美女と付き合いたいから強くなる 作:マンダ
キマイラを撃破した衝撃で気絶した俺は、どのくらいの時間が経ったのか、猛烈な激痛と共に目を覚ました。
(……痛……っ、うあぁぁ……ッ!! 骨が……砕けてる……ッ!!)
声にならない悲鳴が脳内を埋め尽くす。現代日本のぬるま湯で育った俺にとって、全身の骨折と火傷がもたらす地獄の激痛。指一本動かすことすらできず、俺はただ泥と血の中で縮こまることしかできない。
(……フン、ようやく目が覚めたか。この程度の痛みに怯えて倒れ込むとは、呆れた雑魚だな。声も出せんか)
脳内に直接響く、体内の『闇竜のラクリマ』の冷たい声。
(死にはせん。貴様の莫大な魔力が無意識に肉体を繋ぎ止めている。……だがな、小僧)
ラクリマの声が急に怪しく低くなった。
(ふむふむ……ほう、なるほど。脳内の大半がこの世界の女共か。……エルザ、ミラジェーン、ルーシィ。ククク、貴様、この惨状でまだそんな妄想をしているのか)
(脳内を見てるのかよ……悪趣味だな)
俺は痛みに耐えながら、心の中で惨めに呟くのが精一杯だった。
(くくく……、なんと言うかくだらねえな。そんなんで強くなれると思ってるのか? ここまで馬鹿だとは思わなかったぞ)
(……)
何も言い返せない。直前までの自分の無様な戦いざま――悲鳴を上げて逃げ惑い、泥を舐めてボコボコにされていた姿を思い返すと、ぐうの音も出なかった。
(そんな女達の事を考えるなんて貴様の脳内はどうかしてるな。無理無理、お前におとせるわけないだろ)
(……)
悔しい。だが、反論する言葉が何一つ浮かばない。ラクリマの言う通り、今の俺はただの口ほどにもない無能な雑魚だ。
(……ククク、ハハハハハッ!! 黙り込むか! だがな小僧、このままだと現実がどうなるか……見せてやろう)
ラクリマが邪悪に笑い、俺の意識に直接、ある「未来の光景」を強制的に流し込んできた。
『……失望したぞ。マルドギール並みの魔力などと嘘ばかりだな。……ただの臆病な雑魚か』
脳裏に浮かんだのは、腕を組み、冷ややかな蔑みの視線を向けるエルザの姿だった。
『ええ、本当に情けないわね。私たちに助けられるだけの子供なんて……ちょっと無理かな』
冷酷な笑みを浮かべ、見限るように背を向けるミラジェーン。
さらに情景は切り替わる。俺の目の前で、エルザはジェラールやナツと親しげに笑い合い、ミラジェーンはラクサスに寄り添いながら歩いていく。
『行くぞ、ジェラール』
『ああ、エルザ』
誰一人として、泥の中で立ち上がることもできず泣いている俺を振り返りもしない。ただのモブとして無視され、置いていかれる絶望の光景。
(……やめろ……ッ! やめてくれぇぇぇッ!!)
立ち上がることすらできない俺は、心の中で血を吐くような悲鳴をあげた。あまりの屈辱と絶望に、全身の血が逆流する。
そこで、ラクリマの声が脳内に力強く響き渡った。
(……悔しいだろ? 惨めだろ、小僧!)
(っ……!!)
(だが! お前が本気で修行すれば、あのドラグニルやフェルナンデスなんぞに負けない力を手に入れることができる! 違うか、小僧!?)
ラクリマの鼓舞に、俺の胸の奥で何かが弾けた。
(我が貴様を強くしてやる。我とて、宿主がこんな情けない物語の踏み台で終わるなんぞ反吐が出るからな。……いいか、お前が強くなれば――こうなる)
次の瞬間、脳内の光景が一変した。
まばゆい光の中、俺を取り囲んでいるのはエルザとミラジェーンだった。
エルザは愛おしそうに俺の手を強く握り締め、真っ直ぐな瞳でこちらを見つめている。
『お前は本当に強くなったな。……ふっ、私としたことが、お前の隣にいるとどうにも落ち着かん。……ずっと側にいてくれ』
ミラジェーンもまた、柔らかく俺のもう片方の手を包み込み、耳元で優しく微笑みかけてくる。
『ふふ、あなたの強さも、優しさも……全部大好きよ』
目の前に広がる、夢にまで見た至福の光景。ヒロインたちに囲まれ、心から頼られ、愛される未来。
(……あ…………っ!)
(やる……!! やるよ、ラクリマぁぁぁッ!! 修行でも何でもやってやる!! 俺は絶対に強くなって、あいつらを俺の虜にしてやるんだぁぁぁッ!!)
(クカカカカッ!! それでこそ我が宿主だ! その強欲と執念を絶対に忘れるなよ、小僧!!)
絶望から狂熱へ。
バカにされて言い返せなかった悔しさと煩悩をエンジンに変えた俺は、地獄のような全身の激痛を力ずくでねじ伏せ、泥まみれの手で固い地面を強く握りしめた。
巨躯のアイスウルフが放った一撃は、もはや攻撃というより天災だった。
ドガァァァァァンッ!!
「ぐ、あぁぁぁ……っ!?」
地面を叩き割った衝撃波だけで、俺の全身の骨が軋みを上げる。張り巡らせたはずの闇のバリアなどあっ気なく打ち砕かれ、俺の身体は弾丸と化して吹き飛ばされた。
ゴシャァンッ!!
背後の岩山へ激しく突っ込み、背骨が折れる凄まじい音が体内に響く。
(痛い……痛い痛い痛い! 無理だ無理無理無理! なんだよあのパワー……こんなの怪獣だろぉっ!)
激痛で泣き叫ぶ俺の脳内に、ラクリマが容赦なく「未来の光景」を叩き込んできた。
……そこは、まばゆい光が差し込む街の中。
血と泥にまみれて倒れている俺になど、一切目もくれず通り過ぎていくエルザとミラジェーン。
『行こう、ジェラール。今日の任務も忙しくなりそうだ』
『ああ、そうだなエルザ。君と一緒ならどんな仕事も楽しみだよ』
エルザは隣のジェラールと仲睦まじく言葉を交わし、一瞬たりともこちらを振り返らない。その横では、ミラジェーンがラクサスの腕にぴったりと寄り添っていた。
『ふふ、ラクサスったら相変わらず強引なんだから』
『ハッ、ついて来れるのはお前くらいだからな、ミラ』
そして通り過ぎざま、ジェラールとラクサスがちらりとこちらに視線を向け――蔑みと優越感に満ちた笑みを浮かべ、ニヤリと鼻で笑ってきた。
『……おい、足元に何か落ちてるぞ?』
『ただのゴミだろ。放置して行こうぜ』
(……な……っ、なんだよその顔はぁぁぁッ!!)
嘲笑う二人の顔と、俺を完全にスルーして去っていくヒロインたちの背中。激痛を忘れるほどのドロドロとした怒りが爆発する。
(ふざけるな……ふざけるなよぉぉぉッ!! あんな奴らに笑われて……黙っていられるかぁぁぁッ!!)
(クカカッ! ならば立ち上がれ! あの男共を叩き潰すのだろうがッ!!)
「おおあぁぁぁぁッ!!」
怒りの勢いのまま立ち上がった瞬間――頭上の空が丸ごと焼き尽くされた。
雲を突き破り、ドラゴンのような巨躯を誇る『爆炎ワイバーン』が急降下してくる。巨木並みの太さを誇る尻尾が、空気を爆音で切り裂きながら横一文字に叩きつけられた。
ガギィィィンッ!!
「ぬぐぁっ……!?」
交差させた両腕に闇の魔力を集めて防ごうとしたが、まるで巨大な隕石に衝突されたかのような異常な質量。力比べなんて次元ではない。桁違いのパワーに強引に押し切られ、俺の身体は地表を数十メートルもバウンドしながら弾き飛ばされた。
ドカァァァァァンッ!!
(あ……あぁぁ……腕が曲がってる……! 痛い、熱い、助けてぇぇぇ……!)
衝撃で右肘から先があり得ない方向に曲がり、激痛と恐怖で泥の中で虫のように丸まる。
だが、ラクリマは容赦なく、再び脳内へあの光景を叩き込んでくる。
目の前で楽しそうに笑い合うエルザたちと、俺を見下ろしてせせら笑うジェラールとラクサス。
(……見ろ小僧。お前がここで這いつくばっている間にも、あの男共はお前の憧れの女共と仲良く過ごし、お前をゴミのように嘲笑っているぞ)
(やめろ……やめろぉぉぉッ!!)
(悔しいだろ! 嫉妬で狂いそうだろう! ならば見せてやれ、お前が本気で修行すればあの男共なんぞ叩き潰せるということを! 強くなれば、あいつらはこうしてお前を愛してくれるのだ!!)
次の瞬間、脳内の光景が一変する。
まばゆい光の中、エルザが真っ赤な顔で俺の手を強く握り締め、ミラジェーンが優しく微笑みかけてくる「至福の未来」。
スルーされて男どもに笑われる屈辱か。それとも、地獄を生き抜いてヒロインたちを独占する未来か。
「見向きもされないで……笑われて終わってたまるかぁぁぁッ!!」
折れた腕の激痛を闇の魔力で強引に繋ぎ止め、俺は吐血しながら立ち上がった。
大地を粉砕して迫り来る怪物どもの群れに向かって、俺は狂気の叫びと共に突撃を開始した。
原作より活躍増やして欲しいヒロインは?
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エルザ
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ミラジェーン
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カグラ
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ルーシィ
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ユキノ