美女と付き合いたいから強くなる   作:マンダ

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魔人の共鳴

 

 

悪魔退治の依頼で訪れた村で、私は不思議な少年に出会った。

 

整った顔立ちをしているけれど、どこか落ち着いた雰囲気を纏っている。でも、佇まいやふとした仕草から、私より一つ年下――たぶん、15歳くらいだろうなとなんとなく察がついた。

 

こんな危険な悪魔が出る村で、夜に一人で徘徊しているもんだから放っておけなかった。私は妹や弟を守る『姉』としての習性か、護衛も兼ねてその少年に声をかけ、隣に腰を下ろして話をする事にしたんだ。

 

話を聞いてみると、どうやらこの少年も魔導士らしく、しかも私と同じ『闇属性』の魔法を使っているらしい。

 

それを聞いた瞬間、胸の奥で小さな親近感が湧いた。忌み嫌われ、バケモノ扱いされやすい闇の力。同じ痛みを共有できるかもしれないという、身勝手な期待もあったと思う。

 

だけど――驚いたのはその先だった。

 

彼は、私の隠してきた辛い過去や、闇の力を手に入れるに至った背景を、まるで見てきたかのように見抜いてみせたのだ。

 

彼自身も同じ属性を使い、人知れず辛い経験を乗り越えてきたのだと仮定すれば、似た境遇の人間の気持ちを見抜くこと自体は珍しいことではないのかもしれない。

 

だけど……「女の子なのに、良く頑張ってきたと思うよ」なんて温かい言葉をかけられた時、私は動揺を隠しきれなかった。

 

今まで誰からも認められず、悪魔の腕を隠しながら必死で強がってきた私の心を、その年下の少年はあっけなく解きほぐしてしまったのだから――。

 

少年と話してると森の方から不穏な葉擦れの音と地鳴りが聞こえてきた。

 

(来た……!)

 

私は息を呑み、後ろにいたあの少年の前に咄嗟に手を差し出した。

 

「下がってろ」

 

短く言い捨てると、全速力で森側へと駆け出した。背後で気配が動いたが、今は気にする余裕もない。開けた場所で足を止め、全神経を研ぎ澄まして暗闇を探る。

 

すぐ近くで、巨大な生物が蠢く重々しい音が響いていた。私は覚悟を決め、全身から闇の魔力を溢れさせる。身体が引き裂かれるような感覚と共に、全身が禍々しい姿へと変貌していく。禁忌の力――サタンソウルの『魔人』だ。

 

その時、ガサリと音を立てて木々の隙間から飛び出してきたのは――ただの小型のシカだった。

 

(なっ……シカ……!?)

 

毒気を抜かれたその瞬間、背後からドッと凄まじい風圧が押し寄せた。民家の屋根の上から、巨大な影が背を向けた私へ向かって跳びかかってきたのだ。

 

(しまっ――!!)

 

咄嗟に身体を猛烈な勢いでひねり、迫る影へ向けて渾身の裏蹴りを叩き込んだ。

 

ガシャァンッ!!

 

蹴り飛ばされた巨体は民家を破壊しながら吹き飛んだ。だが、瓦礫を押し退けて立ち上がり、夜空に向かって三度、狂暴な咆哮を響かせる。

 

「グオォォォォンッ!! グオォォォンッ!! グオォォォンッ!!」

 

異形の角と牙を持つ本物の悪魔。悪魔は地鳴りを立てて私へ突撃してきた。私は魔人の腕でその突撃を受け止めたものの、圧倒的なパワーに押し負け、後方へ激しく吹き飛ばされる。

 

「くっ……あぁぁぁっ!!」

 

背中の黒い翼を広げて空中で強引に姿勢を立て直し、飛行しながら反撃へと転じた。空中と地上を交錯する凄まじい肉弾戦。爪が肌をかすめ、衝撃波で視界が揺れる。桁違いに強い。だが――私には負けられない理由がある!

 

「ハァァァァッ!!」

 

渾身の旋風脚が悪魔の顔面に直撃し、民家ごと叩き潰した。瓦礫の中で、悪魔はピクリとも動かなくなる。

 

「ふぅ……ふぅ……っ……!」

 

変身を解いた私は、その場に膝をつき、肩を大きく揺らして荒い息を吐いた。身体中の魔力が底をつき、指一本動かすのも億劫だった。

 

だが、安堵したのも束の間――周囲の暗闇の中で、無数の赤い光が次々と点灯した。

 

(な……なに……これ……っ!?)

 

一頭じゃない。群れだったのだ。無数の悪魔たちが、身動きの取れない私に向かって、あちらこちらから一斉に襲いかかってきた。

 

(あ……ダメだ……避けられな――)

 

死を覚悟して目を瞑った、その時だった。

 

目の前で、圧倒的な漆黒の魔力が弾けた。

 

バサァァァッ!!

 

闇を凝縮したような巨大な『漆黒の竜翼』が眼前に広がり、襲い来る悪魔たちの爪や牙をすべて遮る強固な壁となって私を覆い尽くした。

 

「な……お前……!?」

 

息を呑む私の前に立ちはだかったのは、さっき宿の近くで話したあの少年だった。私より一つ年下で、15歳だというのに大人びた体躯を持つ彼は、振り向きもせず、余裕すら感じさせる落ち着いた声で呟く。

 

「戦い見てたよ。女の子なのに強いね……後は任せて」

 

彼は向かってきた悪魔に向けて、手元から放った漆黒のエネルギー弾を放ち、一瞬で一頭を消滅させた。周りの悪魔たちが一瞬怯むが、すぐに狂乱して一斉に彼へと群がり跳びかかる。

 

だが、その少年は襲い来る悪魔を冷徹な手際で、一体ずつ確実に返り討ちにしていった。

 

「ガアァァッ!」

 

背後から、倒れ込んでいる私を狙って一頭の悪魔が奇襲を仕掛けた。

 

「キャぁぁぁっ!?」

 

叫んだ瞬間、彼は迷うことなく私の上に覆いかぶさり、その背中で悪魔の爪を受け止めた。

 

ドカッ! ザシュッ!!

 

鮮血が飛び散り、私の頬を濡らす。

 

「嫌……っ! やめて……ッ!!」

 

だが、背中に凄まじい傷を負いながらも、彼は足元一つブレさせなかった。自分より若いはずのその背中で、次々と襲いかかる悪魔の暴力から私を庇い、その身を盾にして完璧に護り続けている。血を流しているというのに、その背中は絶望的なほどに大きく、頼もしかった。

 

「そこを……退けぇぇぇッ!!」

 

彼が天に向けて右手を掲げた瞬間、空が割れた。

 

「『ブラックホール・エクリプス』!!」

 

巨大な黒い渦が夜空を覆い尽くす。それは魔力生命体を容赦なく吸い寄せる、絶対的な闇の黒洞。

 

「グアァァァァァッ!?」

 

群れをなしていた悪魔たちが一瞬で宙に浮き上がり、暴風のような吸引力によって渦へと吸い込まれていく。そして、猛烈な魔圧によって粉々に破壊され、黒洞の中へと飲み込まれて消滅した。

 

言葉が出なかった。

 

自分を迫害した闇の力と同じ属性を持ちながら、その圧倒的な力で私を護り抜き、一瞬で悪魔の群れを滅ぼした年下の少年。

 

月光の下、私を庇うように立ち続けるその背中を、私はただ、息を止めて見つめ続けることしかできなかった。

 

 

 

 

 

悪魔たちを完全に消滅させた直後、物音を聞きつけたのかエルフマンとリサーナが集会所から必死の形相で駆け寄ってきた。

 

 

「姉ちゃん、無事か!?」

 

「ミラ姉〜ッ!」

 

「お前達……フッ、もう終わったぜ」

 

 

駆け寄る二人を愛おしそうに強く抱き寄せるミラジェーン。そこへ、腰を抜かしかけた村長も震えながら姿を現した。だが、倒れている悪魔たちの死骸を見つめた村長は、顔を蒼白にして首を振った。

 

 

「ち、違う……! 私が見たのはもっと大きな奴だった……! もっとヤバい奴がいるんだ!!」

 

「……なんだと?」

 

 

俺は違和感を覚えて視線を落とし、近くの地面にある足跡を見つけた。それは俺たちが今まで倒したどの悪魔よりも遥かに大きく、深い痕跡を残していた。

 

その瞬間――遠くの暗闇の中で、圧倒的な威圧感と共に赤い目が光った。

 

全員で息を呑んでそちらを見上げる。そこには、大木と同じくらいの全高を誇る、見上げるほど巨大な悪魔が立っていた。頭部には野牛のような禍々しい2本の角を生やし、二足歩行で立ち上がるその姿は、まさに獣と魔人が合体したような絶望の異形。

 

 

「グアァァァァァッ!!」

 

 

巨大悪魔が凄まじい風圧と共に巨拳を振り抜いてくる!

 

 

「くっ――逃げるぞッ!!」

 

 

俺は咄嗟にミラ、エルフマン、リサーナ、そして村長の全員を両腕で力任せに抱え込み、全速力でその場を離脱した。間一髪、拳が叩きつけられた地面が爆発したように弾け飛ぶ。

 

さらに悪魔は顎を大きく開くと、全てを焼き尽くす『獄炎のブレス』を吐き出してきた。

 

 

「させないッ!!」

 

 

ミラが無理を押して闇の魔法を打ち放つが、悪魔の放つ激しい炎の濁流にあっさりと飲み込まれて消滅してしまう。

 

 

「『イクリプス・ダークホール』ッ!!」

 

 

俺は即座に闇の渦を眼前に展開し、迫り来る獄炎を力ずくで吸い込ませて相殺した。その隙を突いてミラが果敢に突っ込んだが、悪魔の圧倒的な膂力による払いのけを喰らい、空中へ激しく吹き飛ばされてしまう。

 

 

「ミラッ!?」

 

 

俺は跳躍して空中で彼女の身体を優しく受け止めた。悪魔は間髪入れずに追撃の炎の破壊光線を放ってくる。俺は闇の巨大翼を二人を包み込むように広げ、その猛火をギリギリで防ぎ切った。

 

 

「ハァ……ハァ……っ、私がなんとかする……! あんたは二人を連れて逃げろ……っ!」

 

「バカ言え! 女の子を放っておけるわけないだろ。……俺がやる!!」

 

 

俺は彼女を地面に降ろすと、敵に向かって突っ込んだ。

 

今は夜だ。闇竜の力を宿す俺にとって、この夜の暗闇こそが無限の魔力源。

全身の細胞で夜の闇を限界まで吸い込み、口前へと収束させる。

 

 

「『闇竜の破壊光線』ッ!!」

 

 

放たれた漆黒のブレスが巨大悪魔の巨躯に直撃した。ドカァァンッ!と凄まじい爆発が巻き起こり、悪魔が大きく仰け反る。手応えはある!

 

しかし、悪魔は即座に体勢を立て直すと、丸太のような腕で殴りかかってきた。両腕を交差させてガードしたものの、その桁外れの膂力に押され、俺が立っていた地面が一瞬で深く陥没する。

 

さらにゼロ距離から放たれる獄炎のブレス!

 

 

「グぐぅぅぅッ……熱い……ッ!!」

 

 

全身を焼き焦がす熱量に歯を喰いしばり、必死で耐え抜く。そのまま背中の巨大翼を強く羽ばたかせ、風圧で悪魔の巨体を強引に吹き飛ばした。

 

だが悪魔は頑丈な脚でしっかりと地面を踏みしめて踏みとどまると、再び爆炎のブレスを放ってきた。俺は間一髪で闇の渦を発動させて炎を吸い込ませたが――その視界の隙を突き、悪魔の二発目の拳が横合いから叩きつけられた。

 

 

ドガァァァァンッ!!

 

 

「ガハッ……!?」

 

 

衝撃を殺しきれず、俺の身体は地表を削りながら激しく吹き飛ばされた。

 

 

「おい、大丈夫か!!」

 

 

ミラが悲鳴を上げて駆け寄り、倒れた俺の体を必死に抱き寄せた。さらにエルフマンも恐怖に震えながら駆け寄ってくる。

 

 

「に、逃げようぜ……! この村はもう無理だ……ッ!」

 

 

だが、俺たちの目の前では、巨大な悪魔がすでに追撃の獄炎ブレスをチャージし、口元を真っ赤に染めていた。射程からも逃げ切れない。絶体絶命の死が全員を包み込む。

 

 

(クソッ……俺の力もまだ、こんなものなのか……!?)

 

 

悔しさに歯を噛み締めながら、俺は最後の魔力を絞り出し、地面へと両手を突き立てた。

 

悪魔の口から、全てを灰に変える獄炎のブレスが放たれる。

ミラが諦めたように弟と妹を強く抱き寄せ、目を瞑った――その瞬間。

 

俺の暗黒魔法が発動した。

 

 

「目覚めろ……『ヘル・リバイブ』ッ!!」

 

 

バリバリバリッ!!と地響きが鳴り響き、俺たちの目の前の地面が巨大に割れ開いた。

そこから現れた漆黒の巨大な影が、迫り来る獄炎のブレスを真っ正面からその巨躯で受け止めたのだ。

 

 

ドグォォォォンッ!!

 

 

激しい炎と煙が巻き起こる中、ミラたちは恐る恐る顔を上げた。

 

 

「な……これ……嘘でしょ……!?」

 

 

煙の向こうにそびえ立っていたのは、手慣れたS級魔導士すら遭遇を避けるレベルの超危険生物。

伝説のドラゴンの生き残り――『獄炎の祖飛竜(ヘル・ジェネシック・ワイバーン)』。

 

俺の手によって地獄から文字通り「蘇生」されたその巨大な飛竜は、咆哮を上げながら、目の前の巨大悪魔と真っ向から睨み合った。

 

 

 

原作より活躍増やして欲しいヒロインは?

  • エルザ
  • ミラジェーン
  • カグラ
  • ルーシィ
  • ユキノ
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