ポケモントリオン兵導入によるボーダー隊員の反応   作:ジャサス

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呼び方について
・ポケモントリオン兵導入初期は、「トリオン兵」とか「ポケモントリオン兵」とか呼ばれていました
・原作の頃には、開発室と上層部意外のほとんどの隊員が「ポケモン」呼びです
・単純に「ポケモン」の方が呼びやすいし、仲間を「トリオン兵」と呼びたがらない隊員も多くいます



三輪隊の猫

 

「オレらがニューラに舐められてんじゃね?」

 

 陽介の言葉に場が一瞬静まりかえった。

 

(三輪視点)

 

 その日は、ラウンジに同学年の戦闘員がたむろっていた。きっかけはそんなに大した事でもない。陽介の宿題の手伝いだとか、人を待っていただとか、それぞれバラバラの理由でラウンジに来ていて、気がつけば同学年の男連中が何となく集まっていただけ。もちろん全員が揃ってるわけでもない。出水は隊室の掃除にかかり切りらしいし、他にも何人かいない奴もいた。

 

 ちょうど陽介の宿題にメドが立ち、一息ついた時だった。ここにいなかった同学年の内の2人、若村と三浦が紙袋を抱えて寄って来た。オレ達が集まっているのを見て、気になったらしい。

 

「お疲れ。なんかあったの?皆集まってるけど」

「お疲れー。いや、何もねーよ。オレが宿題してたら、なんとなーく集まっちまっただけ」

「ならいいか。オレらがオヤツ貰ってきてる間に、なんかあったのかと思って焦った」

「それ全部オヤツなん?」

 

 オヤツ、正式名称は『ポケモントリオン兵専用訓練報酬タブレット』

 トリオンを補給されることで動くポケモンに飲食は必要ないのだが、各隊からの強い要望を受けて開発室が作成したものである。名前の通り、ポケモントリオン兵の訓練での『ご褒美』が本来の使用目的だが…通称が『オヤツ』の時点で分かるだろう。ポケモンのために各隊室に常備されるようになっている。

 

「いやー。チョロネコが隠してたオヤツ、全部食べちゃってさ…」

「もう今月3回目だ…葉子は『いいじゃない、猫ってそんなもんなんでしょ』としか言わないし。開発室の人、絶対『またか』って思ってるぜ」

 

 とても身に覚えのある悩みだった。俺も昨日、月見さんに頼まれて開発室までオヤツを取りに行っていた。

 しかしどうやら盗み食いが起きるのは少数派だったらしい。辻や隠岐は驚いたような顔をしている。それを見た若村は急に不安になったらしく俺に話を振ってきた。

 

「え、まさかチョロネコだけか?三輪の所はどうなんだ?」

「いや、ニューラもよくやる。昨日もやられたし、たぶん開発室には俺の隊も『またか』って思われてるだろうな」

「よかった、いや盗み食いされるのはよくはないけど」

 

「少なくもデルビルが盗み食いしてるの、俺は見た事ないかな。ズバットは…初めは色々あったけど、今は全然」

「ウチの所もせんなぁ。イコさんが暇さえあればオヤツあげとるからかもしれんけど」

「ないない。盗み食いなんてしたら早紀ちゃんに無茶苦茶怒られるの分かってるみたいだし」

「だよなー」

「オレのとこも、オレが知ってる限りは無いはず」

 

 話を聞く限り、やはりオヤツを盗み食いするのは少数派らしい。

 思い当たってしまったらしい奈良坂がポツリと呟いた。

 

「躾の問題か?」

「バカ言うな。ニューラを育てたのは東さんと二宮さんだぞ。躾ができてないわけがない」

 

 ウチの隊のニューラは、俺が一から育てたポケモンじゃない。東隊が解散した時に引き継いだニューラだ。本当によく俺に着いてきてくれたと思う。

 今でこそ他隊のポケモンとも連携して戦えるようになったが、かつての俺のニューラへの態度は今考えればとても褒められたものではなかった。だからだろう、ある程度普通に接するようになってからも、ニューラが自分から俺に近づいてくることはなかった。

 少しずつ俺がニューラに慣れて、任務中に背中を任せられるようになって、だんだんニューラからも俺に触れるようになって。膝に乗ってきた時は、本当に嬉しかったのを憶えている。

 

「東隊にいた時より色々ちょっかいかけてくるようになったし、呼んでも来ない時もあるし、そこら辺で寝てたりすることもあるが、躾は問題ないはずなんだ。ニューラが俺に慣れた結果だと思う」

「猫型は猫っぽいってマジなんだ…」

「やっぱり猫ちゃんえぇなぁ」

「生駒隊のポケモン、ほぼぬいぐるみだもんな」

「もともと加古さんが完全に猫扱いしてたんだ。そのせいかちょっと気まぐれな所はあった。でも戦闘中の指示は問題なく聞く。ただ普段の過ごし方が少し、ワガママが増してるというか…」

 

「東隊にいた時はそうじゃなかったんだろ?ならさー」

 

 そして話は冒頭に戻る。

 全員から視線を向けられた陽介は、大して気にした様子もなくそのまま言葉を続けた。

 

「いや、オレは東隊の頃のニューラ知らないから『ニューラってこんな奴なんだな』って思ってたけどさ。前はそうじゃなかったんなら、ニューラはオレ達なら怒らないって思ってんじゃねーの?」

「陽介、ちょっと黙れ」

 

 とりあえず陽介を黙らせたが、どんな顔をすればいいのか分からない。ニューラが甘えて来るのは信頼の証だと、本当に思っていたのに。…だんだん腹が立ってきた。

 向かい合って座っていた辻が気まずげに目を逸らす。佐伯すら何を言うか悩んでるのが分かるし、若村と三浦は落ち込んでいる。…そうだな、盗み食いの原因が俺達がポケモンに舐められてることなら、香取隊もチョロネコに舐められてるって事になるからな。

 

 隊室に戻ったらニューラと話をして…いや違う。しっかり言って聞かせる必要がある。トリオン兵としての運用に問題はなくても、躾は大事だ。二宮さんから猫の飼い方の本も借りてこよう。あれを読んで東さんと二宮さんはニューラを躾けたと聞いてるし、俺にもできるはずだ…たぶん。

 

 東隊でニューラの訓練に全く関わらなかった事を改めて後悔しながら、二宮隊隊室に向かった。

 





・作中で集まっているのは、三輪、米屋、奈良坂、辻、隠岐、里見、佐伯、桃園、若村、三浦です
・デルビル/ヘルガーは二宮隊の所属でしたが、鳩原が近界に連れて行きました
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