を聞き、市民受けや画面映えを考慮して、開発とも何度も調整を行った。
そうして最後に残った候補がファイアローとウインディで、私がファイアローに決めた。
「その2択でファイアローを選んだ決め手は何だったんです?」
「色味とサイズでした。ガーディもウインディも体毛がオレンジで、嵐山隊の隊服と合わなくて。あとは進化してしまうと大き過ぎて、同じ画面に入れた時に嵐山隊より目立ってしまうな、と」
「それでファイアローになったわけだ」
主役は嵐山隊で、ポケモンはおまけ。目立ちすぎないように、邪魔をしないように。ポケモントリオン兵企画が、どう転んでも大丈夫なように。もちろん戦力として活用はするが、ポジションとしてはマスコット。だからこそ比較的小さなファイアローを選んだ。
それはそれとして、ウインディは本当に悩んだ。毛量が多く、サイズの大きい犬型。安定して人気が出るデザインだ。騎乗可能なのも強みだった。嵐山隊と組み合わせという前提が無ければ、もっと悩む事になっていたと思う。
だから独立した柿崎くんが、ガーディ/ウインディを申請してきた時は嬉しかったのだ。広報部隊では難しくても、一般部隊の柿崎隊ならサイズは問題にならない。隊服との色味もバッチリ。普通に任務をしているだけで、隊の、ひいてはボーダーへの好感度が稼げそうだった。
嬉しそうにガーディをかかえる巴くんを見て、この隊はポケモントリオン兵と上手く付き合っていけるだろうと確信しできたのも大きい。柿崎くんとガーディ/ウインディの新たな門出を、私は心から祝福した。…まさかそこからファイアローが、ずっと人気で負け続けるとは思っていなかったが。
「ウインディが強いのはアレだ。川で溺れた酔っ払い助けて表彰されたからだろ。ニュースに取り上げられて知名度が上がったから」
「全国ニュースにもなりましたからね。あれで企業からの問い合わせも増えましたし」
「しかし柿崎は何と言うか…本当によくそう言う場面に出くわすと言うか…」
「柿崎くん、本人に自覚はありませんが、嵐山くんとは別方向のヒーロー気質ですからね。人目を集めやすい性質ですし、メディア対応に苦手意識がないなら、そのまま広報に携わってほしい人材なんですよ…」
導入当初、ポケモントリオン兵は技術面での注目度は高かったものの、市民からのポジティブな反応はまだ多くなかった。そんな中で、酔って川に転落した男を、帰宅途中の柿崎くんがウインディを使って救助するという事件がおきた。柿崎くんは警察に表彰され、その際にボーダー隊員である事とウインディのおかげで救助がかなった事が取り上げられて、一気に注目度と好感度を稼いだ。
それからも警戒区域に入り込んだ子どもをウインディの背に乗せて避難させたり(子どもは大喜びだった)、巴くんや照屋くんとガーディを連れて警戒区域の哨戒をしたり(散歩にしか見えない)、柿崎くんはポケモントリオン兵と真面目に任務をこなし続けた。ウインディは遠目にも目立つため、柿崎隊と仲睦まじく過ごすだけで、安定した人気とファン層を獲得していったのだ。
大きくて目立ちやすいウインディと、目立ちすぎないようにしたファイアロー。ポケモントリオン兵が受け入れられてからは、取材などでも積極的に出すようにしてきたが、初動の遅れと合わせて市民からの人気に差がついてしまっていた。
とは言え、だ。
「ボーダーとしては、問題は無いんですよ。ポケモントリオン兵は、トリオン兵と気付かれることなく運用できてますし、ポケモンにもボーダーそのものにも市民は好意的ですからね」
大きく息を吐きながら、整理するように言う。
そう、組織としては問題は何もないのだ。嵐山隊のポケモンが、私が選んだファイアローが1位でなくても、何も困らない。
ただ、私が悔しいだけなのだ。初動で出遅れた?見通しが甘かった?そんな事は理由にならない。
この私が、ボーダーメディア対策室長が、全力を尽くして選んだポケモンが1位を取れていないと言う事実がプライドを刺激する。
苦楽を共にするこのメンバーだ。私が悔しがっているのもバレている。隠しても仕方ないので、割り切って宣言してしまうことにした。
「ご安心を。業務に影響は出しませんし不正もしません。今まで通りにファイアローと嵐山隊とでお仕事させていただくだけですよ…それだけで十分です」
柿崎くんの事は応援しているし、ウインディにも恨みはないが、それはそれ。
ありがたいことに、回を重ねるごとにファイアローの人気ランキング順位は上がっている。地道に活動を続けていけば、人気1位は狙えるはずだ。それだけのポテンシャルがファイアローにあると、信じている。
次の企画を考えながら、ちょうどやってきた城戸司令を迎えた。
宇佐美「透明状態での戦闘訓練をすごく頑張ってたから、何かご褒美あげたいなって思って…」
歌川「ペットショップで買ってきました」
菊地原「トリオン兵だからいらないんじゃないかと思ったけどさ。食べれないなら食べないだろうし」
カクレオン「クエッ(訳:「食べるか?」って聞かれた。自分なら食べれると思った)」
同じような事例が頻発(牛乳、ササミ、骨ガム、餅)したため、ポケモントリオン兵用のオヤツが開発された。