美女と付き合いたいから強くなる 作:マンダ
俺の手で地獄から蘇生された飛竜は、過剰な闇の魔力を注ぎ込まれたことで全身に禍々しい黒の障気を纏っていた。鱗は漆黒に染まり、双眸は血のように爛々と紅く光る。生前以上の猛毒のような凶暴性を撒き散らす巨大な漆黒の威容に、さっきまで暴れまわっていた巨大悪魔すらも思わず足を踏み鳴らして仰け反った。
「グオォォォォンッ!!」
だが、悪魔もタダでは引かない。即座に体勢を立て直すと、大気を震わせる咆哮と共に、口からすべてを灰に変える『獄炎のブレス』を解き放った。
「行けッ……!!」
俺の意思を受けた飛竜が巨大な顎を開く。放たれたのは、闇を帯びた漆黒の炎の濁流。
ドドォォォォンッ!!
二つの破壊的なブレスが正面から激突し、激しい熱風と衝撃波が周囲の樹木を薙ぎ払う。押し合いの中、俺の魔力を吸って蘇生した飛竜のブレスが次第に悪魔の炎を押し返していった。限界を察した悪魔はギリギリで上空へ跳躍。悪魔が直前までいた大地は、漆黒の爆炎によって跡形もなく吹き飛んだ。
俺は精神を同調させ、空中の飛竜を脳内で操作する。飛竜は空中から着地点へ向けて追撃の爆炎ブレスを放ったが、着地した悪魔は驚異的な反応速度で巨躯をねじり、それを回避。そのまま低空へ逃れた飛竜の隙を突き、しぶとくその太い首筋へと飛びついた。
ガァァァァンッ!!
「ギャアァァァッ!?」
悪魔の生々しい牙が漆黒の肉体に深く突き刺さり、飛竜の苦悶の悲鳴が夜空に響き渡る。悪魔はそのまま太い腕で飛竜の首を締め上げ、力任せに地表へ引きずり落とそうと暴れ出した。主導権を奪われかける飛竜。
(くっ……悪魔の腕力、想像以上にしぶとい……!)
飛竜の視界を通じて伝わる圧迫感に、俺の背筋にも冷や汗が流れる。一瞬の油断で飛竜の制御が外れかねないヒヤリとする緊迫感。だが、総合的なスペックは明らかにこちらが上だ。
「振り払え! 上に飛ぶんだっ!!」
俺の叫びに応じ、飛竜は激痛に耐えながら強力な翼を強引に羽ばたかせた。二頭の巨躯は激しく暴れ回りながら、強引に上空へと急上昇していく。高度を稼いだところで、飛竜は空中で自転するように猛烈な回転を開始した。
ゴォォォォッ!!
トルネードのような激しい遠心力に耐えかね、悪魔の牙が飛竜の首筋からずるりと抜ける。飛竜はその一瞬の隙を見逃さず、太い尻尾を叩きつけて悪魔を空中から引き剥がすと、地表に向けて力任せに投げ落とした!
ドドォォォォンッ!!
地面を深く穿ち、動揺する悪魔を見下ろして、飛竜は上空から至近距離で最大威力の爆炎を放出。大気が激しく燃え上がるほどの超高熱――黒炎の濁流が悪魔の全身を容赦なく焼き払っていく。
だが、悪魔は全身を黒焦げにしながらも、眼光をギラつかせて瓦礫の中から再び立ち上がろうと足掻いた。その異常な生命力に一瞬息をのんだが、飛竜は追撃の手を緩めない。
ドォンッ!!
空中から急降下した飛竜が、両足の鋭い爪で悪魔の巨躯を力任せに踏みつけた。メリメリと骨の砕ける音が響き、大地が沈み込む。飛竜はそのまま悪魔の首筋へ深く牙を立てると、狂暴な首振りで巨体を左右の民家へ何度も叩きつけ、絶命するまで徹底的に痛めつけた。
バキバキバキッ……ドスッ。
最後は首を大きく捻り上げ、悪魔の息根を完全に止めてみせたのだった。
静寂が戻った戦場。
「す、凄え……こ、こんな魔法が……」
目の前で繰り広げられた怪物同士の死闘と、それをねじ伏せた圧倒的な光景に、ミラジェーンは息を呑み、震える声で呟いた。
「はぁ……はぁ……っ……今の、俺の切り札だ……」
過剰な魔力消費に激しい眩暈が襲い、視界がぐらりと揺れる。
「っておい、大丈夫かよ!?」
ミラが慌てて俺の身体を支えようと手を伸ばしてきたが、俺の魔力が底をついたのと同時に、制御を失った漆黒の飛竜は黒い霧となってバラバラに消滅していった。
激闘の爪痕により、周囲は完全に激しい火の海と化していた。バタリと膝から崩れ落ちる俺。赤々と燃え広がる炎が、身動きの取れない俺たちを呑み込もうと迫ってくる。
(くそっ……ここまでか……)
そう諦めかけた瞬間――迫り来る爆炎が、突如としてまるでガラス細工のように細かく砕け散り、消滅した。
「……魔法!?」
意識が遠のく中、俺を必死に背負おうとするミラの元へ、一人の男が歩み寄ってくるのが見えた。
「心配して様子を見に来てみればだな……」
ミラはその男を見上げ、驚愕に目を見開く。
「ギルダーツ……!」
「よう、生きてるみたいだな」
聞き覚えのある低い声。
……そうか、空間そのものを粉砕する、あのギルダーツの『クラッシュ』の魔法か……。
最強の男の到着を理解し、深い安堵感が全身を包み込んだ。俺の意識はそのまま真っ暗な闇の中へと落ちていった。
ゆっくりと目を開けると、視界に飛び込んできたのは見覚えのない木目の天井だった。
視線だけを巡らせて周囲を探ると、そこはどうやらどこかの医務室のようだった。薬品の匂いがかすかに鼻腔をくすぐる。体内に意識を向けてみると、底をついていたはずの魔力はすっかり満たされていた。夜の闇を無意識に吸い上げ続ける体質のおかげで、眠っている間に自動的に完全回復を果たしていたのだ。
「……ふぅ」
身体を起こそうと身構え、ベッドをわずかに揺らした。その振動で、ベッドの端に伏せて眠っていた人物がゆっくりと顔を上げた。
銀色の髪を少し乱したミラジェーンだった。
「あ……起きたのか」
目を擦りながら、どこかホッとしたような表情を浮かべるミラ。俺は身体を起こしながら、一番気になっていた質問を投げかけた。
「あれから、どうなった……?」
「完了だぜ。あの巨大な悪魔は跡形もなく死んだみてえだ。……まあ、もし生きてたら私がテイクオーバー(接収)しようかとも思ったんだけどさ。あのレベルの怪物だと、下手に取り込もうとしたら逆に意思を乗っ取られかねねえし……討伐できて丁度良かったよ」
ミラはふっと肩の力を抜いて息を吐くと、呆れたように俺の顔を覗き込んできた。
「ていうか、起きるの早すぎだろ。あんな無茶したんだ、もう少し寝てた方がいいって」
「大丈夫だよ。……ここだけの話、俺は夜の間なら自動的に魔力も体力も回復するんだ」
「確かに……魔力はすっかり戻ってるみたいだけどさ。本当に大丈夫なのかよ?」
「平気さ。……それにしても、俺が必死に粘るくらいなら、あのおっさん――ギルダーツだっけ? あいつの到着を最初から待ってた方がスマートだったかもな」
「あんた、ギルダーツを知ってるのか? ……まあ、そうだよな。うちのギルドでも一二を争う有名人だし」
ミラの言葉を聞きながら、俺は内心で静かに思考を巡らせていた。
なるほどな……原作では描かれていなかったが、本来の歴史ならミラたちはこの依頼に失敗して、命からがら逃げ出す予定だったのかもしれない。そこに異変を察したギルダーツが駆けつけて悪魔を片付けた……なんていう、原作の裏側に隠された『失敗イベント』だったんだろうか。まあ、魔道士として活動していればそういうイレギュラーなんていくらでもあるか
だが、そこでふと胸の中に小さな引っかかりが生まれた。
……待てよ? ギルダーツなら、あの巨大悪魔程度なら文字通り『瞬殺』できたはずだ。そう考えると……俺って、まだまだ弱くないか?
体内にある闇竜のラクリマの潜在魔力は、九鬼門を統べるマルド・ギール級にも匹敵する極大のものだ。つまり、単純な魔力量のスペックだけで言えば、ギルダーツに大きく劣っているとは考えにくい。
それなのに、昨夜の戦いでは自分の力だけで押し切れず、召喚・蘇生魔法という大技に頼らざるを得なかった。
魔力は絶大でも、それを戦闘で100%出力として使いこなせていない……まだまだ修行不足だな…
自分の伸び代と課題を噛み締めながら、俺はすっかり体力を取り戻した拳をぎゅっと握りしめた。
医務室を出た俺とミラの視界に、こちらへと手を振りながら走ってくるエルフマンとリサーナの姿が飛び込んできた。
「あ、姉ちゃん! それに、君も起きたのか!」
「よかったぁ……! 村長さんがね、事件を解決してくれたお礼にご馳走を振る舞ってくれるんだって!」
村長たちの案内で集会所へ向かうと、テーブルの上には豪華な料理が所狭しと並べられていた。俺たちの住む村の素朴な料理とは比べものにならないほど美味で、激闘で空っぽになっていた腹に染み渡る。
ご馳走を美味そうに口へ運んでいると、隣に座っていたギルダーツが酒杯を片手にニヤニヤと不敵な笑みを浮かべ、ミラの方をチラチラと見やり始めた。
「それにしてもなァ、ミラ。命の恩人の男と並んで食う飯はうまいか?」
「な、なに言ってんだよギルダーツ! くだらないこと言ってないで黙って食えよ!」
「いやいや、照れるなって。端から見てると、なんだか二人ともお似合いだぞ? 雰囲気が似てるというかさァ」
「っ……!?」
ギルダーツのからかいに、ミラは顔を林檎のように真っ赤にして怒鳴り散らそうとした。だが、怪我人である俺がすぐ隣にいることを気遣ったのか、ぐっと拳を握りしめて必死に怒りを押し殺している。
そこへ、無邪気なリサーナが楽しそうに追撃の一言を撃ち込んだ。
「あ、私も思ってた! ミラ姉と君が並んで座ってても、全然違和感ないよね。お姉ちゃん、いつもよりなんだか嬉しそうだし!」
「リ、リサーナまで何を……っ!」
耳まで真っ赤にして狼狽えるミラ。客観的に見ても、整った顔立ちのミラと175cmの体格を持つ俺の容姿レベルは同じくらいか、下手すると俺の方が上かもしれない。並んでいる姿が絵になるというのは、案外間違いでもないのかもしれないが、ミラにとっては相当な恥ずかしさだったようだ。
やがて宴も終わり、村の入口でいよいよ別れの時がやってきた。
「あんた、自分の村に戻るのかよ」
名残惜しそうに尋ねてくるミラに、俺は静かに首を横に振った。
「ああ。俺はまだ、魔道士としては上手くやれないかもしれない。内に秘めた力を、自分自身で完璧にコントロールしきれていないんだ」
昨夜の戦いを思い返す。マルド・ギール級の魔力を宿しながらも、出力や技術が追いつかず、召喚術に頼ざるを得なかった己の未熟さ。今のままではダメだ。
「そんな硬いこと言わねえで、俺たちのギルドに来いよ。歓迎するぜ?」
豪快に笑いながら肩を叩こうとしてくるギルダーツ。だが、俺はその誘いにも首を振った。
「ギルダーツさん。俺はいつか、貴方より強い魔道士になります。そのために、俺は練習や修行の手を休める気はありません。……今度会う時は、手合わせを願いたいです」
自分の目を真っ直ぐに見つめて言い放つ俺の言葉に、ギルダーツは笑みを消し、真剣な眼差しで頷いた。
「言うじゃねえか。……今度会う時は手加減なしだからな」
ギルダーツはそれ以上、無理にギルドへ勧誘することはしなかった。
ミラが変に気負ってしまわないよう、依頼の報酬はきちんと半分だけ受け取ることにした。金袋を懐に収め、俺がそのまま背を向けて立ち去ろうとした、その時――。
「待って!」
ミラの制止の声が響いた。
「……そういえばさ」
ミラはふと思い出したように、こちらをじっと見つめてきた。
「助けて貰ったんだ、次会う時は恩返しがしてえ。名前……名前を教えてくれ?」
「名前……?」
ミラの問いかけに、俺は一瞬言葉を詰まらせた。
そういえば、この身体の本来の名前、あるいは自分という存在をどう名乗るべきなのか、深く考えたことがなかった。
(この身体の名前……なんて言うんだ……?)
自分の記憶と、身体の奥底に眠る「記憶の澱」のような場所へ意識を深く落とし込み、長考する。
すると――脳裏の暗闇から、深く重々しい不穏な響きを持った『名前』が、まるで刻印のように脳内に直接再生された。
(――……『グレモリー・エーテリアス』……)
(……グレモリー・エーテリアス……だと……!?)
その瞬間に背筋を駆け抜けた不吉な悪寒。
『エーテリアス』――それは原作を知る俺にとって、あまりにも重く、危険すぎる意味を持つ言葉だった。ゼレフ書の悪魔たちを指す言葉、エーテリアス。なぜ俺の脳内にその言葉が再生される? この身体は、この闇の力は……一体何なんだ……?
「……おい、どうしたんだよ? たかが名前を聞かれたくらいで、そんな難しい顔してさ」
急に黙り込んで深刻な表情になった俺を心配したのか、ミラが顔を覗き込んできた。
俺は思考を切り替え、胸の内に生じた動揺を押し殺しながら口を開いた。
「……グレモリー・エーテリアスだ。グレモリーと呼んでくれ」
「グレモリー・エーテリアス……。なんだか、重苦しくて変わった名前だな。でも……格好いい名だぜ」
どこか愛おしそうにその名前を口の中で反芻すると、ミラは不敵にふっと口角を上げた。
「私はミラジェーン・ストラウス。……改めてよろしくな、グレモリー」
夕闇が迫る街道の中、ミラはそう言い残すと、ギルダーツやエルフマン、リサーナと共に手を振りながら去っていった。
一人残された俺は、胸の中に渦巻く『エーテリアス』という名の重みと、これから目指すべき圧倒的な強さへの渇望を抱きながら、静かに自分の歩むべき道を歩み始めたのだった。
原作より活躍増やして欲しいヒロインは?
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エルザ
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ミラジェーン
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カグラ
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ルーシィ
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ユキノ