ポケモントリオン兵導入によるボーダー隊員の反応   作:ジャサス

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 ポケモントリオン兵導入初期の一幕


第一期東隊のトリオン兵

 

(二宮視点)

 

「ただいま。ちょっと来てくれるか?」

 

 開発室に呼び出されていた東さんが戻って来た。手には小さな箱が握られている。

 

「それがポケモントリオン兵のボックス?思ったより小さいのね」

「ボックス内にトリオン兵が小型化して納められてるそうだ。俺たちの呼びかけに応じて飛び出してくるらしい。トリオン工学も奥が深いな」

 

 見た目はシンプルな、本当になんの飾り気も無い箱だ。とてもそんな超技術の結晶には見えない。ましてそんな技術を自分が使うことになるなんて、ネイバーによる侵攻以前には思いもしなかった。

 「持ってみるか」と渡されたボックスを、ためすがめつ眺めていると、後ろから三輪の不機嫌な声がした。

 

「ポケモンだかなんだかどうでもいいです。所詮トリオン兵でしょう。そんなもの、本当に使わないといけないんですか?」

「秀次」

 

 楽しげな加古とは違い、三輪の表情は険しい。忍田本部長からポケモントリオン兵の運用実験の話があった時からずっとこんな調子だった。

 

「ネイバーと戦うためにオレはボーダーにいるんです。なのにネイバーの技術を、トリオン兵を使うなんて…」

「あら、このトリオン兵は開発室で作ったものよ。実際に使えるかどうかはともかく、『ネイバーのもの』ではないわよ」

「…使えるかどうかを確かめるのが俺たちの役割だろう。使えなければ、それで終わりだ」

「二宮の言う通りだな。現状、人手は全く足りて無いし、使えるものはドンドン使わないとな」

「…」

 

 三輪が黙り込む。

 隊を組む事になってしばらく経つが、未だに三輪にどう接するべきか分からない。ネイバーへの敵意だけで生きている様な三輪をこのまま放置するべきではないとは思うが、俺にはどうにもとっかかりが掴めないでいた。

 

 仕切り直すように加古が声を上げた。

 

「それで、ウチにはどんな子が来たの?強い子だといいんだけど」

「実は俺もまだ見てないんだ。本格的に導入される時には、要望なんかを開発室に出して、オーダーメイドするようになるんじゃないかって話だな。とりあえず開けてみようか」

「…トリオンの充電が必要なんですよね?今日は午後から任務あるじゃないですか。任務のトリオン足りなくなったら本末転倒ですよ」

「実はここ数日、開発室に通って少しずつ充電してたんだ。だからすぐ出せるぞ」

 

 

「さぁ、出てこい!」

東さんの声に応じてボックスの上部が開き、中から一抱え程の黒い塊が飛び出して来る。

 

「にゃりん」

 

 体色は黒、左耳から桃色の飾りの様な毛が生えている。大きさは俺の身長の半分ほどだろうか。2本の後ろ足で直立し、両前足には鋭い鉤爪らしきものがついていた。

 

「猫か?でかいな」

「二足歩行してるんだが」

「猫だって立つわよ」

「…コイツ役に立つんですか?」

「さあ…?とりあえず、仕様書読むか」

 

ニューラ/マニューラ

・必要トリオン6

・運動機能特化型

・速力、跳躍力、静音性に優れる

 

仕様書にしてはシンプルすぎる。後で開発室に行って、もっと詳しい情報を聞いて来る必要があるかもしれない。

 

「これだけ?他は何か書いてないの?」

「無いな。えーと、ニューラ?」

「にゃ」

「お、返事したな。これからしばらく一緒にやってく東だ。よろしくな」

 

 戸惑う俺を気にせず、東さんがトリオン兵に話しかけている。挨拶されたトリオン兵は、東さんの手に頭を擦り付けた。…本当にトリオン兵か?

 

「かわいいじゃない!ねぇ、私も触っていいかしら?」

「にゃりり」

「いいの?ありがとう。ふふ、手触りがいいのね。温かい…」

「…そいつ、何の役にも立ちそうにないんですけど」

「かわいいからいいじゃない。猫だもの」

「トリオン兵だろう」

「二宮くん、うるさい。この子は猫よ。私がそう決めたの」

 

 嬉しそうにトリオン兵を撫でている加古とは逆に、もともと良くなかった三輪の機嫌は更に悪化した。これ以上無いほど、表情が歪んでいる。三輪に声をかけようかとも思ったが、これからしばらくこのトリオン兵と活動するのだし、コミュニケーションはとっておくべきだろう。とりあえず、トリオン兵の背を撫でてみた。柔らかい。トリオン兵も気持ちよさそうだ。

 

「おい、その辺にしておけ。一旦ボックスに入れるからな」

「えー!出しておきましょうよ!もっと撫でたいし」

「忍田本部長の話を聞いてなかったのか?未進化状態でも出しておけばトリオンを多少なりとも消費するんだ。トリオン兵として運用する時以外はボックスに収納しておくべきだろう」

「…二宮くん、あなたまさか本当にこの子を戦わせるつもりなの?どう見ても猫よ、戦えないわよこの子」

 

 加古に言われて言葉に詰まった。東さんも、何とも言えない顔をしている。コイツは正直に言って、ちょっと変わった猫にしか見えない。鉤爪を見る限り殺傷力はありそうだが、戦えるのかと言われると何とも言えない。進化、とやらをしたら変わるんだろうか?

 そもそも猫に訓練なんてできるのか?犬じゃないんだぞ?まずトリオン兵の訓練って、何をするべきなんだ?

 

「…もうすぐ月見も来そうだし、とりあえず今日の任務中はボックスを月見に預ける。コイツの運用についてはゆっくり考えるとしよう」

 

 東さんが言われて、加古は渋々トリオン兵から手を離した。…加古は猫としてかわいがる気しかなさそうだし、三輪は近づくのすら嫌そうだ。訓練をするなら、俺と東さんが中心になるだろう。

 とりあえず、猫の飼い方を調べて、家にあったクッションでも持って来ておこう。例え使うことが無いとしても、寝床があって嫌がる生き物はいないはずだ。

 

 

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