美女と付き合いたいから強くなる 作:マンダ
「くくく……やるようになったじゃねえか」
体内に埋め込まれた闇竜のラクリマ――その残滓たる意識『デルローグ』の重々しい唸り声が、脳内に直接響き渡る。
目の前には、白煙を上げて倒れ伏す超大型のゼレフ書の悪魔。全身が黒く焼け焦げ、禍々しい魔力の脈動が急速に潰えていく。
あれから二年。時はX783年。
原作の物語が動き出すまで、あと一年という刻限に迫っていた。
体内のデルローグ曰く、いま打ち伏せたこの悪魔は、バラム同盟の頂点に君臨する闇ギルドマスター・ハデス――かつてのプレヒト・ゲイボルグにすら匹敵する異次元の力を秘めていたらしい。
現に俺の周囲は惨状そのものだった。かつては深い緑が生い茂っていたはずの広大な森が、俺たちの激突によって樹木はへし折れ、大地は抉れ、見る影もない荒野へと変貌を果たすほどの死闘。四年の歳月を費やし、俺はようやく己の身体に眠る膨大な闇の力と『エーテリアス』としての特性を完全に熟練させ、馴染ませていた。
息を荒く吐き出しながら、凄惨な周囲の景色を見回す。
(……自然破壊はあまり趣味じゃないんだがな)
心の中で呟くと、俺の思惑を見透かしたようにデルローグが不敵に鼻を鳴らした。
『心配するな。我の闇は破壊のみにあらず、万物を呑み込み再生させる漆黒だ。お前も……ようやくここまで辿り着いたか』
次の瞬間、俺の体内から溢れ出た紫黒い魔力の波動が、波紋のように荒野全体へと広がっていく。砕けた大木が、穿たれた大地が、巻き戻る映像のように一瞬で元の静寂な森へと復元されていく。闇の概念的な再生能力だ。
息をのむ俺に対し、体内のデルローグの威圧感が一段と跳ね上がった。
『お前に最期の試練を与えてやる』
デルローグの導きに従い、俺は暗雲が立ち込める岩だらけの荒涼とした洞窟の近くへと足を踏み入れた。同時に、体内に残っていた激戦の疲労や擦り傷が、溢れ出す闇の力によって瞬く間に完全再生されていく。完璧なコンディション。
『此奴と戦ってみろ。手段は問わん……持てる全てを叩き込め』
警告の言葉が終わると同時に、視界全体が眩いほどの黒銀の光に包まれた。
ゴゴゴゴゴゴゴッ……!!
地響きどころではない。空間そのものが軋み、地面が網の目のように叩き割れる。裂け目から噴き出した圧倒的な大気の圧迫感に、思わず呼吸が止まる。
地底から姿を現したのは――絶望を形にしたような巨大なドラゴンだった。
全身をトゲのような刺々しい漆黒の鱗で覆い、冷徹な殺意を宿した双眸。放つ圧迫感や凶暴なオーラだけならば、あの『アニマ』の暴走やアクノロギアの影すら凌駕しかねないほどの恐怖を解き放っている。
……なんだこの圧は!? まるで劇場版『ドラゴンクライ』に出てきたあの禍々しい青い竜を、さらに凶悪に仕立て上げたような怪物じゃねえか……!
喉が引きつる。身体の全細胞が鳴らす警鐘。
これを越えなければ、あの男にも、ミラにも二度と顔は立てられない。
これと戦えってのか……! 上等だ!
俺は漆黒の魔力を全身から迸らせ、巨竜を見据えて深く踏み込んだ。
「ハァ……ッ、ハァ……ッ……!」
息を吐き出すたびに、焼けた鉄を飲み込んだかのように肺が激しく痛む。
周囲の惨状は、まさに地獄絵図そのものだった。
直前までデルローグの力で美しく再生されていたはずの森は影も形もなく消えて吹き飛び、大地は隕石でも落ちたかのように巨大なクレーター状に抉れ、裂けた岩肌からは黒い煙が立ち上っている。もはや自然災害という言葉すら生ぬるい、世界の終わりを思わせる凄惨な荒野。
今回ばかりは、周りの環境を気遣う余裕なんて微塵もなかった。
己の命を繋ぎ止め、目の前の絶望を打ち破ることだけに全てを賭けていた。
俺のすぐ目の前には、過酷すぎる死闘の証明が鎮座している。
全身から不気味な紫黒の闇の障気を激しく噴き上げ、巨躯を揺らす三つ首の暗黒竜――。
自分の持てる全ての魔力を極限まで振り絞り、かつて倒した強大な存在すら強引に呼び戻す蘇生・召喚の術式を限界を超えて起動。召喚体として俺のフィールドに呼び出した、最後にして最大の切り札だ。
『グオオオオオオン……ッ!!』
三つの頭部が鼓膜を刺すような咆哮を上げ、巨竜の放った致命的な猛攻を身を挺して受け止める。その苛烈なカウンターによって一瞬生まれた、コンマ数秒の決定的な隙。
その刹那、俺は全身の肉体と魂を削り出すようにして最後の一滴まで闇の魔力を一点に凝縮させ、直撃のトドメを叩き込んだのだ。
ドサァァァッ……!!
空間を揺るがす絶大な重音とともに、目の前で刺々しい巨竜の巨体が崩れ落ちた。
全身から溢れていた圧巻の威圧感が瓦解し、ただの巨大な肉塊となって地に伏していく。
「終わっ……た、のか……」
役目を終えた三つ首の暗黒竜が黒い粒子となって空気中に溶けて消えていくのと同時に、俺の緊張の糸がぷつりと切れた。
ズキリと全身を刺す猛烈な激痛。
衣服はズタズタに裂け、皮膚のあちこちから血が滲む満身創痍の体。何より酷いのは、限界を超えて魔力を絞り出した影響で体内の魔力循環が完全に暴走し、紫黒の魔力が制御を失って全身からゆらゆらと漏洩し続けていることだった。
立っていることすら奇跡に近い状態。
だが、視界の先で粒子となって消滅していくトゲだらけのドラゴンを見つめる俺の胸中には、圧倒的な達成感と、ハデス級すら越えた絶対的な強さへの確信が満ちていた。
巨竜の体が黒い光の粒子となって空中に溶け込み、静かに消滅していく。
その苛烈な激闘の余韻を破るように――背後から、カツン、カツンと規則正しい足音が近づいてきた。
ハッとして振り返ると、夕闇の風に鮮やかな緋色の髪がたなびいていた。
「……これ、お前がやったのか?」
そう言って壊滅した周囲の惨状を見回したのは、銀色の金属鎧を身に纏い、腰に長剣を差した一人の女剣士だった。破壊し尽くされた荒野と、全身から制御不能な魔力を漏洩させながら立つ俺の姿を、彼女は凛とした眼差しで見つめている。
「遠方から恐ろしく強い魔力の衝突を感じて駆けつけたのだが……凄い惨状だな。ここで何かと戦っていたのか?」
「……怪物と戦っていたんです。消滅させてしまいましたが」
「そうか……」
努めて声の震えを抑え、冷めきった声で低く短く答える俺。
だが、その内心は激しい動揺に包まれていた。
緋色の髪……金属の鎧……間違いない、エルザ・スカーレット……! 本物だ……!
原作のサブヒロインであり、「妖精女王(ティターニア)」と恐れられるフェアリーテイル最強の女魔道士の一人。
まさか修行を終えた直後のこの場所で、こんなボロボロな姿の時に鉢合わせすることになるとは思ってもみなかった。
全身傷だらけで満身創痍の俺と、その身から漏れ出す異常な密度の闇の魔力。
エルザは警戒を完全には解かないまま、どこか眼前の破壊規模と俺の実力に凄みを感じているような、真剣な眼差しで俺をじっと見つめ続けていた。
「エルザ・スカーレット……」
目の前に立つ本物の圧倒的な存在感に気圧され、思わずその名が低く口から漏れ出てしまった。
「!? 私を知っているのか?」
エルザは一瞬だけ驚いたように薄い眉をひそめ、瞬時に警戒の度合いを一段引き上げた。鋭く研ぎ澄まされた眼光が、俺の全身を刺すように射抜く。
「ええ、有名人ですから」
漏れ出す闇の魔力をどうにか抑え込みながら、努めて冷静に言葉を返した。
「……そうか。お前も魔道士か?」
「はい、そうです」
「所属ギルドは?」
「無所属です。けど……これからどこかに加入しようと思ってます」
「そうか……」
俺がそう答えると、エルザは腰の長剣に添えた手に少しだけ力を込め、周囲のすさまじい破壊痕と、ボロボロになりながらも尋常ではない魔力を纏う俺の姿を交互に見やった。ハデス級の悪魔、そしてあの巨竜を討ち滅ぼした直後の、異様なまでの魔力の残滓をその肌で察知しているのだろう。
彼女は腕を組み、何かを推し量るようにしばらくの沈黙を守った。風に緋色の髪が揺れ、金属鎧が夕闇の光を反射して冷たく煌めく。
やがて思案を終えたエルザは腕を解くと、真っ直ぐな瞳で俺の顔を見つめ直し、静かに口を開いた。
「……良ければ、うちのギルドに来ないか?」
「……『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』に、ですか」
予期せぬ場所での、まさかのスカウト。
2年前にギルダーツから差し伸べられた手を「まだ早い」と拒み、闇の力を血反吐を吐く思いで磨き続けてきた旅。その終着点が、今まさに目の前で繋がろうとしていた。
エルザは小さく満足そうに頷くと、凛とした笑みを浮かべて手を差し伸べてきた。
「そうだ。お前のような骨のある魔道士なら、大歓迎だ」
原作より活躍増やして欲しいヒロインは?
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エルザ
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ミラジェーン
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カグラ
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ルーシィ
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ユキノ